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今回は拳銃の要素シリーズとして、ランヤードリングを取り上げてみたい。
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[概要]
ランヤードリングとは、拳銃に紐=ランヤードを通す輪のことである。
ランヤードは、肩にかけるなどして、拳銃などの道具を落としたり、
奪われたりすることを防ぐものである。
また、軍服礼装や、そこから派生したマーチングバンドの服では、装飾として
ランヤードが使われているようだ。
今回は、ランヤード,ランヤードリングの素材,歴史、それからランヤードリング
の分類を試みたい。

[素材]
昔からホルスターなどに使われる素材である革紐は、ランヤードとしては
見かけない。絹や綿の織り紐が初期には使われたのではないかと思うが、
戦後合成繊維が普及し、更に高い引張り強度を持つアラミド繊維などが
登場して、これらが使われるようになっている。

また、紐の形状もカールコード宜しく巻きを付けたもの(スパイラル,コイル状)
のものなども実用化され、邪魔にならず、しなやかで軽く細いが
切れないものが追求されている。

米海兵隊の使用するMEUピストル(前,後期モデル)と、LAYLAXの
スパイラルランヤード。
MEUは2つともウエスタンアームズ(WA)のガスブローバックガン。

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また、ランヤードと拳銃を結ぶ部分、ランヤードリングには金属製のリング
などが使われることが多かったが、近年は合成樹脂のパーツが幅広く
拳銃に用いられており、このプラスチックパーツにランヤードリングの機能を
もたせているところもある。

拳銃の構成素材としては他に木材もあるが、木材をそのまま
ランヤードリングとしているところは見つけられなかった。
ライフルなどではストックに空いた孔にスリングを通す例があるが、拳銃で
使われる木材の小さな断面積では強度が不足し、割れてランヤードが
外れる危険があるから、ではないだろうか。

小さな部品で平均約1kgにもなる軍用拳銃の重さ(もちろん落とす、などの
場合高いエネルギーで衝撃的に力がかかる)に耐えるものは、やはり金属か
合成樹脂だろう。

[ランヤードの歴史]
ナポレオン時代(1800年ごろか?)に、軍議で使うチョークをぶらさげる紐が
使われ、これがモールと呼ばれその後軍服の装飾に使われているらしい。
モール以外に、レニヤード,ストラップと呼ぶこともあるようだ。
現在では、ランヤードにホイッスルなどを下げるほか、工事現場で使われる、
転落防止用の安全帯を建物などに止めるための帯ロープを、
ランヤードと呼んでいる。

それまで別のものを吊るす道具だったランヤードが、19世紀後半に入って
拳銃に使われ出したのではないかと思う。

不勉強なせいか、ランヤードリングの発達史、というような資料を
見かけないので、全く一からの考察となり、大幅な変更が今後ありえる、
ということをお含み頂いて、話を進めたい。
また、情報をお持ちの方は、こちらに寄せていただければ有り難い。

1/6でホイッスルとランヤードの組み合わせ例。
これはドール用のセットで、更にこの服の上にベルトをする形があるのか、など
考証が正しいかは疑問だが、ランヤードの使い方として参考程度に。
警察官のランヤードは、上着の肩章(タブ)部分で止められ、ずり落ちたり、
簡単に外せないようになっている。

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[欧州での採用例]
拳銃にランヤードリングを付け始めたのも、どうやらヨーロッパが
先のようである。
調べていくと、フランスで採用されたMle1858にランヤードリングが付いていた
らしい。
但し、このモデルにいつから付けられていたかはわからなかった。
フランスではLevel M1892にもランヤードリングがあるという記述が
見つかったので、ともかく19世紀末にはフランスでランヤードリングが
用いられていたようである。

アメリカのメーカー、S&W(スミス&ウェッソン)がロシア向けに作った
ラシアンモデルでは、当時他のS&W製品には付けられていない
ランヤードリングがある。
また、英国では1856年にアダムスリボルバーが採用されたが、
これにはランヤードリングがある画像が見つからず、1887年に登場した
ウェブリーMkⅠにランヤードリングが付いているようだ。
また、オランダのM1891にもランヤードリングがあった、とされていて、
ランヤードリングが1850~1890年代の間に欧州で広まった可能性がある。

[米国での普及の遅れ]
ただ、アメリカ軍制式のコルトでは、M1873,M1889などには
ランヤードリングは無く、20世紀に入ってオートローディングピストル
(自動装填式拳銃)になってから、のようである。
米国では他にS&Wも上記のようにラシアンモデルを除いて
スイングアウト式になるまでランヤードリングは見られず、
スタールリボルバーなどにもランヤードリング付きの画像は見つからなかった。

ランヤード自体も、当初チョークを使う、作戦指揮官の装備だったとすると、
将校の護身用としての拳銃と組み合わされて欧州で普及したのでは。

これに対し、拳銃で戦う、という歴史を歩んできた米国では、当時の
ブラックパウダー(黒色火薬)が銃を汚し易く、頻繁な手入れが必要な
ので掃除しにくくなる紐を付けるのを嫌がった、
もしくは実用品だった拳銃を、後生大事に紐に付けて保護しようとは
思わなかった、
更に、洒落たヨーロッパの貴族的な装飾的装備品でもあったランヤードに
抵抗があった、
などの理由で装備が遅れたのかもしれない。

[軍用オートの標準装備]
上記のように、20世紀に入るまでは世界的に普及したとはいえない
ランヤードリングだが、逆に、軍用拳銃がオートローディングピストル
(自動装填式拳銃)になってからは、ランヤードリングは標準装備として、
無くてはならない装備となったようである。

モーゼルミリタリー,ルガーP08,そしてコルトM1911など、初期の主要な
軍用拳銃は軒並みランヤードリングを装備している。
(コルトはM1900には無く、M1902になって追加されたらしい。)

左から、ルガーP08,モーゼルM712,コルトM1911のランヤードリング。
P08はタナカのガスガン、M712はマルシンの,M1911はMGCのモデルガン。

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コルトM1911では、更にマガジンにもランヤードリングを付けていた。
これは後に廃止されるが、トカレフTT-33が踏襲している。

トカレフTT-33のマガジン。これはハドソンのモデルガン
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面白いのは、ポケットピストルでも初期にはランヤードリングを設け、
その後は民間用ではランヤードリング無し、軍の将校用などでは
ポケットサイズでもランヤードリング有りになっている。
FN(ファブリックナショナル)のM1900はランヤードリング付きで、M1910は無しである。
その後多くが軍用として使われたワルサーPPK、モーゼルHScには
ランヤードリング(HScはフレームに孔)が設けられている。
ベレッタM1934は小型だが、軍用制式ということもあり、ランヤードリングが
付いている。

ポケットピストルのランヤード。
左からM1900,PPK,HSc,M1934。
M1900は頑住吉氏のガレージキット。PPKはマルシンのモデルガン。
HScは同じくマルシンだが固定式ガスガン。M1934はWAのガスブローバックガン。

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[警察用の装備]
しかし、米国では軍用以外に拳銃にランヤードを付ける、という慣習は
無いようで、’80年代までの警察官の装備では、ランヤードリングを
持たないリボルバーを、オープンタイプ(フタが無い)のホルスターに
そのまま入れているのが見られた。

現在は自動装填式にとって替わられたが、それでもランヤードは
使っていないのではないだろうか。
やはり米国では掃除しにくいことを嫌っているのかもしれない。

いっぽう、一般の警察官ではなく、SWAT(突入,狙撃作戦を行う部隊)では
着脱装置の付いた、カールコード式のランヤードなどを使っているようだ。
こちらは作戦行動になり、軍隊に近い運用であること、その重要な作戦中に、
銃を落とさないことを重視したのではないだろうか。
そして外れる装置があるので、メンテナンスの難も低減している。

これに対し、日本では警察用拳銃にもランヤードが使われ、一連の制式拳銃
にはランヤードリングがある。
特に、警察用拳銃では、通常付いていないモデルにランヤードリングを
付けて採用している。
SIG P230は手動安全装置と共に、ランヤードリング付きを特別注文して
作らせ、S&W M37では輸入後に国内で追加工で取り付けている。

日本の警察用,自衛隊用拳銃のランヤードリング。
左からS&W M37,ニューナンブ M60,SIG P220,SIG P230JP。
M37はタナカの,M60はマルシンのガスガン。
P220はタナカの,P230JPはKSCのガスブローバックガン。

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[アーミーナイフ]
同じ頃、多機能のアーミーナイフもランヤードリングを付けた軍用装備品
として発達していたようである。
また、これより後に登場した、丈夫なアルミ合金製ボディのライトにも
ランヤードリングは付けられるなど、軍用,警察用などの装備品には、
広くランヤードリングが装備されるようになっている。

ヴィクトリノックスのアーミーナイフ(左の2つ)とミニマグライトのランヤードリング。
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[リングの形態による分類]
ここで形態によるランヤードリングの分類を試みたい。
大きく分けて以下のような4つの形に分類できるのではないかと思う。
《'09.11.22下記分類④を訂正しました。》

①孔型
フレームに直接孔を開け、そこにランヤードを入れて通す、最もシンプルな
タイプ。
モーゼルHSc,グロックG17などが採用している。
グロックの孔はランヤードリングとしてではなく、ストック取り付けにも
利用でき、そのための専用ストックが売られている。
この亜種として、孔にリングを通したものもある。
これはモーゼルミリタリー(上に画像あり)が採用している。

HSc(上 マルシン ガスガン)とG17(タナカ モデルガン)。
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②固定金具型
フレームに2つの穴を開け、U字,コの字型の金具を取り付け、そこに
ランヤードを通すタイプ。
金具の固定はネジ式、溶接式、カシメなどがあるようだ。
もっとも多くの例がみられ、FN M1900,ワルサーP38,コルトM1911,
ベレッタM1934,SIG P210などが採用している。

左からP38,P210,S&W M439。
P38はマルゼンの、P210はマルシンのガスブローバックガン。
M439はマルシンのモデルガン。

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この亜種として、丸い棒状の素材ではなく、板状の部品を、プレス成形などで
穴を開け、これを取り付けたものがある。
ワルサーPPKのほか、SIG P220,P230日本仕様(上に画像あり)が
このタイプである。

ベレッタM92,H&KのP7M13では、単なる平面でなく、グリップ下面の凹みを
設けたところに金具をつけている。

P7M13(左 MGC ガスブロ-バックガン)とM92(マルシン モデルガン)。
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③回転輪(スイベル)型
金具のうち、ランヤードがよじれ、撚りがかかることを防ぐ為、自由に
回転するスイベルを付けたもの。
多くはスイベルにリングを加え、回転だけでなく角度も可変とし、更に
ランヤードを通しやすく配慮されている。
J・イングリス社のハイパワー、S&W M37,ヴィクトリーモデル、
ニューナンブM60、エンフィールドNo2Mk1がこのタイプ。

左から、S&W ミリタリー&ポリス ヴィクトリーモデル,
エンフィールドNo2Mk1,FN ブローニングハイパワー カナディアンモデル。
ヴィクトリーモデルはHWSの、No2Mk1とハイパワーはマルシンの
モデルガン。

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④溝+ピン型
本体に設けられたスリット(溝)と、ピン状の部品によって、ランヤードリングの
機能をもたせたもの。リングとは逆にピンにランヤードを巻きつける形となる。
構造上、外部にリング部が突き出さない。
これにも、ワルサーP99のようにフレーム以外の他の機能が複合されたもの
(ランヤードのピンをバックストラップ固定と兼ね、抜き差しも可能としている)
がある。
また、ピンを別部品で差し込む以外に、グリップパネルに突起を成形したもの
(SIG P226など)、溝とピン部分をフレームとは別部品で一体成形したもの
(H&K=ヘッケラー&コッホ USP,Mk23など)がある。

左からSIG P226,H&K USP,ワルサー P99。
P226はタナカの、USPはKSCの、P99はマルゼンのガスブローバックガン。

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[ランヤードの目的]
最後にランヤード,ランヤードリングの目的にかえるが、日本では盗難防止、
という観点を取り入れ、というより重きを置いているように思う。
しかし、他の多くの国,地域では、専ら落下事故,紛失防止にのみ着目して
用いているように見える。
上で紹介したスパイラルのランヤードも、ベルトへの装着はマジックテープ
である。
もちろん、ベルトを抜いても、簡単にランヤードは身体から外れる。
これも、厳しく銃器の所持が制限されているだけでなく、正当な公用の武器
に対しても、厳しい目が向けられている日本の特殊な事情が反映されている
ように見えるのだが。

では今回はここらへんで。
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まとめ

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