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今回は近代サブマシンガン、いやサブマシンガン全体でも代表的機種の一つとさえいえる有名モデル、ウージーを。
UZI/06


[概要]
陸軍中佐、ウジール・ガルが開発(故にウージーの名が冠されることになる)を担当、IMI(現IWI)社がイスラエル初の国産兵器として1951年完成、1953年に量産を開始したのが、ウージーサブマシンガンである。
サブマシンガンとは、拳銃弾を使用し、フルオート(弾があれば、引き金を引いている間は連続して弾が出る)射撃が出来る銃のこと。
1956年の第二次中東戦争で実戦投入され、バトルプルーフ(実戦で性能を検証,信頼性を確認)されたウージーは、その後ドイツなどにも輸出、米国のレーガン大統領狙撃事件では、シークレット・サービスが何と服の下にこれを隠し持って護衛していた、など広く使用され、その後のサブマシンガンにも大きく影響を与えたモデルだと思う。

今回の1/1はマルシンのモデルガン。
これは組み立てキット販売の、マルシン通産3型目になるモデル。
UZI/05


[名銃?]
いきなり否定的な感想だが、当初ウージーに余り良い印象は無かった。
手にしてみるとユーザーフレンドリーではないと感じられたからだ。
まずトリガーガード。
手袋などをしていてもトリガーに指をかけやすいように大きくしたかったのだろうが、指があたる部分が斜めになってグリップ部に溶接されており、保持するとここが当たって痛い。特に片手保持しようものならこれは顕著だ。
更ににグリップ自体が異様なほど太い。
このブログではH&KのP7M13やS&WのM59を取り上げているが、UZIのそれは機関部に対して直角、この角度,形状も含めて握り難い。

グリップ部とトリガーガードつけ根。
UZI/16


また機関部レイアウトもバランスの悪化を招いているように思った。
グリップを前方に持ってくるとやはりバランスは良くない。グリースガンの方が(トイガンが樹脂製で軽いのもあるが)ずっと振り回しやすい。
L型ボルトを使い、バレル(銃身)長を長くとり、またマガジンを垂直に配置したかったというなら、素直にブルパップ(bullpup 機関部を後方のストック内に配置、機関部の前方にトリガー,グリップがくる配置)の方がグリップの自由度が高い。
しかし、いっときライフルでもブルパップが流行ったが、現在はストックが短く(折りたたみ,伸縮)なるものが主流になっている。
そしてこの狙いの、根本的な話だが、バレルは長い必要があっただろうか。
L型ボルト配置のコンパクトさについては、それこそMP40,M3A1あたりと変わらないし、バレルが長いほうが確かに初速は高いが、ウージーなどのオープンボルト(ボルト後退位置からの発射)形式だと、命中精度は機構上期待できない。
模型でも、大きく重いボルトが、発射時後退位置から前進してくるので、激しく上下にぶれ、とても精密射撃など出来ないと思わせる。
このボルト衝突前に弾が出ている、という記事もあるが、実際ウージーは命中精度においてはMP5などに敵わないようだ。

更にウージーには、バヨネット取り付けラグも設けられているが、ほとんど手の位置に近いところにバヨネットが来る。
これはプルバップ型アサルトライフル以上にリーチが短い。
これでは白兵戦で役立つのか、とも思うが、バヨネットが付いていれば、突き出したバレルを掴まれる、という事態は防ぎ易いのかも知れない。
UZI/09


重量も重い。
これはキットモデルで、グリップフレームが樹脂製なのだが、それでも重く、更に実物は3.8kgとか。
重心に近いところにグリップを持ってきているので、上で触れたように片手保持を考えた可能性もあるのだが、そうすると、この重量は負担が大き過ぎるのではないかと思う。
第二次大戦直後なので、この当時のレベルだと特に重い、というのは酷かも知れないが、これなら短いライフルと変わらない。

UZIはフロントに回転調整式、リアには切り替え式で、前後とも立派なガードをつけたライフル並みのサイトを持っているが、これは過剰装備ではないかとも思える。

と、ここまで一気に否定的見解を並べたが、しかし世の中の製品になかなか完璧だというものは無いし、時代的にこの製品が過渡期にあった部分もあり、やはり歴史に名を残す名銃、良く見ていくと、なかなか侮れない、いや再評価すべき点が多い。
このウージーは、当初の見解を、大きく見直すことになった一丁でもある。
それは、他に類を見ない安全性と、よく考えられたメンテ性だ。

[起源]
イスラエルは、当初サブマシンガンをチェコから輸入する計画だったとか。
しかし結局チェコの共産化により輸入が出来なくなったらしい。
このときの試作モデルZK476が、ウージー設計に大きく影響を与えたようだ。
Zk476はマガジンハウジングをグリップとするレイアウトと、この為のバランス悪化と後方スペース短縮の必要性からL型ボルトを採用、この構成の初のサブマシンガンだという。
このZK476というのは試作で終わったようだが、1949年設計完了,1952年チェコ制式となったVz24の9ミリ版、Vz23,Vz25(Vz23の金属製回転折りたたみストック付き)がUZIに影響を与えたという指摘もある。
また、Vz23はZK476の改良量産型という情報(噂?)もあり、どちらにしてもこれらチェコ製のサブマシンガンはUZIの設計が完了したとされる1951年より前から存在したので、UZIはこれらをベースに開発された、というところらしい。

ウージー上部のボルトカバーと、これを外して取り出せる、L型ボルト。
ボルトは中央付近を前後方向に切れば断面がL型になるが、前方はコの字型にエジェクションポート(排莢口)が開いた複雑な形である。
UZI/07


[ウージーの独自性]
Vz23は、構成の他にも拳銃ワルサーP38の横縞模様入りグリップなどがウージーと共通である。
しかし、ウージーは、単なるデッドコピーではなく、これらを除くとほとんど別物といっていいほどのオリジナリティを持っている。
例えばセフティは、親指で操作する一般的な手動セフティ(スライド式は珍しいかも)だが、これを発射モードの切り替えセレクターと兼用にし、ブローニング設計の拳銃で多く用いられていたグリップセフティを追加、更にボルトコッキングレバーを後退位置で止めるストッパーも装備し、これもセフティと考えると3重の安全装置がある。
ここまでの安全装置を備えたサブマシンガンは、他には見られない。

グリップ部のアップ。
グリップ内にマガジン(弾倉)が入り、マガジンキャッチもグリップ左側下部(この写真手前)につく。
更に左側上部にはセレクター兼セフティ、グリップ後方にはグリップセフティがある。
しかし、それだけたくさん盛り込んだせいか、人の手のサイズを無視したような大型グリップになっている。
UZI/17


ボルトカバー裏側のアップ。
ボルトコッキングレバーが前後するボルトカバーのガイド横側に刻まれた溝に、ラチェットのようにレバーについた突起が噛む。いっぱいまで後退させないと、これが解除されないので、ボルトはそこで止まり、暴発を防ぐ効果もある。
UZI/13


[L型ボルト]
ウージーはバレル固定部を前方にして、バレル、チャンバー部を内部で突き出すような形に配置、そしてボルトをVz23に倣ってL字型とし、薬室前方まで伸ばした。
これによってボルト後方の体積を減らし、コンパクト化出来た。
また、Vz23のレシーバーは円筒型,ボルトは円柱型なのに対し、ウージーは角型である。
同じ高さ,幅なら端一杯まで使える角型の方が有利であり、よりコンパクトにすることが出来る。
しかし、この改良は、製造のシンプルさを失い、強度確保の難しさ(後述するプレスによる凹凸などが必要になった)をもたらすことになる。

ボルトのレイアウト。
カバーを外すと機関部が覗く。銀色のパーツがボルト。
ボルトがマガジンのあるグリップ部より、かなり前に来ているL型ボルトのレイアウトが分かる。
ウージーは簡単なブローバック(吹き戻し、カートリッジを後方に押す発射ガスの力を利用する)なので、機関部にはロック機構などがなく、単にボルトが前後する。
これはモデルガンでも全く同じ方式。
UZI/11


[分解性]
これ以外にも、Vz23のレシーバーはグリップ部も溶接された一体型だったようなのだが、ウージーはここを分離、ピン留めで構成している。
こうすると、部品点数も増えるし、構造上も少し複雑になる。
しかしこれによって、構成の中で最も複雑,精緻な安全装置やセレクターを内蔵したグリップフレームが一体で分離できるようになった。

通常の分解は、上部カバーには分解用のレバーがあり、これを押してカバーを開けると、ボルトやスプリングが外せる。
通常の手入れはここまでで充分だ。
現在米軍が使うライフル、M16系は分解するときピンをカートリッジなどで押して(脱落防止にはなっている)結合を外し、それから機関部を持ち上げる。
MP5やイングラムも同様だ。更にMP5だとローラーロッキング機構など細かい部品もついている。
また戦時中のM3A1グリースガンなどでは、ストックを外して、それを使ってバレルを回し、外すとようやくボルトが抜ける、というややこしいものになる。
MP40はそれよりましだが、レシーバーのナットを回して外し、機関部を外す形式で、バレルの分解は通常フィールドで行う事は考えていない。
ウージーは、AK-47と同じ通常分解方法で、実にシンプルである。
イスラエルは、FAL(FN社)を制式ライフルとしていたが、後にAK-47をベースとしたガリルに移行する。
このとき開発にウジールとIMIが絡んだようだが、ウージーの成功が、同じ分解方法をとるAKの評価に少なからず影響を与えた、もしくは逆にAKの影響で、ウージーは同じ分解方法に改められていたのではないだろうか。

グリップ部分解の様子。
UZI/14


更にバレルを交換するならバレルナットのロックを押して回せばバレルが分解でき、これも簡単である。

モデルガンは安全策の為、実物の長さより短いが、一応同じように外せる。
UZI/15


こうなるとAK47以上である。
以前トカレフTT-33のハンマーユニット化の効果について疑問を呈したが、UZIをみれば納得するはずだ。
通常分解ではトリガーメカは外れないし、外したいときは簡単、しかもトリガー,セフティなど発射に関するものは全て一体化している。
バレルの交換もシンプルで、かつ他とは分けている。
それではもっと簡単なら、と思うところだが、それがいいわけでもないのだ。マドセンというサブマシンガンはフレームが左右分割式で、バレルを止めているナットで結合されている。
バレルナットを回して外すとフレームが割れて機構部品も出てくるのだが、通常分解が必要ない部品まで一気に外れるのは逆に不便である。

[プレス]
ウージーの開発では、建国間もないイスラエルの国情を反映し、高度な加工技術を要しない生産性の良いものが求められたというが、製造の簡単さ、という点では、Vz23の方が優れている。
ウージーにはレシーバーの各部にプレス加工による凸型が成形されている。
これはドイツの軍用車キューベルワーゲンや、ガソリン携行缶でもみられ、薄板の補強として一般化した手法で、後にイングラムも同様の加工としている。
第二次世界大戦期の代表的サブマシンガン、MP38は表面に長溝状の凹凸があったが、これは削ったもの、MP40では省略されている。そしてMP43などで、プレスで溝をつけたモデルが登場してくる。

板からレシーバーを作るときに型で打ち抜いて、ついでにこの加工も施すなら手間はそうかからないが、もちろん無しで済むならその方がいい。
これは円筒から角型のレシーバーにしたため、平面状の部分が薄い鋼板だと曲がりやすいから施されたものだと思う。
つまりVz23の形そのままなら、円筒部は凹みにくいので不要だったかもしれない部分である。
UZI/10


[ストック]
ウージーは開発当初木製ストックをつけていた。しかしこれではせっかくのコンパクトさが活かされない。
そこでプレス鋼板を使い、折りたたみ式のストックを取り付けた。
これは他のものでは見られない。
2点ヒンジの折りたたみストックは特徴的で、意味無く伸縮してしまいたくなる。
サブマシンガンのストックは実に様々な様式が試されていて、ドイツのMP38ではショルダーパッドの部分とストック付け根にヒンジを持つ、ロッドとプレス鋼板を組み合わせたタイプ。
米国のM3A1はワイヤーを曲げ引き出し式とした。その後英国のスターリングMkⅣはショルダーパッド部とその支えとなるロッドを着脱して収納できるものとし、イングラムなどワイヤの折り曲げ式ショルダーパッド部をヒンジとし、ストック自体は引き出し式としている。
コンパクトさが要求されるので、各社素早く小さくできて、強度もあるものをと苦労しているようだ。
逆にアサルトライフルでSIGなどに見られる横折りたたみ式はH&KのMP5PDWくらいで、余り見かけ無い。
しっかりしていても、小さくならない(全長は縮まるが横に張り出す)から敬遠されたようだ。

ウージーのストックを引き出しているところ。完全に伸ばすとロックがかかる。
UZI/18


上で疑問も呈したサイトだが、これもバレルにつける従来の方法を止め、レシーバーにつけている。このため照準線長(前後サイト間の距離)は短くなるが、銃の性格上精度は問題では無いし、これで堅牢なサイトシステムとでき、バレル交換も容易だから、照準線長(前後サイト間の距離)以外は、デメリットは無い。

[1/6]
ここで1/6も。
今回も単品購入だが、このメタルストック付きウージーはドラゴンのものではないかと思う。
(追記;丸弐様より情報を頂きました。これはドラゴン製で間違いないようです。)

UZI/02


[機関拳銃]
ウージーは既に過去のものになったかというとそうでもなく、何と日本でウージーの継承機種が新たに作られ(無断なのでクレームがきたとかいう噂もあるが)、使われている。
どうして今更重いボルトの前後運動を伴う発射機構を使うのか、H&KのUMPは確かにシンプルブローバックだが、クローズドボルトで命中精度も良いという。
連射中の安定性と、狙って当たる命中精度は別で、その両方を確保するのが最近の傾向だと思う。
TMPもクローズドである。TMPはこの点でも、また他の機能にしても優れている。グリップフレームにマガジンを入れる形式は同じだが、スリムになっているし、フォアードグリップも装備している。UMP同様ポリマーも取り入れ、割り切ってストックを脱着式にしたことでシンプルな形にもなった。
Vz61は既にクラシックの部類だが、弾薬を小さなものにして成功した。機能的にもこの方がよく出来ている。
機関拳銃もフォアードグリップを無理やり?付けているが。

1/6でウージーの2タイプと機関拳銃を。
木製ストック付きはフルタの銃コレクション。
機関拳銃はバイスが手がけたスモールアームズコレクションのもの。
UZI/03


日本では、自衛隊や警察関係以外では実物に触れる機会が少ないが、銃の取り扱いの基本は、撃ち方と手入れ方法であると思う。これも、ともすれば撃ち方の方に視点が行き勝ちだと思う。
しかし、使用者にとっては、分解整備は基本だ。乗用車のようにガソリンだけ入れていれば、あとはディーラーの定期点検整備だけで動く、というようなメンテナンスフリーの銃は現代でも夢の世界だ。
使い易い銃は、通常必要な分解が簡単で、またそれ以上の場合も適切にばらせ、交換もその必要な頻度に応じて適切な手順(容易で,かつ目的部分の分解で余計なところをいじらなくて済む)のものがいい。
身近な機械、例えばプリンターなどを考えて欲しい。インクの交換が簡単なだけでなく、ノズルも交換可能、とか、詰まった場合の用紙の取り出しが簡単なものが、使用者側にとっては使い易い機器といえないだろうか。
ハイスペックでもすぐにノズルが詰まり、紙がつっかかってトラブル続出、おまけにユーザーではリカバリーできずにサービスマンも往生するような機械より、性能はそこそこでも信頼性があり、また復旧がしやすいもののほうが使えるはずだ。

既にUZIは過去のものになりつつあるが、サブマシンガンという大量に弾丸を発射する個人装備の火器の、整備性の重要さをよく認識していた、という点では良き範となるのではないだろうか。

[イスラエル]
第二次世界大戦(WWⅡ)後、いきなり中東に建国されたイスラエル、同国は中東全体を敵に回し、地理的には孤立無援、また国内基盤も脆弱な中、兵器の調達,確保が急務だったという。
これだけでなく、イスラエルが兵器も生産し、その後これを輸出して産業として成立している、という「国としての体をなしている」という形を作る事も目的だったのではないだろうか。
当時世界的戦争が終わって、危険な武器なので一般には放出できないサブマシンガンなどは大量にだぶついており、また、これらWWⅡ期に生産されたサブマシンガンの寿命はまだ充分残っており、日本の自衛隊でも長く米国のM3グリースガンを使っていた。
経済的には自国生産の方が、コストが安いとは開発時点で言えなかったと思う。
つまり作る事自体が大きな目的、だったのではないかと思う。
そこで手っ取り早く生産でき、役に立ちそうなサブマシンガンを自国で生産して調達する、という戦略を立てたのではないだろうか。
そこで開発が始まったウージーだが、やはり実際に危険が迫っている環境の為か、ともすれば開発技術者が忘れ勝ちなところをしっかり押さえたものになったようだ。


それでは今回はここらへんで失礼。
UZI/04

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今回は、秋葉原の事件と、ナイフの規制について考えたい。
OP/05


まず、この事件で犠牲となられた方に謹んで哀悼の意を表し、被害に遭われた方にお見舞い申し上げたい。
少し話はそれるが、一般的に良く用いられる、一日も早い回復を、という慣用句に今回は違和感があり、敢えてお見舞いとさせていただいた。
打撲に創傷、しかも重度の方もいらっしゃったようなので、容易に全快することを予想したような言い方を軽々に用いたくない。
個人的には指の縫合治療の経験があり、これでも最終的には後遺症状固定、で終わってしまった。
今回の被害者の方々は、更に心的外傷も考えられ、その苦しみはいかばかりか、察するに余りある。
心よりお見舞い申し上げ、もちろん少しでも症状が良くなることを願って止まず、そして皆様が全快される日がくれば、これほど嬉しいことは無い。

また、今回も記事の前後にナイフと人形の写真をつけているが、これはこのブログのスタイル、テーマの絵的表現で、間口を広げる意図で始めたものであり、もちろんこの問題をふざけた気分で茶化そうというつもりはなく、もし気分を害された方がいたら先にお詫びする。

さて、刃物製造団体がダガーナイフの生産を自主的に中止、規制を求めるという記事もあったので、既に銃刀法の改正は規定路線になりつつあり、負け犬の遠吠えかもしれないが、ユーザーの立場からも意見をいわせていただく。

[犯行とその罪について]
この犯行自体については、厳しく糾弾すべき行為だと思う。
これは広く一般に恐怖を与える事を狙った、という点ではテロである。
いかなる理由があっても、断じて許される行為ではない。
これは卑劣極まりない、汚い手段で、何の落ち度も無い方々を、ほぼ無防備の状態から一方的に攻撃したものだ。
ただ、犯行に至る犯人の心理や、犯人を取り巻く周囲にも何らかの悪意(法律用語ではなく、一般的な、犯人への加害を目的とした意思)が無かったか、派遣雇用,失職の不安など社会の問題、心の拠りどころとなるべき家族関係の形成の問題等、これから調べ,考えるべきものも多いと思う。
今、一般の立場にある者が犯人自体,またはこの罪を断じるのは、早計ではないかと思う。
罪については、今後行われる裁判の場で、公正に裁かれることを望むのが法治主義の観点から重要だと思う。
魔女狩り裁判になっても、アンチヒーロー化が進み、第三の模倣犯を呼ぶ恐れもある。
また、この事件は、裁判員制度の対象になる可能性も考えられるのではないかと思うが、その際には、どうかより一層深く、事件について,罪について議論,考察いただき、間違っても裁判員制度を「一段高い傍聴席」に終わらせないよう努めて頂きたいと思う。
裁判員に選ばれた方には、民意の確かさ,正しさを示し、そして有用性を知らしめて裁判の民主化を押し進める原動力となっていただきたい。
(*今回のケースでは、その施行前に起訴され、従来の裁判で裁かれるようです。追加訂正します。)

[モノについて]
犯罪は、それを行った人間に問題,原因があるのであって、物のせいではなく、また物のせいにしてはいけない、という主張もあり、基本的には賛成である。
そして、ナイフの規制強化で事件の防止は図れないと思う。
但し、現在この理解が得られにくい状況も理解しているつもりである。
しかし、敢えて主張させてもらうのは、サバイバルゲーム,テレビゲームが根本の問題であると思わせるような間違った情報、凶器についての誤った知識については、おこがましい言い方かもしれないが、それに気づいている我々が意見を発し、訂正していかなければならないことだと思う。
そんなことはどうでもいい、といわれるかも知れないが、過去にも似たような犯罪は起こっており、判断の誤りが、このような犯罪が繰り返される一因ではないかと思うのだ。

できるだけ被害者の方の感情を刺激しないように配慮させていただくつもりなのだが、誤りについては声をあげ、また有害でないと思われるものは続ける、という方法を今も模索している。
もちろん、その判断につき、それぞれご意見はあると思う。
だが、ルールを守っていれば、それ以上「空気を読め」などというような、過度の自主規制につながるようなことを認めたくないし、基本的に言論の自由は保証されるべきだと思う。
そして、それぞれが、現在では(このように)それぞれが得ることの出来る発表の場で、意見を表明すればいいと思う。

このブログでは過去にいくつもナイフを取り上げている。しかし、これらはナイフの悪用については警鐘を鳴らし、また手前味噌ながらサバイバルナイフ,タクティカルナイフがどういうものか、といった疑問について考えるという趣旨でも記事を書いている。
このような知識,考察の普及は、犯行を誘発しエスカレートさせるものではないと思う。
今回ダガーナイフがセンセーショナルに取り上げられ、これが過度に恐怖心を煽る報道の一翼を担ったと思う。
そのような“演出”に警鐘を鳴らす意味でも、決して有害無益なものではないと思う。
また、今回の報道でも問題のあった、何をサイバイバルナイフというのか、など定義の考察とその一般化は、必要なことではないだろうか。
よって過去の記事を削除したり、一時的に閲覧禁止にはしていない。
また、一部の書き込みに見られた、犯人が心理的効果を狙ってナイフを選んだ、という主張が正しいのなら、尚の事ダガーナイフを“凶悪無比な道具”や“未知のツール”にしてはいけないと思う。
未知こそ恐怖のもとではないだろうか。

[テレビ報道について]
テレビ報道が、作為をもって事件の演出を計り、意図的に恐怖心を煽ることによって視聴率の向上を狙ったとは考えたくない。
また視聴者が皆、結局は対岸の火事であり、現実性を持って見ておらず、このためよりスリリングなものを要求し、この報道にフィクションより面白い演出を求めたとも思わない。
しかし犯人の目的が広く大衆に恐怖を与えることであり、またワイドショー独占といったことを自虐的に語っていたようなので、マスコミにはその目的完遂に手を貸したこと、虚構のモンスターを作り上げようとしていることには反省していただきたいと思う。

その一方で軽視されている面がある。
今回のケースでは、犯人は警官が拳銃を抜いて威嚇したところ、抵抗を断念、武器を捨てたという。
ナイフ程度では拳銃に抵抗できず、警察の武力はテロに勝ったのである。
犯行の発生は防げなかったが、今回のケースは地の利(警察署が近い)もあり、迅速に犯人の凶行を止め、被害の拡大を阻止できた。
図らずもテレビドラマで、「被害者を安心させることが第一」というようなフレーズを聴いたところだ。
(このドラマの主人公役は、以前同じくドラマで、バタフライナイフを使い、槍玉にあげられた。
もちろん、安易にテレビに影響され、悪用する者が悪いのであって、彼に非は無かったと思う。)
政府,マスコミは、警察はいちはやく駆けつけ、速やかに事件を解決する能力があったこと、武力は有益であり、善良な市民を守ること、犯人はこのように無様に捕まり、決して悪役ヒーローにはならないことをアナウンスすることが出来たはずである。
そうすれば模倣を考える連中を萎縮させる効果は高い。
いたずらに恐怖を煽るのではなく、再発を防止し、安心させることが出来たはずである。
つまり、この事件の処理,アナウンスに、大きな対策を講じる余地、チャンスがあったと思う。
そして、それを棒に振ったのは、後述するが、ナイフを槍玉にあげようとしている心理と同じ、武器,武力への嫌悪だったと思う。

マスコミがその後もミリタリー関連に対し差別的な扱いをし、ご遺族や被害者の方に取材攻勢をかけて迷惑を考えず、また加害者の家族まで引っ張り出して謝罪をさせることへの是非はここでは敢えて論じない。
それより問題にしたいのは、人々を安心させようとせず、逆に効果に疑問のあるダガーナイフ規制をして終わり、になることである。

[他の対策について]
そしてこれは、刑罰の抑止効果が効かなかったのではないかと思われるが、ならばどのような対策を講じるべきか、を考えなければいけないのではないだろうか。
犯人が6/8を犯行日に選んだのは、大阪の事件を意識してのことだと思うが、ここで舞台が変わったことにも着目したい。
現在,学校や登下校の安全には、少なからぬ努力が払われ、今回たまたまかも知れないが、標的にされることはなかった。

駅などは既に警備に気を使っている様子も伺えるが、今後はこのような歩行者天国,大規模店舗でも、凶悪犯罪を想定した警備を進め、また安全な場所を消費者も志向するように訴えることが必要になってくるのではないだろうか。

そして、今になって振り返れば、ある程度このような事態が起きる危険を予期できたのではないかと思うのだ。
秋葉原の歩行者天国では、少し前から問題行動がクローズアップされていたように思う。
窓ガラスが割られ、落書きがいっぱいあるところでは犯罪が増える、というように、小さな予兆ともとれるモラルの低下,軽微な犯罪が見られる場所に、凶悪で重度の犯罪が引き寄せられていくのではないだろうか。
事後なら何とでも言えることかも知れないが、重大犯罪の予兆を捉えて予防に努めることが、今回の痛ましい犠牲を無駄にしない方策ではないだろうか。

また、犯人の心情も犯行に至る直前まで、揺れ動いており、頻繁にメールを発して、自分を警察に捕まえて欲しかったのではないかと思わせるフシがあっった。
もちろん膨大な情報があり、このような犯行予告は大抵偽物であり、いちいち動いていられない、ということもある。
しかし、総務省はネット情報を自動的に検知,通報するシステムの開発に乗り出すといっており、そのときには、上記のような心理学的な「読み」も確率を上げる上で役立つはずだ。

その上で我々に出来ること、もう想像がついたかも知れないが、「これぐらいは構わないだろう」と調子に乗ってハメを外した行為が、このような犯罪の連鎖の発端になる可能性を自覚し、エアガンやナイフの運用でもネット,携帯メールの書き込みでも、ルールの遵守,迷惑行為の一掃など、自らを厳しく律するべきではないだろうか。
自由には、当然責任,義務がついてまわる。
これらの行為が、規制の強化を許すだけでなく、もしかすると次に自分や、その大切な人々に凶悪な犯罪がふりかかることを助長しているのだという認識を持っていただきたいと思う。
我々が生命の安全や趣味の自由を守りたいなら、高いモラルの実践が求められるのではないだろうか。

[趣味,嗜好の違いについて]
被害があるから趣味の自由を認めないというなら、スィーツや酒などの嗜好性食品、硬式野球、ゴルフなどのスポーツも禁じるべきである。

菓子の類は食料ではないし、スポーツも生産性のある労働ではない。
つまり、「楽しむ」という一点を除けば、無くても生活に困らず、そして害のあるものである。
習慣性のある嗜好品の害だけでなく、甘みは強い誘惑効果があり、肥満が原因での死,疾病に少なからず関与し、そしてこれは既に無視できない数である。
スポーツ用品の悪用も常に発生し、スポーツ自体でも死者を発生させている。
危険性という点でも、これらとナイフには差が無いのではないか。

そしてもし、自分の好きなものは良く、嫌いなモノは取り締まれ、というなら、それは利己的なダブルスタンダードであり、許されることではない。
嫌いだから排除する、という姿勢、それは正にイジメの構図ではないのか。
このような感情(ナイフ嫌い)が、例え多数でも、不当な扱いは多数決で阻却(多数が嫌いなら好きな人からも取り上げていい)できないことは子供でも理解できる理屈である。
デザートに例えるなら、ドリアン禁止法は許されるだろうか。
以前グロックG17モデルガンのところで、正義について考えたことがあるが、ロールズの正義論では、公正としての正義の第一原理として、各人には基本的自由に対する平等の権利があること、とされており、これに従うと、趣味に優劣をつけ差別することも、正義に反するのではないだろうか。

少し古いが、浜崎あゆみの歌で、「TO BE」という曲がある。
この歪んだ、人にはガラクタにしか見えないモノを大切にする気持ちを、私も認めたいし、守っていきたいと思う。

[ナイフの実用性]
また、憲法に謳われているように、公共の福祉に反しない限りにおいて、幸福の追求は認められるべきである。
今回犯行に使用された道具のうち、トラックは使用目的が公共の福祉に沿っているから、被害が出てもお咎めは無し、ナイフがいけないのは、趣味のものだから、という判断があると思う。
これについては、確かに公共性という点で、その割合が違う。
しかし、同様にスポーツ・カーは禁止されているだろうか。
ナイフも実用性はある。ダガーナイフでキャベツを切ることが出来ないならともかく、料理にも使えるし、釣りやダイビング,ハンティングではプロがナイフを使用している。
逆にいえば、そのルックスに捉われて、果物ナイフとスポーツナイフで極端に判断を変えるのは、やはり何か、別の根拠があるのではないか。

[武器,武力への嫌悪について]
つまるところ、趣味を平等に評価せず、ナイフへの規制を容認するのは、気持ちの問題、武器は忌み嫌うべきもの、という占入観ではないだろうか。
ここには、コトダマ信仰とケガレ思想による日本人の自覚なき宗教観による武器嫌悪意識があると思う。
この意識とその問題については、井沢元彦氏の「逆説の日本史」を参考にされたい。
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但しこの感を持つことは、まさに信教の自由と同じで矯正を強要できるものではない。
しかし、これを無自覚に潜在的に内包するのと、自分たちの性質について理解したうえで、より客観的に事態の対処を考えるのとでは、全く違う結論が出ると思う。

いやこれは感情でなく、信条、しかも多くの犠牲を出した戦争の教訓で、譲ることのできないものだ、という方もいるかも知れない。それについてはまた下で論じたい。

[武器,もしくはその周辺の全否定について]
ここで以前、AK47(過去の記事)を取り上げたとき、武器,武力についても少し考えている。
武器の根絶は、現代の文明,技術の否定であり、また武器にまつわるものだけを抽出して廃棄するような真似は出来ないのではないかと考えている。
そして、ここまで武器を忌み嫌い、無視しようとしているのは、世界でも日本ぐらいではないだろうか。
既に大きな武力を持ち、世界最強といわれる米国の武力を背景に”安全を保障”されているにもかかわらず、である。
それは、上記の井沢氏が指摘するように、平安時代からの宗教観だと思う。
しかし武器反対派は、これをより進んだ、理性的な見識だと考えているのではないか(これは武器肯定派の”偏見”かも知れないが)。
それなら議論だが、武力を行使しない保障を、どこか他国が日本に対して行っただろうか。
そして、もしそのようなことがあったとして、その口約束(国家間だからペーパーはあるが、歴史上常に紙は破られる恐れのある、正に物理的な性質と同じく、薄いものでしかない)を守らせる力が、どこにあるだろうか。
経済力,食料では、人道的な手段だろうか。
支援,協力をしない、というのは邪魔をするのとは違うし、別に日本人を拉致しているテロ国家を擁護するつもりは無いが、兵糧攻めも立派な攻撃で、撃つのも飢えさせるのも同じ結果、いやもっと長く苦しめる行為ではないだろうか。
話を戻して、相手の信義に全てを委ねるといっても、自国の中でもこれだけ凶悪な犯罪が生まれているのである。
日本の周りを見てほしい。押し並べて皆日本と領土について争いがあり、人権を抑圧し、また生存権まで脅かされて難民として逃れる者が後を絶たない国まである。
先程の話だが、未だにその日本人を拉致したまま、返さない国もある。
現に日本人の人権を蹂躙し続けているところまで(全て、でないと非武装で国を維持できない)あるのだ。
全く成り立たない話ではないだろうか。
結局、武器の排除思想は、先ほど触れた、嫌いなものは無視(日本に武力は無い事にまで!)するという、子供じみた独善ではないだろうか。

[檻の中は安全か]
話を元に戻そう。
過剰な規制は宗教儀礼と同じ、いやオカルトであり、多くの害を及ぼす割に利益は少ないように思う。
既にモデルガン,エアガンの規制、ナイフでもバヨネット,ジャックナイフの禁止があり、またバタフライナイフの自主規制などを行っても、今回のダガーナイフのような事例が起こる。
そしてこれからも、いくらでも新しい形の刃物が登場するはずであり、今回の両刃の刃物にしても、片面を研げば、ある程度同じ効果のある凶器が「簡単に」作り出せる。
いや、根本に立ち戻れば、凶器はダガーである必要は無い。
多くの場でも語られているように、悪意があれば、包丁でも鉈でも犯行は可能だ。
規制を強化すれば安全であるという神話は、既に崩れていると思う。
例え趣味をみな禁じ、自ら檻の中に入っても、その隙間からいくらでも危険は入ってくるのである。

規制とは違う話だが、官憲の武力についても、今回のように事実があっても、嫌悪感から評価しないのは、非常に遺憾な態度である。
安全を守る上で重要な武力を軽視、暴力に対しては、逃げるに勝る兵法なしで、蜘蛛の子を散らすように逃げ、遅いものが被害に遭っている間に他のものが逃げ延びる、でいいのだろうか。
これこそ、弱肉強食で、弱い者に対して非情な社会ではないだろうか。
今回もまた、テロが起こったのであり、一層の防衛,対抗力強化(具体的にいうなら防刃チョッキを常時着用して、もっと制圧力の高い装備や、非致死性の武器の普及など)を考えるべきなのではないだろうか。

非暴力,非服従で独立したとされる国も、今や核保有国である。
南米では、過去にいくつもの帝国が抵抗を放棄して実際に滅亡させられている。
皮肉な言い方かもしれないが、争いの無い世界は、天国である。しかしそれはこの世ではない。
武力の行使は、それを受ける側からすれば単に暴力かも知れない。
しかし、完全な非武装は棒きれひとつ存在しない、ということであり、あり得ない話だと思う。
そして、その幻想が、実はテロを許し、弱い者を苦しめてはいないだろうか。

次回は、通常の形で再開できれば、と思う。そして、ナイフの記事ももうしばらく時間を置いたら、またUPするつもりである。
それでは。
OP/03



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今回は、Heckler&Koch(H&K ヘッケラー&コッホ )の Mk23 SOCOMピストルと、その技術を見ながら、技術の利害得失,開発制度(!ここまで大げさではないが)についても考えてみたい。。
Mk23/01


今回は、小さな写真の4分割カットは見難いようなので、単純にカット数を増やしてみた。その分長いが、文章は従来の分量で書いたつもりなので宜しくお付き合いを。

[概要]
1991年、米軍の特殊作戦司令部U.S.Special Operations Command(US SOCOM)が、Close Quarter Battles(CQB=近接屋内戦闘)用の新拳銃の開発をコルトとH&Kに依頼、最初の試験用試作でH&Kの採用が決まり、その後改良テストを経て制式となったのがPistol Semi-automatic.Mark23.Mod.0である。
サイレンサー,LAM(レーザーエイミングモジュール=レーザー光による照準装置)が取り付け可能で、DA/SA(ダブル/シングルアクション=引き金を引くとハンマーが起きていなければそれを起こして撃発,起きていればそのまま短いストロークで撃発する)トリガーを持ち、複列式弾倉で45ACP弾を12+1発装填できる。
高い命中精度を要求されたためか、上記の機構,弾のせいか、非常に大柄になっている。
Mk23は、1996年から納入が開始され、‘97年には、市販もされている。
また、同時期に開発されたUSPと機構上多くの交通点を持つが、パーツの互換性はほとんど無い。
ちなみにMk(Mark)という制式名は、海軍の使っていたもので、陸軍はM(Model;M9,M11など)だ。

Mk23(KSC ガスブローバックガン)
ITI社のLAM(解説は下で)、ナイツのサイレンサー付き。
Mk23/10


米国軍の一般装備、M9=ベレッタM92FSと。
これはマルシン モデルガン。
Mk23/17


海兵隊が使用する、M1911A1の改良型MEUピストルと。
これはWA(ウエスタンアームズ)のガスブローバックガンで、MEUでも前期の型をモデルアップしたもの。
Mk23/18


[太いグリップ]
今回の1/1模型は、KSCのガスブローバックガン。
同社はUSP45,USPコンパクトも出しているので、グリップの周長を比べてみると、USPコンパクト134~138mm、USP45は139~152mm、Mk23は151~156mmとなった(当ブログ測定値、あくまで目安)。
Mk23は全長が長いだけでなく、グリップも太く、サイズはデザートイーグル(過去の記事)並みの大型拳銃で、米国のそれまでの正式拳銃ベレッタM92FS(過去の記事)やM1911A1(過去の記事)と比較しても明らかに大きい。

左から、Mk23,USP45,USPコンパクト。全てKSCのガスブローバックガン。
Mk23/13


Mk23(後ろ)とUSPの後部。
アンビのセフティ,コーティング(KSCではダイキャストのままモールドで再現)され大きいハンマーのヘッド,調整式のリアサイトなど全てに手が入っている(KSCとしてはMk23が先なので、USPに手を入れた、となるのかも)。
mk23/15


トリガー,トリガーガードの比較(これも後方がMk23)。
Mk23はグルーブ(溝)付きトリガーで、トリガーガードも大型かつ指掛けも立派な突起になっている。
トリガーガード前方に穴があるが、これはレーザーサイトなどを固定する為のタップ穴。
Mk23/16


[プロトとマスプロ]
KSCでは、フェイズⅡ(第二段階)のプロトタイプと、マスプロモデル、それに市販モデルまで!バリエーション展開をしている。
マスプロとプロトの2つを入手しているので、今回はこの2つの違いも紹介しようと思う。
KSC以外にマルイでもMk23がモデルアップされているのだが、こっちもフェイズⅡのプロトもモデルアップ(固定ガスガンはプロト)されており、どうやら製品版よりも試作モデルの方が、人気があるようだ。
CZ75は、市販のファーストモデル(初期版)とセカンドモデルをKSCがモデルアップしているが、プロトタイプのモデルアップというのは珍しいと思う。
KSCでは、最近ベレッタ M93Rのプロトタイプもモデルアップしているが、これは商標の問題で社名を刻印できないという、大人の?事情では。

Mk23 プロト(後方)とマスプロ。
両者の違いは、スライド前方のセレーション、セフティレバー形状,サイト横のオレンジのドットの有無、刻印やマガジンベースの形、フレームのシリアルナンバープレートなど、多岐に渡る。
mk23/05


右サイドのカットも。
左がプロト、右がマスプロモデル。
Mk23/08


下側のカット。
今度は右側がプロト、左がマスプロ。
マスプロモデルには、フレーム前方にシリアルナンバーを打ったプレートが埋め込まれており、トリガーガードにも刻印が入る。
mk23/09



[複雑な操作系]
以前、米軍正式のM9=M92FSについて書いたとき、操作レバー等の動かす所が多いという指摘をしたが、これは米軍の好みのようだ。H&Kは同時開発の兄弟モデルであるUSPでもここまで操作系を増やしていないし、他のモデルではなおさらシンプルである。
Mk23は、USPでは一体のセフティとデコッキングレバー(ハンマーを安全にダウンさせる装置)がそれぞれ独立し、更にセフティ,マガジンキャッチがアンビデクストラス(左右両方から操作できる)となっていることもあり、やはり操作系が多い。

上に引き続き、プロトとマスプロで、操作系のアップ。
後ろがプロト、前がマスプロ。両者はセフティの形が違う。
Mk23はスライドストップ,デコッキングレバー,セフティの3つがグリップ上に並ぶ。
mk23/07


[ユニバーサル]
また、USP/Mk23は、H&Kが従来とことん避けてきたショートリコイル(銃身が少しだけスライドと共に後退し、閉鎖機構が解除される)機構を採用したモデル達である。
分解方法も、従来のものとは異なり(機構が違うのだからそれは当然だが)、M1911系を強く意識したものとなっている。
スライドを少し後退させ、スライドストップの突起とスライドの溝を合わせてスライドストップを引き抜く工程まではM1911と全く同じだ。
USP(過去の記事)のときにも触れたが、Mk23の兄弟機種であるUSPは、ユニバーサル・セルフローディング・ピストル(世界規格自動装填拳銃)の略である。
まさかM1911系に合わせる=ユニバーサル化と考えていたのではないと思うし、それなら米国志向で全世界共通というものでも無いと思うが。
逆にこれは、アメリカ志向という事を露骨に出さない為の、ユニバーサル化という表現なのかも知れない。

スライドストップを引き出したところ。
Mk13/19


[Mk23のショートリコイル]
USP/Mk23では、SIG P220のスライドとチャンバーをかみ合わせる結合方法を採っている。
これはもともとプレス鋼板でスライドを作るときに考えられたのだと思うが、H&Kでは、NC(数値制御)フライスによる切削で製造しているUSP/Mk23でも、加工がシンプルなこの方式とした。
これは単にコスト低減だけでなく、シンプル故に高精度の追求にも寄与した面があるのではないか。
コルト,ブローニングが使う従来の3本の溝をバレル,スライドに設ける方式では、3つのうちどれかの一ヶ所だけが厳密にいうと接触している可能性が高い。また、3つの凹凸それぞれの精度を上げても、相互の寸法精度も上げる必要がある。
強度上問題がないなら、一ヶ所で済むならその方が精度を上げやすい。

また、USP/Mk23はチルト・バレル(銃身が傾くことによって上部のスライドとのかみあいが外れ、後はバレルが停止,スライドだけが後退を続け、ケースを排出する)式の閉鎖機構だが、バレルのチルト機構部は他では見られない合理的な構成になっている。
それは、スライド前進用スプリングのガイドシャフト(軸)にカムを設けた事である。
このカムとバレル下のラグがかみ合う事でバレル後部が下がるのだが、従来他社では、スライドストップのシャフトを流用するか、ブロックをフレームに埋め込んでいた。
特にアルミ,ポリマー(高分子の合成樹脂)フレームでは、金属ブロックを使う事が多かった。
USP/Mk23ではこのガイドシャフトをスライドストップで止めているが、これは単に勝手に分解しない(上記のように分解時にはスライドストップを外す)為である。
通常カムの前方にあるスプリングガイドを使ったことで、部品を減らせ、分解,交換もしやすく、またチルト中に本来の動作が必要なスライドストップのシャフトよりも固定されているガイドシャフトの方が、機構上無理が無い設計である。
ガイドシャフトはフレームに固定していないものもあるが、USP/Mk23では、M1911カスタムで見られるように、固定ガイドがスライド前方の位置決めに寄与し、ここでも精度向上に役立っているのではないかと思う。

スライド,バレル,ガイドシャフトを外し、噛み合わせ部分を。
ガイドシャフトの斜めの溝と、バレルのラグ部分が噛み合い下方向に動き、スライド上のエジェクションポート(ケース排出穴)と噛み合っていたバレルが外れる。
KSCでは、反動低減用の2段階機構?リコイルスプリングも再現している。
Mk23/20


[ポリゴナルバレル]
Mk23では、ライフリング(バレル内に刻まれた、弾頭に回転を与える為の溝)には、同社が以前から採用していた6条のポリゴナル(多角形)ライフリングが採用されている。
これは、通常のエンフィールド型ライフリングが内径より少し大きい径となるような溝を数本刻み、段が付いた形(内径のままの部分とそれより大きな径の部分が交互に構成される)なのに対し、断面が角を落とした6角形となるように成形したものだ。
以前紹介したデザートイーグルもこれを採用している。
ポリゴナルライフリングの長所は、角が無いので汚れがたまりにくく、角部分の弾頭が密着しないところからガスが漏れることも無いため初速が上がる、ということだという。
但しポリゴナルライフリングは、現在ではもてはやされる事がなくなっているようだ。
H&Kでは、軍用アサルトライフルG3などにもこれを採用していたが、結局通常のライフリングにしている。
これは拳銃ならともかく、小口径で、かつ高圧できついピッチのライフリングとなるライフルでは、ブレットにエンフィールド型より(口径との相対比でも)大きな変形が必要になるからではないだろうか。
通常のエンフィールド型ライフリングなら、溝の深さは0.1~1/2ミリ(普通は0.1ミリほど、しかしH&KはVP70で0.5ミリ程の深いエンフィールド型ライフリングを刻んだ。但しこれには、ガスを逃がして圧力を下げるという特殊な目的があった)程の程度、これに対し、KSCの模型でみてもポリゴナルライフリングの内径の大小(単に溝にはなっていないので)の差は、その数倍くらいありそうだ。
そうするとガスの漏れは少なくても、効率は必ずしも良くないし、発射ガスだけでなく、変形に対する反力もバレルに負担としてかかる。
現在ボルトでは六角頭やヘックスリセス(六角穴)のものが多く用いられているが、大きな動力の伝達で分解の必要な所にはエンフィールド型に似たキー溝やスプラインが切られるように、やはり引っかかりがあるほうが外れにくく、逆にその凹凸も小さくできるのではないだろうか。
拳銃でも、このバレルは削りで作り難く、H&Kのようにコールド・フォージン(冷間鍛造=軟化する温度まで熱せず、大きな外力で変形させて成形する)で作るなどの方法を要し、大規模な設備が必要になる。
Mk23の米軍への納入数は数千とか聞くので、これだけの為に設備するなら全く割に合わない機構だったと思う。

Mk23プロトとマスプロで、マズル(銃口)部分。
インナーバレルの色が違うが、これは仕様の違いによるもの。
KSCでは数回、主に機関部のマイナーチェンジをMk23に施している。
Mk23/06


[マイナス隙間]
また、精度向上の為に、バレルにゴムのOリングをはめ、ガタつきを減らすだけでなく、いわゆるマイナス隙間としている。
コルトも、MkⅣ シリーズ70でバレルブッシングに板バネ作用をもたせ、精度向上を図っていた。
機械要素では、ガチガチに変形しない剛体を隙間の無い,もしくはマイナス隙間とする機構では、まず組み立てられないし動かない。
また、動いたとしても、作動が不確実で重い,直ぐに摩耗,焼きつきを起こしてしまうなど、問題を抱えることにもなる。
製造上の制約もあるが、クリアランス,バックラッシュは必要な隙間でもある。
そこで、バネ作用を持つ弾性体を使い、そのバネの力で押しつけ、隙間を無くす方法がとられている。
Mk23もこれに倣ってバレル-スライド間の隙間を無理なく殺し、25m5発で64mm以内という軍の要求ラインを、3万発撃った状態の銃でも実現するという。

バレルのOリング。サイレンサー取り付け用のタップの後ろにある、緑色のものがそれ。
Mk23/14


[オプション装備]
Mk23は、開発当初から特殊任務の為の各種オプションの装着が求められていた。サイレンサーは当初H&Kで試作されたが、その後ナイツ社から供給されるものに切り替えられている。
LAMも試作ではITIのものだが、その後ウィルコックスのものが試されている。

写真では、横の部品を一つ付け忘れているが、これはITIの物を模した社外品のガレージキット。
ちゃんとHWS(ハートフォード)のレーザーが仕込め、写真のように後方のスイッチを使い点灯させることが可能だ。
固定も前述のトリガーガードのタップ穴にスクリューが入って前後も動かない。
但しフレーム前方の取り付けレールは、一般的なピカティニーレールではなく、この為アダプターを使用しないと使える機種が限られる。
そしてネジ式の固定より、ピカティニーのラッチ,ラグ式のワンタッチの方が素早い装着が可能だ。
Mk23/11


[オープンな秘密兵器]
ハイスタンダードのHDモデルは、パワーズ事件でソビエト側に拿捕されるまで秘密だったし、S&WのM39,M59をベースにしたMk22(過去の記事)は、生産数が少ないこともあってか実物の画像も見かけない。
Mk23のサイレンサーはその内部構造も明らかにされていないが、本体は上記のように市販され、また販売前でもショット・ショーなどで公開されていた。
それまでのサイレンサー付き拳銃が、トップ・シークレットの扱いで、その存在,姿の写真が公開されなかったのとは大きく違う。
これは思うに、開発の経費がかかる割に生産数が少なく、これを解決するために情報公開,市販をメーカー側が求めたのでは。
ライフル,マシンガンはともかく拳銃の採用実績に乏しかったH&Kにとっては、初のビッグタイトル?黙っていろというなら引き受けないつもりだったのかも。

[1/6]
それでは1/6ミニチュアを。
まず上はドラゴンの装備セット(下写真)のもの。そして下は単品購入で金属製(サイレンサーも金属)のもの。
Mk23/02


ドラゴンの装備セット一式と、金属製Mk23。
ドラゴンのセットには、トップのカットで使ったウィルコックスらしきLAMとサイレンサーも付属、ホルスターもある。
更にスライド,ハンマー,トリガーまでも可動、そしてスライドはグレーに、フレームはブラックと塗り分けされている。
Mk23/04


[豪華装備]
Mk23は、他に無いほど盛りだくさんの要求に応えた、高精度で豪華なモデルとなった。
しかし、コストだけでなく、大きさやマガジンキャッチの方式などが嫌われ、米軍の特殊部隊内でもM1911系の使用を続けるところもあるようだ。
マガジンキャッチなどは、誤動作の危険はあるものの、それはM1911系にも言えることであり、操作方法自体は決して不評を買うようなものでは無いと思う。更にアンビになっており、これは利便性が上がっているはずだ。

但し、サイドアームズ(従,副装備の火器)としては大き過ぎ、またコンパクトマシンガンの方が制圧力も保持性(これらの多くはフォアードグリップを持っており、それに対しMk23では結局グリップ部だけで握ることになる)もいい。
重装備,高精度,耐久性の確保という命題によって軽さやコンパクトさを失った面は否定できないが、どうもこれは最初に出した要求が、それこそ雲をつかむようなオーバースペックで、現実を捉えていなかったような気がする。
それに最後まで付き合ったH&Kも大変(いやむしろ予算がついて技術研究が出来、市販もしたしPRにもなって一石三鳥だったかも)だが、一番迷惑だったのは高い買い物の代償を払わされる米国民では。
ここで以前少し述べたかもしれないが、某国自衛隊?の狙撃用ライフルも、結構吹っかけられており、これは国会でも取り上げられたが、ガンロッカーなど周辺装備まで含めた価格なので高くない、とかいうことでうやむやになったような。
その後、もっと大きな案件で商社が不正を働いていたことが明らかになったが、この件も総額で考えればロッカーどころか射撃場が一つ出来そうな額の上乗せだったように思うのだが。
くわばら、くわばら。

ハイテク満載で特殊部隊ご用達、そして大きくて実物は高嶺の花、横綱相撲のようだが、シャープでごつくていかにもドイツ、のデザイン。
Mk23、経緯はともかく、やはり格好良いと思う。

それでは今回はここらへんで。
mk23/03

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まとめ

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