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今回は拳銃の要素シリーズとして、ランヤードリングを取り上げてみたい。
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[概要]
ランヤードリングとは、拳銃に紐=ランヤードを通す輪のことである。
ランヤードは、肩にかけるなどして、拳銃などの道具を落としたり、
奪われたりすることを防ぐものである。
また、軍服礼装や、そこから派生したマーチングバンドの服では、装飾として
ランヤードが使われているようだ。
今回は、ランヤード,ランヤードリングの素材,歴史、それからランヤードリング
の分類を試みたい。

[素材]
昔からホルスターなどに使われる素材である革紐は、ランヤードとしては
見かけない。絹や綿の織り紐が初期には使われたのではないかと思うが、
戦後合成繊維が普及し、更に高い引張り強度を持つアラミド繊維などが
登場して、これらが使われるようになっている。

また、紐の形状もカールコード宜しく巻きを付けたもの(スパイラル,コイル状)
のものなども実用化され、邪魔にならず、しなやかで軽く細いが
切れないものが追求されている。

米海兵隊の使用するMEUピストル(前,後期モデル)と、LAYLAXの
スパイラルランヤード。
MEUは2つともウエスタンアームズ(WA)のガスブローバックガン。

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また、ランヤードと拳銃を結ぶ部分、ランヤードリングには金属製のリング
などが使われることが多かったが、近年は合成樹脂のパーツが幅広く
拳銃に用いられており、このプラスチックパーツにランヤードリングの機能を
もたせているところもある。

拳銃の構成素材としては他に木材もあるが、木材をそのまま
ランヤードリングとしているところは見つけられなかった。
ライフルなどではストックに空いた孔にスリングを通す例があるが、拳銃で
使われる木材の小さな断面積では強度が不足し、割れてランヤードが
外れる危険があるから、ではないだろうか。

小さな部品で平均約1kgにもなる軍用拳銃の重さ(もちろん落とす、などの
場合高いエネルギーで衝撃的に力がかかる)に耐えるものは、やはり金属か
合成樹脂だろう。

[ランヤードの歴史]
ナポレオン時代(1800年ごろか?)に、軍議で使うチョークをぶらさげる紐が
使われ、これがモールと呼ばれその後軍服の装飾に使われているらしい。
モール以外に、レニヤード,ストラップと呼ぶこともあるようだ。
現在では、ランヤードにホイッスルなどを下げるほか、工事現場で使われる、
転落防止用の安全帯を建物などに止めるための帯ロープを、
ランヤードと呼んでいる。

それまで別のものを吊るす道具だったランヤードが、19世紀後半に入って
拳銃に使われ出したのではないかと思う。

不勉強なせいか、ランヤードリングの発達史、というような資料を
見かけないので、全く一からの考察となり、大幅な変更が今後ありえる、
ということをお含み頂いて、話を進めたい。
また、情報をお持ちの方は、こちらに寄せていただければ有り難い。

1/6でホイッスルとランヤードの組み合わせ例。
これはドール用のセットで、更にこの服の上にベルトをする形があるのか、など
考証が正しいかは疑問だが、ランヤードの使い方として参考程度に。
警察官のランヤードは、上着の肩章(タブ)部分で止められ、ずり落ちたり、
簡単に外せないようになっている。

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[欧州での採用例]
拳銃にランヤードリングを付け始めたのも、どうやらヨーロッパが
先のようである。
調べていくと、フランスで採用されたMle1858にランヤードリングが付いていた
らしい。
但し、このモデルにいつから付けられていたかはわからなかった。
フランスではLevel M1892にもランヤードリングがあるという記述が
見つかったので、ともかく19世紀末にはフランスでランヤードリングが
用いられていたようである。

アメリカのメーカー、S&W(スミス&ウェッソン)がロシア向けに作った
ラシアンモデルでは、当時他のS&W製品には付けられていない
ランヤードリングがある。
また、英国では1856年にアダムスリボルバーが採用されたが、
これにはランヤードリングがある画像が見つからず、1887年に登場した
ウェブリーMkⅠにランヤードリングが付いているようだ。
また、オランダのM1891にもランヤードリングがあった、とされていて、
ランヤードリングが1850~1890年代の間に欧州で広まった可能性がある。

[米国での普及の遅れ]
ただ、アメリカ軍制式のコルトでは、M1873,M1889などには
ランヤードリングは無く、20世紀に入ってオートローディングピストル
(自動装填式拳銃)になってから、のようである。
米国では他にS&Wも上記のようにラシアンモデルを除いて
スイングアウト式になるまでランヤードリングは見られず、
スタールリボルバーなどにもランヤードリング付きの画像は見つからなかった。

ランヤード自体も、当初チョークを使う、作戦指揮官の装備だったとすると、
将校の護身用としての拳銃と組み合わされて欧州で普及したのでは。

これに対し、拳銃で戦う、という歴史を歩んできた米国では、当時の
ブラックパウダー(黒色火薬)が銃を汚し易く、頻繁な手入れが必要な
ので掃除しにくくなる紐を付けるのを嫌がった、
もしくは実用品だった拳銃を、後生大事に紐に付けて保護しようとは
思わなかった、
更に、洒落たヨーロッパの貴族的な装飾的装備品でもあったランヤードに
抵抗があった、
などの理由で装備が遅れたのかもしれない。

[軍用オートの標準装備]
上記のように、20世紀に入るまでは世界的に普及したとはいえない
ランヤードリングだが、逆に、軍用拳銃がオートローディングピストル
(自動装填式拳銃)になってからは、ランヤードリングは標準装備として、
無くてはならない装備となったようである。

モーゼルミリタリー,ルガーP08,そしてコルトM1911など、初期の主要な
軍用拳銃は軒並みランヤードリングを装備している。
(コルトはM1900には無く、M1902になって追加されたらしい。)

左から、ルガーP08,モーゼルM712,コルトM1911のランヤードリング。
P08はタナカのガスガン、M712はマルシンの,M1911はMGCのモデルガン。

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コルトM1911では、更にマガジンにもランヤードリングを付けていた。
これは後に廃止されるが、トカレフTT-33が踏襲している。

トカレフTT-33のマガジン。これはハドソンのモデルガン
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面白いのは、ポケットピストルでも初期にはランヤードリングを設け、
その後は民間用ではランヤードリング無し、軍の将校用などでは
ポケットサイズでもランヤードリング有りになっている。
FN(ファブリックナショナル)のM1900はランヤードリング付きで、M1910は無しである。
その後多くが軍用として使われたワルサーPPK、モーゼルHScには
ランヤードリング(HScはフレームに孔)が設けられている。
ベレッタM1934は小型だが、軍用制式ということもあり、ランヤードリングが
付いている。

ポケットピストルのランヤード。
左からM1900,PPK,HSc,M1934。
M1900は頑住吉氏のガレージキット。PPKはマルシンのモデルガン。
HScは同じくマルシンだが固定式ガスガン。M1934はWAのガスブローバックガン。

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[警察用の装備]
しかし、米国では軍用以外に拳銃にランヤードを付ける、という慣習は
無いようで、’80年代までの警察官の装備では、ランヤードリングを
持たないリボルバーを、オープンタイプ(フタが無い)のホルスターに
そのまま入れているのが見られた。

現在は自動装填式にとって替わられたが、それでもランヤードは
使っていないのではないだろうか。
やはり米国では掃除しにくいことを嫌っているのかもしれない。

いっぽう、一般の警察官ではなく、SWAT(突入,狙撃作戦を行う部隊)では
着脱装置の付いた、カールコード式のランヤードなどを使っているようだ。
こちらは作戦行動になり、軍隊に近い運用であること、その重要な作戦中に、
銃を落とさないことを重視したのではないだろうか。
そして外れる装置があるので、メンテナンスの難も低減している。

これに対し、日本では警察用拳銃にもランヤードが使われ、一連の制式拳銃
にはランヤードリングがある。
特に、警察用拳銃では、通常付いていないモデルにランヤードリングを
付けて採用している。
SIG P230は手動安全装置と共に、ランヤードリング付きを特別注文して
作らせ、S&W M37では輸入後に国内で追加工で取り付けている。

日本の警察用,自衛隊用拳銃のランヤードリング。
左からS&W M37,ニューナンブ M60,SIG P220,SIG P230JP。
M37はタナカの,M60はマルシンのガスガン。
P220はタナカの,P230JPはKSCのガスブローバックガン。

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[アーミーナイフ]
同じ頃、多機能のアーミーナイフもランヤードリングを付けた軍用装備品
として発達していたようである。
また、これより後に登場した、丈夫なアルミ合金製ボディのライトにも
ランヤードリングは付けられるなど、軍用,警察用などの装備品には、
広くランヤードリングが装備されるようになっている。

ヴィクトリノックスのアーミーナイフ(左の2つ)とミニマグライトのランヤードリング。
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[リングの形態による分類]
ここで形態によるランヤードリングの分類を試みたい。
大きく分けて以下のような4つの形に分類できるのではないかと思う。
《'09.11.22下記分類④を訂正しました。》

①孔型
フレームに直接孔を開け、そこにランヤードを入れて通す、最もシンプルな
タイプ。
モーゼルHSc,グロックG17などが採用している。
グロックの孔はランヤードリングとしてではなく、ストック取り付けにも
利用でき、そのための専用ストックが売られている。
この亜種として、孔にリングを通したものもある。
これはモーゼルミリタリー(上に画像あり)が採用している。

HSc(上 マルシン ガスガン)とG17(タナカ モデルガン)。
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②固定金具型
フレームに2つの穴を開け、U字,コの字型の金具を取り付け、そこに
ランヤードを通すタイプ。
金具の固定はネジ式、溶接式、カシメなどがあるようだ。
もっとも多くの例がみられ、FN M1900,ワルサーP38,コルトM1911,
ベレッタM1934,SIG P210などが採用している。

左からP38,P210,S&W M439。
P38はマルゼンの、P210はマルシンのガスブローバックガン。
M439はマルシンのモデルガン。

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この亜種として、丸い棒状の素材ではなく、板状の部品を、プレス成形などで
穴を開け、これを取り付けたものがある。
ワルサーPPKのほか、SIG P220,P230日本仕様(上に画像あり)が
このタイプである。

ベレッタM92,H&KのP7M13では、単なる平面でなく、グリップ下面の凹みを
設けたところに金具をつけている。

P7M13(左 MGC ガスブロ-バックガン)とM92(マルシン モデルガン)。
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③回転輪(スイベル)型
金具のうち、ランヤードがよじれ、撚りがかかることを防ぐ為、自由に
回転するスイベルを付けたもの。
多くはスイベルにリングを加え、回転だけでなく角度も可変とし、更に
ランヤードを通しやすく配慮されている。
J・イングリス社のハイパワー、S&W M37,ヴィクトリーモデル、
ニューナンブM60、エンフィールドNo2Mk1がこのタイプ。

左から、S&W ミリタリー&ポリス ヴィクトリーモデル,
エンフィールドNo2Mk1,FN ブローニングハイパワー カナディアンモデル。
ヴィクトリーモデルはHWSの、No2Mk1とハイパワーはマルシンの
モデルガン。

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④溝+ピン型
本体に設けられたスリット(溝)と、ピン状の部品によって、ランヤードリングの
機能をもたせたもの。リングとは逆にピンにランヤードを巻きつける形となる。
構造上、外部にリング部が突き出さない。
これにも、ワルサーP99のようにフレーム以外の他の機能が複合されたもの
(ランヤードのピンをバックストラップ固定と兼ね、抜き差しも可能としている)
がある。
また、ピンを別部品で差し込む以外に、グリップパネルに突起を成形したもの
(SIG P226など)、溝とピン部分をフレームとは別部品で一体成形したもの
(H&K=ヘッケラー&コッホ USP,Mk23など)がある。

左からSIG P226,H&K USP,ワルサー P99。
P226はタナカの、USPはKSCの、P99はマルゼンのガスブローバックガン。

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[ランヤードの目的]
最後にランヤード,ランヤードリングの目的にかえるが、日本では盗難防止、
という観点を取り入れ、というより重きを置いているように思う。
しかし、他の多くの国,地域では、専ら落下事故,紛失防止にのみ着目して
用いているように見える。
上で紹介したスパイラルのランヤードも、ベルトへの装着はマジックテープ
である。
もちろん、ベルトを抜いても、簡単にランヤードは身体から外れる。
これも、厳しく銃器の所持が制限されているだけでなく、正当な公用の武器
に対しても、厳しい目が向けられている日本の特殊な事情が反映されている
ように見えるのだが。

では今回はここらへんで。
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rg3/01

今回は完成品メーカー独自のラバーグリップについて考えたい。
また最近のポリマーフレーム一体型グリップは、ラバーとはいえないと思うが、
複合型と思われるものは、ここで少し紹介してみた。
硬質のプラスチックグリップについては、少し話が広がり過ぎるので、ここでは
割愛したい。
戦前の物資不足で、エボナイト(硬質ゴム)からベークライトに替えられた、
という歴史もあり、また戦後のプラスチックグリップでも、コルトのコルトウッドと
呼ばれるものや最近のガンナーグリップなど、興味深いものはあるので、
また機会があれば、プラスチックグリップという枠でも一回できれば、と思う。

[ワルサー]
ポリマーオートと呼ばれる樹脂製グリップ一体型フレームも、
面部にラバーを張ったり、筒状のラバーを取り付けるオプションパーツが
開発されている。
ワルサーはP99で、ポリマーオートでもバックストラップを交換し、
グリップの太さを変えられるシステムを生み出した。

ワルサーP99のバックストラップ。
これはマルゼンのガスブローバック式エアーガンだが、
ワルサーと提携して開発したこともあり、実物の交換用ストラップ(右)が
そのまま付く。

rg3/09

これは他にも広がり、SIG SP2340シリーズではグリップが交換可能となり、
H&K P2000などではP99同様交換式バックストラップでサイズを変えるように
している。
P99のバックストラップ素材は比較的軟質で、ラバーグリップに入れても
良いのではないかと思いここに書き加えた。

[S&W]
リボルバー用はOEMで、しかも仕入先数社を変えているS&Wは、
オートもグロックのコピーのようなシグマから、ワルサーのOEMを経て
M&P(ミリタリー&ポリス)と展開している。M&Pでは、グリップ後部を
交換でき、かつここがラバーのようである。

シグマとM&P。
シグマはWA(ウエスタンアームズ)のガスブローバックガン。
M&PはBWCが輸入しているエアーコッキングガン。
実物では矢印の部分が交換式となっている。
rg3/17

[トーラス]
ラバーグリップは、社外品のアフターマーケットパーツとして供給され、
普及にともなってメーカーが純正として採用し、最初からラバーグリップ付きの
ものが販売されるようになった。
そして、メーカーもラバーグリップを仕入れて取り付けるだけでなく、
独自開発を行うところが出てきた。
ブラジルから米国へも進出した新進メーカーのトーラスは、
グリップに細かいヒダを付け、手のサイズの違いに良く対応でき、
緩衝効果もあると思われるグリップを採用した。

トーラスPT24/7のグリップ部。
このPT24/7もBWCが輸入したエアーコッキングガン。

rg3/03


[スタームルガー]
話は前後するが、トーラスなどの最近の改良以前に、ガンメーカーでも新進の
スタームルガーは、ラバーグリップにも新たな独自技術を盛り込んだものを
採用した。
まず、ラバーグリップの固定部をピンとして、フレームが回転
(ゴムの変形があって力を要するが)する形にし、より衝撃を緩和
(エネルギーは物理法則通り一定だが、短時間に大きな力がかかる衝撃を、
時間的に長く、ピークを低く)する構造とした。
次に、ラバーグリップの表面をプレーン(滑り止め溝無し)とし、
更にグリップ両側面にプレーンな木製パネルを取り付けた。
これは適度に“滑らせる”ための工夫、スリップ・コントロールではないかと思う。

スーパーレッドホークのグリップ。
これらは共にタナカ ガスガン。
左は取り付け状態。右はグリップを分解したもの。
ピンがフレーム,グリップ本体をつないでいる。

rg3/08

[滑らせるデザイン]
スタームルガーは従来自社のブラックホークなどの大口径に、プレーンな
木製グリップをつけていた。
そして、同社のスーパーレッドホーク,GP100用ラバーグリップに戻ると、
パックマイヤーやホーグが付けていた、フィンガーチャンネル(指掛け)も
無いことに気づく。
コストダウンを狙うなら、ウッドパネルは無駄だ。
パックマイヤーのアメリカンレジェンドグリップ(ALS)が先にあって、逆の構成
(ALSは母体がウッド)を狙った、とも考えられるが、それでも前後の
フィンガーチャンネルは可能なので、
やはり意図的に滑るようにしてあるのではないか。

実は、以前スーパーブラックホークの実銃レポートで、グリップが滑りやすく、
発射によって大きく上を向く、という記述があった。

このときは深く考えなかったが、その後スタームルガーがラバーグリップを
独自開発したものを見て、同社の意図に思い当たることとなった。
スタームルガーは、大型拳銃の反動を滑らせることで逃がそうとしている
のではないか。

ブラックホーク357マグナム(左、コクサイ モデルガン)と
スーパーブラックホーク44マグナム(右 マルシン ガスガン
メーカー純正オプションの木製グリップ付き)。
共にプレーンなグリップ。

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これも357ブラックホークの登場当時はプラスチック製でチェッカーが
あったようだが、これを後に木製でプレーンなものとしている。
また、38口径のセキュリティシックスなどには、中央部にチェッカリングが施され、
22口径のマークⅠピストルなどは、フルチェッカーである。

スピードシックス(左)とブラックホーク(右)。
スピードシックスは、ウェスタンアームズのモデルガンに実物グリップを装着、
このブラックホークは、スズキのモデルガンで、チェッカーのグリップは
メーカー純正のもの。

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スタームルガー スタンダードピストル(使用カートリッジ;22LR)。
これはマルシンのガスガン。
グリップパネルはプラスチックで、両面ともフルチェッカー。

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そしてたまたま、かも知れないが、同社のマグナムリボルバーは
シングルアクションのものから開発されていた。
この、コルト・ピースメーカータイプのシングルアクションでは、銃を握った手の
親指でハンマーを起こす必要と、トリガーは軽く落ちることから、ウェブ
(親指と人差し指の間)に当たるふくらみを設けていない。
このため、バックストラップはなだらかな単一の曲線となり、もともと銃が
発射の反動で上を向きやすい。
逆にウェブ部分を隆起させたグリップは、ダブルアクションの初期のモデル、
英国のアダムスリボルバーやコルトM1877から採用されている。
つまり、トリガーを大きな力で引くときに、手が前進(逆にいうと銃が後退)
しにくいように設けられた止めが、手の中で銃が動くのも抑えていたのでは
ないだろうか。

M1873(ハドソン モデルガン)とM1877(頑住吉 モデルガン)。
どちらもコルトの銃で、M1873はシングルアクション、
M1877はダブルアクション。
赤い矢印で示した部分が、ウェブが当たるふくらみ。

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そして時代が変わり、マグナム弾の強烈な反動に対処する方法として、
再びこのなだらかなグリップ後部が有効なことに、オールドスタイルの製品を
手がけていたスタームルガーが気づいた、ということではないだろうか。
スタームルガーの着眼点は、その形状に止まらず、グリップ自体のスリップ
コントロールにまで及び、それがチェッカーを廃させたのではないだろうか。

そしてこれはスタームルガーだけに限らず、大手S&Wにも見られるのである。
S&Wのあまりに有名なM29 44マグナムは、当初チェッカリングされた
オーバーサイズのターゲットグリップをつけていたが、一時このチェッカーが
省略されてプレーンなものになった。
これはコスト削減策とも言われるが、同社のKフレーム M19用などは
チェッカーを残し、その後スピードローダーが使いやすいように削りを
増やしていたりする。
M29だけチェッカーを廃したのは、単にコスト削減では説明できないと思う。
44マグナムは、当時最強といわれた拳銃用カートリッジで、スタームルガーの
スーパーブラックホークも、レッドホーク,スーパーレドホークもこれを使う
(他カートリッジ用も後に開発された)。

つまり44マグナムの反動に対処する方法の一つが、スリップ・コントロール
(といっても手から離れるほどではなく、チェッカリングが食い込まない程度の
小さな量だが)ではなかっただろうか。
そして、そのコンセプトをスタームルガーは357マグナムにも広げ、
ダブルアクションではグリップ後部のふくらみを廃することができなかったので、
このような独自のグリップデザインとなったのではないだろうか。

チェッカリングにフィンガーチャンネルを持ち、更にラバーの表面が手に追随して、
非常に滑りにくいラバーグリップは、素材による衝撃吸収効果があっても、
射手によっては嫌われることもあるという。
これは上記の“滑らせる”グリップと逆だから、ではないだろうか。

チェッカリング(凹凸のテクスチャー)とフィンガーチャンネルを持つ、各社の
スタームルガー用ラバーグリップと、そのパッケージ。
左から、ホーグ、バトラークリーク、パックマイヤー。

rg3/05

もっともあらゆるものには大体メリット,デメリットがあるように、滑りやすい
グリップや、硬質の木材のグリップにもデメリットはある。
滑りやすいグリップでは、発射ごとに握り直す必要があり、連射が遅くなる。
またスタームルガーは、銃身の短いスーパーレッドホーク・アラスカンモデルに、
ホーグ製と思われる表面に凹凸があってフィンガーチャンネルも備えた
グリップを採用した。
これは内部に緩衝ゴムを入れて回転動作量を増しているが、滑りやすい表面、
というコンセプトは引っ込めた形だ。

アラスカンモデルではないが、ホーグとノーマルのグリップ比較。
ホーグの表面は細かい突起のあるテクスチャーで、
矢印のようにフィンガーチャンネルが付く。(2つ共 タナカ ガスガン)

rg3/16

アラスカンモデルは極端に短いモデルなので、銃が手から離れて宙に舞う、
という危険を考慮したのかもしれない。

個人的にはスターム・ルガーのスムーズなグリップは、チェッカー
+フィンガーチャンネルのラバーグリップより、一歩進んで考えているように思う。
だが、これは上述のように諸刃の剣でもある。
あらゆる状況に万全なグリップ、は存在しない。
あとはメリット,デメリットを、射手が良く理解し、吟味して選択することになる。

それではラバーグリップについてはここらへんで。
rg03/11
次回からは再び、実寸と1/6のトイガンを取り上げたいと思いますので、また宜しく。

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rg2/01
今回は、代表的なラバーグリップメーカーの製品(そのトイガン用コピーも含む)を
紹介していこうと思う。
また後半では、完成品メーカーのラバーグリップ採用について触れてみたい。

[パックマイヤー]
それでは各ラバーグリップメーカーの製品を見ていきたい。
まず前回、構造のところで紹介したパックマイヤーから。
前回述べたようにラバーグリップはパックマイヤーの発明した構造によって、
普及し一般化したのではないかと思う。
その一つは、芯となる金属の表面にゴムを成形し、必要な剛性,強度を
確保したことだ。
そしてもう一つは、左右のパネルをストラップで繋いで一体化し(ラップアラウンド)、
そのつないだ部分で衝撃を吸収するクッション作用を持たせた。

さて、パックマイヤーの拳銃用グリップは、まずコルトM1911オート用のものが
発売されたのではないかと思われる。
GM45,GM45C,GM45CS,GM45Gの4つのタイプと、コンパクト用が
作られているが、ブリスターパックの代わりに紙箱に入っていた初期のものには、
ゴム付きメインスプリングハウジングも付属していたようだ。
余談だが、メインスプリングハウジングのゴムといえば、デトニクスが採用していた
ように思う。
GM45はグリップ側面のバナーが書かれた部分が盛り上がり、ストラップ下に
フィンガーレスト(指掛けの突起)があり、マガジンのベースプレートの上にかかる
タイプ。
GM45Cは後にMEUなどにも使われた、比較的平板に近いタイプ。
GM45CSはバナーの書かれた部分が広い。
GM45Gは、Gがグリッパーの系列を示すのか、ストラップ中央部に
フィンガーチャンネルが2つ付けられたタイプである。

GM45Cとコンパクト。
ガンはウエスタンアームズ=WAのガスブローバックMEU(左)とMGCのタカカスタム。
後方のバナーが無いグリップはMEUに付属していたWAのコピー。
rg2/04

ブローニング・ハイパワー用の後部も覆うモデル。
これはマルイがグリップも製作しているエアーコッキングガン。
rg2/14

リボルバー用は、前記のパテントが生まれた頃から製造されたのではないか
と思うが、これも初期はプレゼンテーションモデルの形のもののみだったのでは
ないか。
その後フィンガーチャンネルを付けたグリッパーが開発され、更に後になって
後部のストラップが無い(前で左右をつなげた)タイプになったようだ。
ストラップは後部にあると直接ウェブ(人指し湯と親指の間)にかかる衝撃を
緩和する。
グリッパーであえてこれを廃したのは、ストラップの分、後方に数ミリ張り出す
形になって、トリガーとの距離が増し、手の小さな人などでは扱いずらくなるから
ではないだろうか。
リボルバー用は、まず基本形としてプレゼンテーション,グリッパーと、後方に
ストラップの無いグリッパーがある。
それ以外にラウンドバット用のコンパックなどがあり、また機種ごとに形状を
変えている。

S&W(スミス&ウェッソン)のKフレーム用で各タイプを。
左から、SK-CP,SK-L,SK-G,SK-GP。
SK-CPはラウンドバット用のコンパックの一種で、フィンガーチャンネルの無い
モデル。
SK-Lはプレゼンテーションタイプで、フィンガーチャンネルが無いタイプ。
SK-Gはグリッパーだが、バックストラップがあるタイプ。
SK-GPはバックストラップが無く、前方で左右が接合されているグリッパータイプ。
rg2/08

スーパーブラックホーク(スタームルガー)用は、トリガーガード後端まで
覆われている。
rg2/09

パックマイヤーが、ビアンキブランド(アイデアはビアンキではないかと思う)
で出したライトニング・グリップは、S&WのM36チーフスペシャルを、
同社のM49ボディガードのようにハンマーが引っかかりにくいようにする機能
が付いている。
モデルガンメーカーCMCは、同社のモデルガン用にライトニング・グリップを
コピーしてハンマーシュラウドグリップと称して販売していた。

左から、M36にハンマーシュラウドグリップ(CMC),M49,M36PC
(パフォーマンスセンター)
rg2/18

パックマイヤーはこのほかに、木製のグリップに一部ゴムを張り付けた、
アメリカンレジェンドリシーズも作っている。

[ホーグ]
パックマイヤーはアフターパーツマーケットだけでなく、大手メーカーのコルトが
製品に採用するなど、ラバーグリップの代表機種となった。
そうすると他にも独自の技術でラバーグリップを作り、市場に参入するものが
現れる。
ホーグは’78年からパテント申請を始めているので、その頃から製造を始めた
のではないかと思う。
特徴としては、芯にやや硬質のプラスチックを使い、重量も軽いことだ。

M1911コンパクトサイズのホーグ。
MGCのスプリングフィールドV10ウルトラコンパクトモデルに付けた例。
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S&Wのオート、CS45のホーグ。
これもBWCのコピー製品(エアーコッキングガン付属)。
rg2/16

”最強の”市販オートピストル、デザートイーグルもラバーグリップを採用
しているが、これも実物はホーグ製との話し。
画像はSⅡS製。
rg2/17

更にリボルバー(回転式)用では、パックマイヤーが一体化したグリップを
開いてフレームに取り付けられるようにしたのに対し、一体化したままの
形でフレームの下から挿入し,あらかじめフレームに取り付けておいた
ピンストラップファスナーと呼ぶ固定金具を使って固定する方式とした。
これはモノグリップという商品名になっている。
この方式だと、合わせ目が開いたり、ずれたりして手が挟まれるといった
トラブルを根本的に解決できる。
また、同社はS&Wにも採用され、M36チーフスペシャル用のバンタムグリップ
などは、金具も廃してハメコミ式というような、本体の弾性を利用してひっかける
構造になっている。

リボルバー用のホーグ。
実物とコピー製品が手元にあり、またS&W向けのOEMでは、S&Wロゴが
グリップ側面上に付く。
表面のディンプルの大小、形状などにバリエーションがある。
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バンタムグリップ(下)とモノグリップ。
rg2/07

[アンクルマイクス,バトラークリーク]
アンクルマイクスは金属製の芯を使うが、単純な左右分割としてパテント
回避を狙ったのではないかと思う。
アンクルマイクスは現在、スコープのカバー バトラーキャップを作る
バトラークリークに買収されたのか、バトラークリーク製になっているようだ。

MGCは同社のM586シリーズでこれをコピーし、HW樹脂で木目をプリントした
ものも作っている。
rg2/11

スタームルガー用のアンクルマイクスと、マルシンが作ったコピー。
マルシンはM36用として製作、同社のガスガンに標準装備している。
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ここで、各社のグリップ構造を。
左後方から、左右を開いて取り付けるパックマイヤーのリボルバー用、
オート用、前列は左が左右分割のアンクルマイクス、
一体型のホーグは、手前のピンストラップファスナーで固定する。
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[完成品メーカーの採用]
アフターマーケットパーツ(ユーザーが銃を購入後、自分で交換する
純正以外の部品)として流行し、急速に普及したラバーグリップは、
木製グリップの問題に悩まされていた完成品メーカーにとっても、
大変興味ある存在となったのだと思う。
グリップメーカーのOEM(Original Equipment Manufacturing;相手先ブランド
生産)で自社開発を行わず大手メーカーがラバーグリップを採用する、
という動きが‘80年代から広がった。
さて、他メーカーによるラバーグリップ採用の経緯についてまとめてみよう。

先鞭を付けたのはコルトだったと思う。
リボルバーとオートで、どちらが先に採用されたか、ちょっと思い出せないが、
恐らくリボルバーである。
リボルバーにパックマイヤー製を初採用したのはパイソン・ハンターだったと思う。
これは1980年に発表されたようだ。
8インチのバレル付きパイソンに、リューポルドのスコープを付け、
ゼロ・ハリバートンのケースに入れた高級カスタムだった。
グリップはパックマイヤーのプレゼンテーションモデルに、コルトのメダリオンが
埋め込まれていた。

左からコルトパイソンにパックマイヤー プレゼンテーションタイプを装着したもの、
同じくパイソンにグリッパーを装着したもの、そしてキングコブラにグリッパーを
装着したもの。
パイソンはタナカのガスガン。
キングコブラはKSCのモデルガンでグリップもKSCがパックマイヤーを付けて
販売している。
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M1911シリーズもラップラウンドタイプのラバーグリップを採用、たぶん
シリーズ80のセミ・カスタムモデルからではなかったかと思う。
ホーグの表面仕上げに近いシャークスキンという仕上げで、これらはオリジナル、
との話も聞くが、実際の設計,製造まで自分のところでやっていたかは
調べられなかった。
これではデルタエリートのペブル(小石)ラバーグリップと呼ばれるものが有名。
これは1987年登場のようだ。
他にコンバット・エリートなどもこのタイプのグリップを採用していた。

コルト・デルタエリート。これはWAのガスブローバックガン。
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コルトのライバルだったS&Wも、コルト同様OEMでラバーグリップを導入した。
S&Wは現在ホーグのようだが、過去にパックマイヤー,アンクルマイクスも
使っていたようである。
ホーグのS&W向けグリップはロゴがS&Wになっている(上のホーグの画像参照)。

また、上記のデザートイーグルなど、他にもOEM採用するメーカーが出てきている。

これ以外に、独自開発のラバーグリップを作るところも出てきたのだが、
これはまた次回に。
それでは、今回はここらへんで失礼。
rg2/19

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今回から、複数回(たぶん2~3回)に分けて、
ラバーグリップについて書いてみようと思う。
rgrip01/01

現在、自動装填式でも回転式でも、ラバーグリップは一般的になっている。
最初はアフターマーケットパーツ(使用者個人が交換使用する社外部品)
だったが、純正採用するところも増え、今では木製グリップを凌ぐ
普及ぶりを見せている。
そして、地味ながらこの部品は、複数メーカーによる様々なトライが試みられて
いる、実に興味深いパーツではないかと思う。

まず最初にその歴史や構成について、また技術,機能について述べ、
そして後半は少し重複するかもしれないが各メーカーごとの特色、
各機種に使えるグリップを紹介していくつもりである。
グリップを狙って収集していないこともあり、そう珍しいモデルが並ぶ訳では
ないのだが、ひとつ最後までおつきあいいただければ。

パックマイヤーのコルト45オート(自動装填式)用2種。
マグナガスブローバックのMEU(ウエスタンアームズ=WA)とタカカスタム(MGC)。
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[前史]
現在一般的に認識されているラバーグリップは、パックマイヤー社が始めたもの
ではないかと思うが、厳密に言うと、既に19世紀後半にラバー
(ハードラバー=エボナイト)は使われている。
しかし、これは弾性を持っていないので、今回の趣旨とは少し違うが、成形方法
には注目すべきところがあると思う。

FA(ファバリックナショナル ブログ内にカテゴリあり)M1910では初期に牛の角、
その後エボナイトになり、別のプラスチックに、と変遷している。
そのエボナイト,プラスチック製のグリップには、FNのロゴマークとチェッカーが
刻まれている。

また、エボナイトを使ったらしき、コルトのM1873(SAA)のグリップも、複雑な
模様をもっている。
これらは型に素材を入れて成形する、という工程を採っていたのではないか、
と思われ、すると後のラバーグリップの表面成形法と同じではないだろうか。

FNのM1900(上 頑住吉モデルガン)とM1910(マルシン モデルガン)。
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そして、19世紀には、ゴルフボールやカメラの表装などの材料にもなった
ガタパーチャ(グッタペルカ)もグリップに使われていた。
これはコルトがM1877などに使用していたという。
ガタパーチャは、弾性があったようなので、これがラバーグリップの元祖、
ともいえなくはない。

M1877ライトニング(左 頑住吉モデルガン)と
M1873=SAA(ハドソン モデルガン)。
これらは木製,木製を模したプラだが、
ガタパーチャグリップは上のM1900,M1910と同様、
チェッカリングが転写されていたようだ。
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これら初期のゴム質グリップは、ゴムの輸入制限によって開発された
ベークライトや、ナイロンなどのプラスチックにとって変わられ、
また一部は質感を重視して木製に戻され、現在ではほとんど
使われていない。
弾性のあったガタパーチャが主流にならず、その後天然ゴムも合成ゴムも
しばらく使われていなかったようであるが、これは、軟質素材では外れやすく、
構造として保持しにくかった、という問題があったのではないだろうか。

そして現在につながる、軟質のゴム素材によるグリップ再登場は、70年代の
ようである。
弾性材によるグリップが復活,メジャーになったのは、それを保持する構造が
出来たからではないかと思う。
近代ラバーグリップは、鉄板や硬質のプラスチックの芯材が埋め込まれており、
この発明によって、やっとラバーグリップの普及を見たのではないだろうか。

パックマイヤーのグリップ内の金属構造材(矢印)。
ガバ用では鋼板が、リボルバー用ではキャストの亜鉛らしきものが全体に
埋め込まれており、一部はこのように内側に露出している。
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ホーグのグリップ内には、硬めの合成樹脂が構造材として使われている。
奥のS&W Nフレ用には白い色の、手前のJフレ用には黒い色のものが
入っている。
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[パックマイヤーの歴史]
Pachmayr Gun Worksは‘60年代の創業とかいう記述があった。
現在のHPを見ると、弾頭や各種射撃グッズのライマン社グループのようだ。
現在でも、パックマイヤーがその豊富なバリエーション,価格と品質,
供給安定性などにおいてアフターマーケットで最も普及しているラバーグリップでは
ないかと思う。
そしてパックマイヤーが、芯材のある軟質ゴム製グリップのパイオニアだったのでは
ないだろうか。

それまでライフル,ショットガンの銃床後部、肩づけする部分につけるリコイルパッド
を作っていたようだが、この芯材を入れる構造を発明、70年ごろからM1911系など
オート用のグリップを作りはじめ、そしてそれからしばらくして同社の代表的な
リボルバー用グリップ、プレゼンテーションモデルが生まれたのではないかと思う。

米国特許を見てみると、パックマイヤーは‘72年に3672084号で補強
(レインフォースメント)を入れたゴムグリップについて、
また’79年に4132024号でクッション作用をもたせたグリップについてパテントを
取っている。
これらの申請はその数年前で、このあたりからパックマイヤーグリップが販売
されたのではないか。

パックマイヤーのM1911用とプリボルバー用プレゼンテーションモデル。
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[ラバーグリップ普及の背景]
ラバーグリップはこのパックマイヤーの製品によって、急激に普及したように思う。
芯材を入れるという発明によって、技術的な解決をみたため、というのも
まずあるが、もうひとつ、普及の要素として、人件費,木材材料の高騰、そして
マグナムブームなどの強力なカートリッジの普及が関係したのかも知れない。

当初は既に付いている木製グリップからの乗り換えであり、マイルドなリコイル
という機能的な面がまずユーザーにアピールしたのではないか。
また射撃もコンバットシューティング競技の普及期と重なり、ブルズアイなどより
多くの弾薬を撃つこと、そしてストッピングパワーの高い(逆に反動も大きい)弾が
選ばれるようになったことが普及を促進させたのかもしれない。

コンバット・シューティングの普及も、ベトナム戦争が終わり、ひと段落して
人々が射撃を楽しむ余裕が出来た時期、もしくは逆により実践的な射撃方法が
求められた時期、というような背景があるかもしれない。話が広がり過ぎるので、
これはここらへんで止める。

また、この時期、くしくも映画「ダーティ・ハリー」のヒットにより44マグナムが
脚光を浴び、強力なマグナム弾の反動を和らげるグリップが求められた、
という側面もあるかもしれない。

また、’50年代に登場したこれらマグナムリボルバーは、反動制御のためも
あってか、木製で大形のターゲット用グリップを装備していた。
これが余計にコスト増の影響を受けたのかも知れない。

コルトのリボルバー デティクティブ(右)とパイソン(共にタナカ ガスガン)。
パイソンのグリップがオーバーサイズのもので、これはチェッカリングが減った
3番目の型のもの。これはコクサイのモデルガン用プラグリップを付けている。
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S&WのマグナムリボルバーM19とM29(共にコクサイ モデルガン)と
木製グリップ。
フレームより大きなオーバーサイズとなっており、
内部加工も、フレーム同寸より手間がかかる。
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今回はここらへんで、続きは次回に。
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今回は、銃のパーツシリーズ、リアサイト編を。
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まずトップのカットは、M1911系のリアサイトバリエーション。右からSTI(ヘイニー)、ハイキャパ(ボーマー)、スプリングフィールド(ノバック)、MEU(専用?)、デカスペシャルⅡ(オリジナル)、CQBガバ(ウィルソンナイトアイ)。

[概要]
リアサイトは、アイアンサイト(前の記事、フロントサイト参照)のうち、後方(目に近いほう)のもの。現在はフロントサイトが突起状なので、後方のリアサイトは凹(オープン)型、穴(ピープ,ゴーストリング)型の2種類が主流。
但しショットガンなどでは、リアサイトが無いものもある。
リアサイトには、固定(半固定)式とドライバー,指で調整が可能な調整式がある。
他にも、照準しやすいように白線,ドットなどが使われたものがあり、また反射防止のグルーブ,チェッカーなど、様々な工夫が凝らされている。

まず変わった例をひとつ。
コルト M1851のリアサイトは、ハンマーの上端にある。
普段は隠れていてコッキング時に起き上がる、という設定だが、調整も面倒そうだし、ノッチが摩耗すると狙いが狂いそうだが。
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[考察の方法]
リアサイトには、現在まで非常に多くのバリエーションがあり、リアサイトの研究だけで結構な分量の本が出来ると思う。
そして、これまでも取り上げた各モデルのサイトについては述べてきている。
また各メーカーが今も鋭意研究中のパーツであり、年を追って変遷やバリエーションについて語ろうとすると非常に長くなってしまう。
簡単に傾向だけを述べても、拳銃ではサイトが大型化の傾向、ライフルなど長物では凹型から穴型へ主流が移行してきている、というぐらいにしておかないと収拾がつかない。
そこで、今回は主に拳銃に焦点を当て、まず現在代表的なサイト、ノバックを例にどのような構成で機能を実現しているか探り、ここから逆にリアサイトの構成,機能面の要求について迫ってみようと思う。

[例;ノバック]
それでは、現在の拳銃用サイトの代表として、ノバックを見てみよう。モデルは、Jアーモリー(WA)のFBIビューローモデル(過去の記事)だ。
ノッチ(凹み)の部分は大型で底がフラットの正に凹型、この両端には2つのドットを持ち、フロントと合わせると3ドット、これが一列に並ぶと上下が合い、更に等間隔になっているなら左右も合う。
もちろん、サイトの凹凸が合っていればドットによらなくても合わせられる。
ノバックサイトは横から見ると3角形の下にドブテイル(アリ溝)が足された形になっている。
これは抜くとき,納めるときにひっかかりにくく、強度的にも強い形を目指したものだと思う。
その上で元のサイトがついていたドブテイル部分から、後方いっぱいまで後退させて照準線長を少しでも伸ばそうとしている。
但しサイト後方の狙いをつける部分(別体式のサイトリーフに当たる部分)は、光を反射して見にくくなりにくいように、削り込んで凹ませ、取り付け面に対して直角になっている。
これは同時に、強度上のガードとスナッグプルーフ(引っ掛かり難い)のためにもなっている。
そして前方は、サイティングするときに内側面が反射したり、干渉するのを避けるため、リーフ(薄板、この場合一体なので照準面)部分近くまで削りが入っている。
サイトは左右に動かすことも可能だが、不用意に動かないように上にセットビスが付けられている。
上下方向の調整は、前後どちらかのサイトを交換して高さを変えるか、どちらかを削ることで可能だが、ねじ回し一本では調整できない。
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[ドット]
それでは、ここから導かれた各要素について考えたい。
サイトのドットには、上下2つの、下のSTIに使われているもの(ヘイニー)やSIGに多い形式、3つのドットが並ぶノバックなどに多い形式、それから凹型にリアサイトを囲んで白線が入る、S&Wやグロックに見られる形などがある。
更にドットにトリチウムなどの発光物質を使うもの、半透明のプラスチックで上方からの光を受け、明るく光るファイバーオプティクというものもある。
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[溝,穴形状]
ライフルなどストックのあるものでは、穴型が増えてきているが、拳銃では凹型がほとんどなのは、射手の目から離れたところにリアサイトがあり、穴型ではかなり大きなものにしないと見にくい(これだと精度の点でも良くない)、使用が近距離を想定しているので、周囲が見えるほうがいい、などの要因だと思う。
凹型でもノッチ(切り欠き,溝)がV型,角型,U字型などがあり、変わったところでは十四年式(過去の記事)や最近のポリマーフレームのステアーのアリ溝型がある。
下のSIG P210はU字型、M172はV字型である。
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考察の方法のところで述べたように、リアサイトは大きく、凹型の溝も大きくなってきているが、これは近距離で素早いサイティングを狙ったもので、M712(過去の記事)やP08(過去の記事)はその開発目的がもっと遠距離で使うことにあったから小さいのだと思う。
また、傾向として近距離用でも、コンシールド性から小さくなっていて、これらが拳銃用サイトの標準サイズを決め、すぐに大型のサイトが普及しなかったという要因もあるかもしれない。

[照準線長,高さ]
これは単体の問題ではないが、リアサイト自体も、より後ろにマウント出来る形、またサイトの後ろに照準面を配置する形を目指して作られている。
これは、上のスナッグプルーフとは相反する要素なので、これらの要求をまとめて丁度いい位置、というものが決められている。
また、理論上、サイトは銃身の中心線に近い程、パララックス(照準線と弾道との差?)が少なくなる。
コンパクトさにも貢献するのだが、これも見やすいために大型化すると失われるので、いかに低くマウントするかはそれぞれのデザインで工夫されるところだ。

[調整機能]
軍用拳銃では破損の危険の低い、ドブテイル(アリ溝)式のスライドだけが可能な半固定のサイトが主流となった。
軍用でもサイトの大型化は戦後も進んだが、ドライバーで上下左右に調整できるサイトは避けられた。
これが多弾数の複列式弾倉の流行と共に警察や民間にも波及し、更にポリマーをフレーム使ったオートの流行などでミリタリー用の流入はリボルバー(回転式)のシェアを奪いとった。
S&W(カテゴリ有り)のKサイトはコルト.45オートのカスタムに使われたりもしたが、回転式と共に大きくシェアを後退させることとなった。
競技用ではより高い命中精度を目指すことから調整式の方が多いが、回転式で公用でも多く調整式サイトが使われたのは、当時、リボルバーの固定サイトはコンシールド(隠し易さ)を重視し、低く小さなものだったから、大型のサイト=調整式だったという側面もあったかもしれない。
加えて回転式は使用出来る弾のバリエーションが多い。
.357マグナムなら.38スペシャルも.38+P(パワー)も撃てる。
そして、自動装填式より(手動なので弾の違いによる動作不良は無い)、弾頭の重さにも選択範囲が拡がる。
結果着弾が大きく異なりやすく、これをいちいちサイト交換などの厄介な方法で調整するのも面倒だった、というところもあるかもしれない。
S&WのKサイトとは別に、自動装填式の競技用カスタムに使われたボーマーサイトは、今も競技用アイアン・サイトの定番として使われている。ひとつ飛んで下の写真の、SF ハイキャパシティについているのがボーマーである。
更にリアサイトは引っかかりにくく、かつ狙いやすいデザインのノバックなどが登場し、コンシールド用途にも向くものが出来ると、これがまた流行した。
ライフルでもオープン型が多かったが、米国ではピープ型を早くから使い、NATO諸国でもピープ型を採用するようになってきた。
ドイツのH&Kは、このため、両方を備えて回転させる事で変えられる、ドラム式のリアサイトを装備した。
下はH&K G3(過去の記事)のオープンサイト位置。
SG1/14


ライフル,サブマシンガンなどでは、直ぐに射距離の切り替えが出来る、選択式のサイトも多い。
UZIやM16(過去の記事)では、横から見てL字のサイトを倒して切り替える。
現在ではスコープやダットサイト,レーザーサイトなど光学式のサイトが普及したため、フリップアップ式といって、通常は倒しておき、光学サイトの故障などの場合は起こして使用するサイトも登場している。

タンジェントサイトは、Kar98k(過去の記事),モーゼルC96,ルガーP08アーティラリーなど、ドイツの第一次大戦期のものに多く、これは支点の後ろにつけた尺に沿ってスライダーを動かし、数学のタンジェント値を求めるのと同じように、高さが変わるもの。
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[強度,脱落防止]
ノバックサイトは上に述べたように、非常に強度的に強い形で、これが支持を広げた要因のひとつだと思う。
また、強度とは少し違うが、弛み,脱落防止という点も配慮されている。
クリック式の調整機能も、発射の衝撃による弛みで狂いが生じないようにも、配慮(クリック数で調整内容を記録,記憶しやすくするのも目的)したものだと思う。
余談になるが、日本のモデルガンで初めて上下左右調整のクリック機構を持ったサイトをつけたのはMGCのパイソン(過去の記事)だったと思う。

[スナッグプルーフ]
拳銃は特に、ホルスターなど納めて携帯するのが主なので、抜くとき、収納するときに引っ掛かり難い形状が好まれるようだ。
ライフル等でも、装備や衣服が引っ掛からない方がいい。
銃の上部に取り付けられることが多く、突起物になるリアサイトは、ガードを引っ掛かり防止の用途にも用いているものが多い。
20世紀初めは、フレームを削り込んで突起を無くしたものが多く使われたが、その後なだらかな傾斜のガードをつけたM459や、サイトそのものをスナッグプルーフ(引っ掛かりにくい形)としたノバックのようなものが出てくる。
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[薄いサイトリーフ]
まず、サイトの形式に関係なく、照準のための凹型,穴型を設けたリーフ部分がある。
一体のサイトでもここは薄くなるように成形するのが多いのだが、これはリーフが厚いと凹型,穴を開けた内側の側面が見え(遠近法で遠くに行くほど小さく描くのと同じで、並行に同じ溝,穴を覗くとその内側が見える)、ここがクリアなピクチャー(輪郭?)を阻害するからだ。
このため厚いサイトでは、前方から削りを入れて照準面が薄くなるようにしている。
例外のキンバーのサイトなどは、溝を並行ではなく、テーパー状に前方を広くしてこの問題を解決している。
余談になるが昔、MGCがキンバーのモデルガンを作ったとき、このサイトを再現しきれず、真直ぐ並行に同じ幅の溝を切ったサイトをつけていた。これはサイト前部が少し見え、サイティングに少し邪魔になる。
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[照準面の反射防止]
サイトリーフの前方は、上記のように薄くする為の工夫がなされているが、その後方、照準面は、光の反射を防ぐ対策がなされている。
これは照準面が光ると、照準しにくいのと、その具合で錯覚による誤差を生む恐れがあるからだと思う。
まず、光を反射してもそれが目に入らないように、視線に対して直角か若干下向きに傾けて照準面を取り付けるものがある。
これは上のヘイニーやデカスペシャル(Ⅲでした。訂正します),MEUのものや、コルトのターゲット用などに用いられるイライアソン、H&KのUSP(過去の記事)のサイトなど、多くのものが採用している。
次に、照準面自体に加工して反射を防ぐ工夫がある。ここにグルーブ(横溝)を彫るもの、チェッカー(格子状の溝)を刻むもの、サンドブラスト(砂を吹き付ける処理)やマット(艶消し)の塗装を施すものなど、多様な対策がなされている。
また、強度上の保護も兼ねて、側面にサイトリーフ部分に光が当たらないようにガードをつけるものがあり、一体型でも、ノバックは後方から削って照準面を成形し、ガードの効果を持たせているともいえる。
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このように見ていて感じたことは、過去の作品でも単に配慮が足りない、進化の途中にあるのではなく、現在より遠距離に焦点を当てているなど、違う目的で造り込まれている、という点もあることだ。
もちろん、技術の進歩はあり、新たな発明もいろいろ盛り込まれて、現在の多彩なリアサイトがある。
またノバック系?でもウィルソンは違う形、S&Wは更に薄いもの、というようにそれぞれが目的を絞り込み、あるいは逆に汎用性をもたせ、機能向上を図っている。
まとまりのない企画になったかも知れないが、サイトはその銃の性格によって形を変え、逆にその銃の性格を形成する影響を及ぼす(もちろん全てのパーツが、その銃の性格を形作っているのだが)、結構重要なキーパーツだと思う。
それぞれのサイトには、設計者の思いが込められているように思う。
こんなことを考えながら、新たな視点でGunを見つめるのも楽しいもの。

今回のドール衣装は、Link先のmomoclo 樽猫さんに作ってもらったもの。
これは、momocloブログでも紹介されている。
それでは、今回はこのへんで。
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今回は、銃の要素シリーズとして、フロントサイトを取り上げようと思う。
(ちなみに要素シリーズ第一回はこちら セフティ
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[フロントサイトとは]
フロントサイトとは、照準に使う装置のうち、アイアンサイト(光学式,レーザー式など以外の旧来のサイト。主に鉄で出来ているからか、こう呼ぶ)の片側、銃口側の部品である。
照準は、おおざっぱにいうと、目標,フロントサイト,リアサイトを直線状に結ぶと弾が当たるように調整して使う。
火縄銃の時代からサイトはついており、実に多種多様な形をしているのだが、今回は20世紀に入ってからの拳銃,小銃のものに焦点を当てて見ていきたい。
現代ではスコープ,レーザーサイトなどの機器も発達し、アイアンサイトに頼らないことも増えたが、簡単な装置でもあり、まだ大抵の銃には装備されている。

[照星]
フロントサイトは日本語で照星という。
「照準器のうち照門や照尺の事を見当と言い、照星を(さきのめあて)照門を(まえのめあて)と呼んだ。「見当をつける」は、位置を見極めるという意味で用いられ、照準を定める動作から、位置を見極めることにひろがったと思われる。」(ウィキペディア)とのこと。
補足すると、照門とはリアサイト、後方(顔に近いほう)の照準装置。
上が開いた門が逆さになった形からきているのか、はたまた視線がここを通ることからきているのか、ともかく日本では鉄砲伝来以来こう呼んでいるようだ。
照尺とは何か、調べてみたらこれは深みにはまったが、距離に応じて照準する位置を変えるための“尺”がついている後方の照準装置のようだ。

[凸型]
フロントサイトで一般的なものは凸型に分類されるもので、凹型は非常に少ない。
火縄銃のサイト形式の解説や、競技拳銃で有名なストレイヤー・ヴォイド(SV)のコンパクトタイプTIKIなど、一部ではあるが凹型に類するものは存在する。以前取り上げたH&KのVP70(過去の記事)は、塞がっているがこの凹型といえなくも無い。
FSI/02


[反射防止]
フロントサイトで重要なのは見やすい為の工夫だと思う。そのために、まず日光などが反射してフロントサイトが光り、照準しずらくならないよう、反射防止の工夫がなされている。
反射対策として、フロントサイト自体を保護する(ガード)板を持つものがあり、物理的な損傷防止の効果もあるので、小銃ではガード付きが一般的。
逆に拳銃ではかさばるので通常見られない。競技用にカスタムされた回転式拳銃では、装着例がある。下で出てくる、M29デベルなどがこの例だ。

反射防止板にも、様々な形式がある。
米軍制式の歴代ライフル,M1やM14,M16に代表される、王冠型に上が広がったガード板。
これはM16A1(過去の記事)のもの。
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米軍は制式ショットガンM1014(過去の記事)にも、同型のガード板付きフロントサイトがついている。
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これらも、上方,後方からの光で反射しないよう、垂直もしくはそれ以上に角度をつけた(パートリッジタイプの)フロントサイトを組み合わせている。
これに対し、上部も覆うカバーがついたものも存在する。
ドイツのH&K(ヘッケラー・アンド・コック)はG3、MP5などのウエポン・システムで、この丸型カバーを採用している。
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全周カバーでもやはり、後方から光が当たるので、垂直にフロントサイトが立って後方からの光の反射でサイトが光って見づらくなるのを防ぐ。
ドイツのKar98k(過去の記事)なども、カマボコ型のカバーを後付けしていたが、これは垂直(パートリッジ)型ではなく、後述する横溝付きのサイトである。
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[スナッグプルーフとサイトピクチャー]
拳銃では、小さくコンパクトにする必要性と、見易さとのバランスが難しい。とくに通常ホルスターや何かに入れて使うので、出し入れでひっかかりにくい(スナッグプルーフ)形状にすることも求められる。
19世紀のパーカッションリボルバーでは、今でもショットガンなどで見られるような、小さなフロントサイトが銃身上に直立しているものが多かった。コルトM1851やレミントンニューアーミーなど、側面を少し削ったりはあるが、基本的には直立の棒形状である。
この後、コルト シングルアクションアーミー(SAA)で特長的なカマボコ型の後ろを削り取った形が登場する。

M1851(後方)とSAA(前方)のフロントサイト。
FSI/05

SAAのフロントサイトは、光の反射を防ぐ為に後部を垂直に削った形状にしたものと思われる。前がアール状なのは、直立よりホルスターにしまいやすいからと、フロントサイトの長さを稼いでロウ付け接着の強度を確保したかったからではないだろうか。このあと後部を削っていないカマボコ型がコルトニューアーミー,M1911などで使われるが、今度は抜きやすさを優先したのではないかと思う。一応これもアール形状なので丁度反射するのは線一本分にはなっている。

M1911(後方)とM1911A1(前方、過去の記事)のフロントサイト。
(M1911A1はこれから下で紹介する、カマボコ型を改良したもの。)
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しかしやがてこれらを改良するアイデアが出てくる。
それは細かい横溝(セレーション)を後部に刻み、細かい階段状とし、それぞれの溝が持つ面は直角(かそれ以上)になる、というものだ。
ポリスポジティブやオフィシャルポリスで途中からこの溝が刻まれるが、ドイツでは既にルガーP08(過去の記事)が採用していた。
それからまたしばらくたって、溝さえあれば反射が抑えられるなら、もっとなだらかな傾斜に、ということで作られたのがランプタイプのサイトだ。これはいっとき主流になったといっていいほど用いられた。S&WのM36チーフスペシャルなどがこれである。

P08とM36のフロントサイト。
後方がルガーP08。前方がS&WのM36。
FSI/08


[サイトピクチャー]
横から見た形は以上のような変遷をたどっていくが、後ろから見た形状も山型,ピラミッド型から垂直型になり、そして拳銃用は大きくなってきている。
山形は頂点が小さいので、ここに目標を合わせれば精密な射撃に向く。一方大きな垂直型は目標をそのサイトのどこに置くかということになり、精密さでは敵わないが、大きく見やすい。素早い射撃に適した形といえる。
モーゼルM712(過去の記事)は、山形のフロントサイト。
FSI/16

サイトにドットを埋める形式などは、リアサイトも含めてのデザインではあるので別に見ていきたいが、フロントサイトには、集光し明るいドットを持つもの,レッドランプと言われる赤い樹脂を埋めたものなどがある。

M500(後方)とM19のレッド(インサート付き)ランプ型サイト。
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同じレッドランプでも、S&Wパフォーマンスセンターのものは、赤い樹脂が縦にサンドイッチされている。
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更に、同じM19でも、ランプ型と後方が垂直なパートリッジ型をつけたのものが存在する。
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ホワイトのペイントの起源はわからないが、パーカッションリボルバーの時代に黄銅そのままのサイト(レンミントンニューアーミーなど)があるので、色については昔から試行錯誤されていたものだと思う。

[フロントサイトの固定]
フロントサイトの取り付け方法だが、小銃の場合、銃身にベースごとろう付けするものが多いように思う。
拳銃では、ろう付けに加え、一体成形(削り出し),ピン止め,カシメたりという形だったが、台形の溝(アリ溝)を切ってはめ込むドブテイル形式が多くなった。
拳銃は反動で激しく動く(振られる)こと、動作する部分に付けていたりすること、取り付け長さが稼げず、広いろう付け面積が得にくい、などがこの要因ではないだろうか。

スタームルガーのレッドホークなどでは容易に交換出来るよう、クイックリリース機構を持つものがある。
これもサイトのベース部分はろう付けだと思うが。
FSI/10


[調整式]
ドブテイル式の取り付けの場合、専用工具などを使ってフロントサイトを左右に動かすことが出来る(溝の摩擦力だけで固定されている場合)。
ウィルソンFBIトライアルモデル(後方)と、グロックG34(前方)。
どちらもホワイトドット付きサイトだが、FBIトライアルは、ドブテイル式。
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M29デベルのフロントサイトは、競技用で、両側面の反射防止板だけでなく、スライド式の上下調整機構を持つ。
7,25,50の文字(これが目標までの距離)のところにスライダーを持って行って調整する(写真は7の位置)。
それぞれの距離の設定値も微調整が可能だ。
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これはカスタムモデルを再現したものだが、S&WのM29やM686にも、調整機能を持ったフロントサイトを付けたものがある。コクサイのM29AFモデルなどが、これを再現している。

また、米軍制式のM16ライフル、サブマシンガンだがUZIは、フロントサイトがスクリュー式で取りつけられており、フロントサイト自体を回転させて上下させる方式だ。
このような調整式のフロントサイト以外でも、高さの違うものに交換したり、フロントサイトを削って調整する場合がある。

現在、拳銃ではパートリッジ型は標的射撃用などに、ランプタイプがコンシールド(隠し持つ)用に使われるが、軍用,警察用にはこの中間の、60度(サイト後方と取り付け面の角度)くらいのものが増えている。
そして、現在では背面にセレーションを切らず、サンドブラスト加工などで反射を防止しているものが多い。
現代のサイトでは、ホワイトのドットが付いていることが多く、これが溝加工を減らしているのではないだろうか。
ドットの面積を出来るだけ大きくしているので、大部分が白い、フロントサイトのピクチャーになる。
すると、黒が白く、もしくは更に光って見難くなるのと違い(白はもともと明度が高く、差が生じにくい)、反射を抑える必要性は低くなっているのかもしれない。

さて、次回は、通常の?1モデルを取り上げる形で考えている。
そしてリアサイトも、そのうちやってみようと思う。
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では、また。

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今回は、急遽、拳銃のセフティ(safety)=安全装置をテーマに、従来と少し趣向を変えて。
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[自動化と安全装置]
初期の自動装填式拳銃では、従来の拳銃と異なり、独立した手動安全装置を備えていることが特色だったように思われる。
モーゼルC96(M712過去の記事)系やルガーP08(過去の記事)系では、機関部後部にセフティレバーを装備し、従来のダブルアクションリボルバー(回転式)より軽く、短い動作で撃発するトリガー(引き金)による事故を防止している。
この少し前、手動式ライフルなどにも独立したセフティがつけられてきていたので、独立したセフティは時代の要請ではなかったかと思う。
1900年代になって登場した小型の自動装填式拳銃では、隠し持つ用途ゆえに衣服などにひっかかる恐れも多く、セフティレバーがもしひっかかると危険である。
このため更に安全を高めようと、各種の機構の開発に各社しのぎを削り、この成果は大型にも取り入れられるようになったと思う。
例えばファブリックナショナル(FN)のM1910は同社のベストセラー小型拳銃M1900の後継機だが、親指で操作するサムセフティに加え、グリップ後方にグリップセフティ、そしてマガジン(弾倉)を抜くと安全装置が働くマガジンセフティまで備えた3重の安全機構をもっていた。
これが100万丁を売る大ベストセラーとなり、小型拳銃のスタンダードとしての地位を築いた。
これと前後して設計者J・ブローニングが手がけた一連のモデルにも、各種安全装置がつけられ、米国制式となったM1911(M1911A1過去の記事)では、グリップセフティとサムセフティが採用されている。

このあと、ドイツのワルサー社が、PP,PPKモデル(過去の記事)でデコッキング機能を備えたセフティレバー、トリガーを引ききるまで撃針をロックするオートマチックセフティ、そして撃発用ハンマーを安全状態に置き、そこからトリガーを引くだけでハンマーをコック(引き起こす)しリリース(おとす)するダブルアクショントリガー方式で安全性の面で最高のオートピストルを作り上げる。
更にこれらは、後述する独立したローディング・インジケータも備えていた。
PP,PPKとそのあとに続くP38(過去の記事)も、大型拳銃としては初めてこれらの機構を備え、安全性の向上に大きく貢献していた。

左から、PPK/S(マルゼン ガスブローバックガン)、M1910(マルシン モデルガン)、ベレッタM1934(WA ガスブローバックガン)。
M1934はこの中では一番後の作だが、安全装置は手動式ひとつだけである。ただ、このあと半世紀経っても、この構成に拘るメーカーもある。更に言うと、トカレフTT-33(過去の記事)のようにハンマーのハーフコック(途中で止める)しかないものも、軍用制式として使われた過去があり、安全装置に対する認識は実に様々である。
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[リボルバーの改良]
ヨーロッパでは自動装填式がもてはやされたが、米国では回転式が1980年代まで公用でも広く使われ、今も護身用として人気がある。
これらは普通、独立したセフティを付けていないが、内部にはセフティ機構が組み込まれている。
下の写真、向かって右のポリスポジティブは、ポジティブロックをコルト社として初めて採用したことからその名を付けられたモデル。
従来は発射後、トリガーを戻すとハンマーが撃発位置から少し後退して止まる(リバウンド)が、これが故障しても、トリガーを引ききらないとハンマーが前進できないよう、ブロックするのがポジティブ・ロックである。
この後、大手のリボルバーは同様のインターナルセフティ(内部安全装置)を備えるようになった。
左のローマンMkⅢは、同じコルトだが、第二次世界大戦後の作でセフティ・コネクター(他社ではトランスファー・バーと呼ぶこともある)形式のインターナルセフティとしている。
これは、ハンマーとファイアリングピンの間に隙間があり、ここにセフティ・コネクターが挟まるとハンマーの衝撃が伝達(トランスファー)される仕組み。
セフティ・コネクターはトリガーと連動しており、トリガーを引いたときでないと間に挟まらない。
この方式では、リバウンド機構は廃している。

ローマン4インチバレル付きとポリスポジティブ(これも4インチ)。
ローマンはMGCのスーパーリアルヘビーウエイト製モデルガン。
ポリスポジティブはタナカのヘビーウエイト樹脂製ガスガン。
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ローマンのセフティ・コネクター。
ハンマーの前に内側からせり上がってきているのがそれ。
トリガーを引くと更にピンに覆い被さる形になるところまで上がり、撃発が可能になる。
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スミス・アンド・ウェッソン(S&W)社は、ポジティブ・ロックと同様ハンマーの前進を妨げる安全装置だが、名称はハンマー・ブロックとしている。
コクサイのM19で、上のローマンと同じように覗いたところ。
ちょっと見ずらいが、フレーム内に、棒状のパーツがあるのが、ハンマー・ブロック。
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[セフティの種類]
ここらで、セフティの種類別分類や装備のセオリーについて考えたい。
まず、手動式の独立したセフティと、自動もしくは他の操作に連動するものがある。
独立したセフティも、単に撃発装置をブロックするだけのものから、ハンマーのデコック、スライド,ハンマーコック(起こす)等の操作も出来ないようにロックするものまである。
他の操作で連動するものには、上記のように引き金に連動するもの、グリップについていて握ると解除されるもの(グリップ・セフティ)、マガジンを抜くとロックされるもの(マガジン・セフティ)がある。
これらとは別に、ハンマーを安全位置まで戻して、長く重いトリガーを引かないと撃発しないようにすること(ダブルアクション)も安全性を考えた機構だ。
現在では撃発はダブルアクション・オンリー(DAO)とし、手動安全装置を廃したモデルが、簡単な操作で安全性も高いとして警察等で流行している。
また、撃発装置をブロックするものではないが、カートリッジの装填を知らせるローディング・インジケータ、内蔵ハンマーやストライカー式でそれがコックされていることを示すコッキング・インジケータなども、安全の為の装備である。

[質と量とヒューマンファクター]
これらの安全装置を備えれば備えるほど安全性が上がるか、というと、これはそうでもないように思う。
むやみにたくさんあれば良い、とは言い切れない部分がある。
数が多いと、時にどれかが機能しているはず、という気持ち、慢心を生むし、余り多いと操作が煩雑に過ぎ、使い方も覚えにくく、逆に使われないようになることもある。
安全装置で重要なのは確実性で、フェイルセーフというのは、失敗(の可能性)があるから数が有用である、という逆説的考察も、成り立たないだろうか。
複数の自動装置で安全な状態に保つ、というのは良いのだが、人間に多くの安全操作を要求するのは、必ずしも良い結果を生まないと思う。
ヒューマンエラーの低減には、シンプルな方法に絞るというのも有効な方法だ。

更に銃は必要なときには速やかに撃てるものが望ましく、操作が複雑で弾がなかなか出ないと、本来の「撃つ」という機能に問題があることになる。
そこで、個人装備の火器では、後述する工具や本体とは別の機器を使う追加ロックを除くと、どんなに安全性が高いと言われるモデルでも、手動の独立した安全装置はまず一つだけだ。
あとは自動,もしくは連動式のセフティが組み合わされて万一の事態に備えている。
つまり装填してあれば、セフティ一つ解除してトリガーを引けば、通常は弾が出るようになっている。
これは安全を重視しすぎだと言われる日本の制式銃でもそうだ(安全装置が180度以上も回転させる、引いて回す必要があるなど、他では見られないくらい扱い難いことになっていたりするが)。


[追加ロック機構]
近年では、メーカーが対策に消極的だと訴えられるまでにエスカレートしたアメリカの訴訟事情もあり、たとえ装填されていても撃てないように、施錠できるモデルが増えている。
H&KのUSP(過去の記事)では、マガジン(弾倉)を抜いた穴から鍵を差込み、ロックがかけられるようになっている。(これはKSCのガスガン)
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S&WのM500でも、鍵を差し込んでロックできる構造を採用している。
こちらはフレーム側面の、シリンダー・ラッチ(シリンダーを出すボタン)の上に鍵穴がある。
これはタナカのガスガン。
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そして本体に施錠機能が無くても、トリガーを引けないようにロックをかけるもの、ガンケースに施錠するものなどをメーカーは添付しており、安全対策品は必須の装備となってきている。
更にこれらのロックも各種のものが市販されてきているし、専用の鍵でなくても、下の写真のようにフレームに施錠してシリンダーを入らなくしたり、トリガー後方につけて引けなくするなど、様々な対策が可能だ。
また、ライフル等でも、機関部を開いた状態で挿入する器具が販売されていて(チャンバー・セフティ・フラッグ)、これも大抵の銃で使える。

タナカのガスガン、M29クラシック(過去の記事但し今回のシリンダーはノンフルートタイプ)にクリプトナイトのロックをつけたところ。
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[暴発]
日本でも最近、幼い子供が自分の兄弟を撃ってしまうという痛ましい事件が起こっている。
まず犠牲者の方に哀悼の意を表したい。
さて、実はこのような事故で出てくる「暴発」という言葉に、少し違和感がある。いかにも銃の故障に起因するかのような、無責任な表現ではないかと思うからだ。
過去にAK47(過去の記事)のところで触れたように、人間の責任を道具に転嫁すべきではないと思っている。
今回の場合でも、銃に弾を装填し、安全装置の解除(最初からかけていない場合もある)、そして引き金を引く、という一連の動作が間違い無く行われて弾が出たはずである。
暴走、というのも本来はコントロールを失った状態だと思うが、車,バイクの暴走に限って言えば、「故意に」無謀運転をすることだと認識されているように思う。
これと同じく、大抵の「暴発」もルールを無視した危険行為の結果である。

今回の事故の原因は、銃の事故で最も多い、「弾が入っていないと思った」という誤認だったと思われるという。
思い違いなどが生じないよう、複数の機会で抜弾を確認するのだが、これを全て怠ったということなら、やはり数より質が検討されるべきではないだろうか。
上記のチャンバー・セフティ・フラッグを入れないと射撃場の出入りが出来ないなど、確実に抜弾を確認させる方策も、考えてもらいたい。

子供は、ときに全く予想しない行動に出ることがある。
特に今回は、父親が目を離した短時間のうちに事故が起こっており、引き金をたまたま触ってしまった、というより、興味を持っていて銃に触れるチャンスを伺っていたのではないかと思う。
このぐらいは好奇心旺盛な時期であり、またもともと、人間はタブーには逆に強い好奇心を喚起されるものだ。

銃を持っている方には、確実性の高い安全策で自分に可能な数に絞って、それを徹底することで事故防止を計ってもらいたいと思う。
そして、これは銃に限らず、乗用車や暖房器具など、日常使用する道具にも言えると思う。
今回の問題を銃特有の、特別な事故例として片付ける傾向があり、もしかするとそっちが多数派かも知れない。
銃が無くなれば、ということについては、上にも示したAK47の記事の際に少し考えを述べさせてもらった。
ただ、今回のような事例を踏まえて、個人の実銃所持,保管について規制を強化しようという声が挙がること自体は否定できないし、実銃を持つ権利を主張するなら、その義務である安全管理について、更に進めなければ反論も出来ないと思う。
実銃所持の是非は、また機会があれば問うことにして、安全の確保について今回の事例から教訓を得ることについては、どちらの立場でも否定されるものではないと思う。
どうか子供が重大な事故を引き起こす悲劇の無いよう、安全に気を配っていただきたいし、自らも注意したいと思うものである。

次回は通常の形に戻して、前回予告した?ネタをやるつもりなので、またよろしく。
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まとめ

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