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今回は、旧日本陸軍準制式 九四式拳銃をとりあげたい。
特異な外観,構造と機能的な問題が指摘されるが、はたして
どうだったのか。
失敗学が注目されるいま、安全性と、独自の構成となった原因、の2点を
中心にみていきたい。

九四式の説明書には部品を日本語で書いているが、これまでの記事と共通
のカタカナ英語の用語をここでは用いることとした。
今回、今まで以上に長くなってしまったが、宜しくお付き合いを。

ty94/01

[概要]
九四式は、南部式拳銃甲,乙,小型などを設計した南部麒次郎が軍を
退役後、南部銃製造所を興し、陸軍の要請に基づいてそこで開発した
8mm南部(十四年式拳銃実包として仮制式)弾使用の中型拳銃である。
1934年に準制式となり、将校用だけでなく戦車,航空機などの乗組員用
などに使用された。

マガジン(弾倉)は単列式で容量は6発、安全装置は手動式のもの
(サムセフティ)と、マガジンを抜くとトリガー(引き金)をブロック
するマガジンセフティがある。
そして、露出式のシア(逆鉤)のためスーサイドガンなどという
あり難くない名前を付けられている。

ty94/03

[1/1と1/6]
さて、まずは模型について。
1/1は昨年ハートフォード(HWS)が新規に制作した非発火式のモデルガン
で、初期の型を再現したもの。
同社は最近多くの部品形状が異なる後期型も発売、またカッタウェイ
モデルを販売するなど、九四式をバリエーション展開している。

このモデルはショットショーで、出展していたHWSのブースで社長に
お話を伺い、購入させていただいたもので、当時の保存取扱説明書まで
再現して同梱し、またショー販売用にはランヤード(負い紐)がサービス
で付いていた。

素材は合成樹脂だが、いわゆるABSとはちょっと異なり、艶を抑えた表面
である。
機構は材質を弾性を持たない亜鉛とするため、セフティをクリックボール
+コイルスプリング内臓にしているが、極力実銃を再現することを目指し、
フレームのカシメ止めプレートも別部品とするなど拘っている。

今回の1/6もいつものように単品購入だが、申戌やというところから
旧日本軍のフィギュアが出ていたという情報があり、そこの付属品かも
知れない。
一体成形で可動部分などはないが、金属粒子が混入された樹脂が使われて
いるのか、光線の向きによってメタリックな輝きが出るところがある。
形状はHWSと同型のシア後端部がモールドで再現されており、初期の形を
再現しているようだ。

ty94/06

[暴発を起こすシア]
まず暴発の定義、だが、射手の意図しないときに発射される、という意味
で今回考えている。

通常、暴発といっても、射手が弾が無い、もしくは弾が出ないと思って
トリガー(引き金,引鉄)を引いているものなのだ。
しかし、今回の九四式は、厄介な事に、”それ以外の方法”で撃発する
のである。
そう、通常ならこれはもう暴発ではなく、本体の欠陥による事故である。

最大の欠点とされるシアは、外部に露出し、装填状態(九四式は装填
すれば撃発機構もセットされている)でその一端を押せば発射して
しまう。
この現象については、模型より実物では作動が重く、また何かの突起物で
押さなければ暴発しない、という記述も見られる。
しかし、九四式の分解は、スライドのピンをカートリッジなど”何かの
突起物”で押す必要があり、銃の周りにそのような物はない、と
言えないため、これをもって安全というのは言い過ぎではないかと思う。

ty94/12
九四式の露出型のシア(画像左の矢印)と、P08のシアがカバーされている部分
(画像右の矢印)。
P08はタナカのガスガン。


シアの動作方向はP08と同じだが、P08は、前方にカバーを設け、シアが
外部から押されることが無いよう配慮している。
また、力をかける場合せん断(曲げ)方向より圧縮,引張方向のほうが、
歪みが少なくなり有利であり、トリガーから長い距離、力を伝達するなら、
押す、または引く形が理想的で、現代のものまで含めれば圧倒的多数が
押し,引き式のトリガーバーになっている。

シアで長距離を稼ぐにしても、それまでの一連の南部式や十四年式や
ブローニングハイパワーがやっているように、内蔵式で上下動にして、
横幅は薄く、上下方向に厚みを持たせるのが強度も得やすく、納まりが
良い。
つまり、わざわざ効率の悪いカムにして動作方向を変え、しかもシアが
外を通っているこのトリガーメカは、設計としては「やってはいけない」。

そしてもし九四式が安全性を犠牲にして、コストや威力,装弾数や他の
機能などのメリットを得たならともかく、構造上特に優れた点を新たに
得ていない。

ty94/24
マルシン製モデルガンで、ベビー南部のシア(矢印)。動作方向も九四式とは90度違う。

ty94/15
これもマルシン製モデルガンで、ブローニングハイパワーのスライド内のシア(矢印)。
手前右は九四式。


[セフティ解除でも暴発]
上記の問題はサムセフティをかけていれば暴発は起こらないないが、
このセフティ、かけているときに一度トリガーを引くと、今度は安全装置
の解除時に撃発することがあるという。

ty94/09
サムセフティ動作の様子。
水平でオフ、画像のように45度ほど上げた状態でオンとなり、下にあるシアを押さえる。


月刊Gun誌では、複数回この現象がリポートされており、これが
どのようなメカニズムで起きるのか、また記事は捏造なのか、議論が
あるようだ。

一つの仮説は、シア後方がブロックされたままでトリガーを引くことに
より、各部のクリアランスやシア,セフティの弾性で後退できたトリガー
が戻らなくなってこの現象が起きるのではないか、というものだ。
トリガーを引く力で生じたトリガーカム面とシアの摩擦力が、トリガー
リターンスプリングの力より強ければ、またはカム面が荒れ、又は傷など
があれば、トリガーが戻らず、この現象が起こりうる。
ただ、トリガーが戻らないほど引けるか、には疑問が残る。

もう一つの仮説は、シアとハンマーの噛み合い部分が、磨耗や変形,
加工精度の問題で、少し動くと外れようとする状態になっているのでは
ないか。
九四式のシアは左右方向に円運動の軌跡で解除される形であり、通常の
前後方向の動きで、両方が接する面は並行移動するものに対し片摩耗
しやすいのではないか。
またシアは肉厚が特に支点部分で軸穴の為薄くなっており、またシアは
長く、コの字型に曲がって両端をひねる方向に力を受けており、しかも
その端はフリーなので、いわば片持ち梁の先で曲げ荷重を受ける形である。

ty94/05
シアとトリガーをひっくり返したところ。
この画像では左端の突起がハンマーにひっかかり、保持する部分。


更に九四式のセフティは、自身の弾性でクリックするため、当然弾性が
ある。
そして、セフティ軸がフレームを貫通していない短いもので、傾き易い。
更に、セフティ軸はいわば片持ちでシアを押さえており、つまり外れる
ことはなくても、シアが動きやすい。
ルガーP08などは、シアの両横のフレーム穴にセフティバーが入り、
両持ち状態で確実にロックされる。

繰り返すが、九四式の構造は安全について万全とはいいがたい。セフティ
解除と共に発射するという現象が、全く起こり得ない構造ではないのだ。

そして、Gun誌のレポーターが取材先の米国の見方の影響を受けている、
という側面はあるが、複数のレポーターが特定の銃に対し悪意をもって
いた、とする根拠も見当たらず、この雑誌では、単に感想を書いたら読者
から苦情が殺到して困る、というような事態は日常的に起こっており、
例えば「漫画に出てくるこのモデルとは違う」(もちろん漫画の方が
“自由に”脚色したのだが)など、読者の思い込みに沿わない内容に
ついてまで投書が着ていたようなので、敢えて欠陥を指摘したのはやはり
実際に起こったから、ではないかと思う。

いや、通常実名を記して(通称で書いているだけでなく、別冊などで略歴
とともに実名を公表している)写真を撮り、レポートしているものを捏造
ではないかと疑うほうが、その銃器に対して強烈な“えこひいき”感情を
持っている、とは思えないだろうか。

[マガジンセフティ]
九四式はマガジンセフティを装備している。

ty94/10
九四式のマガジンセフティ。マガジンを抜くと、トリガー後方にバーが出て
トリガーの後退をブロックする。


日本軍の中には、マガジンさえ抜けば安全だと錯覚(誤認)して暴発を
起こす事例(事故とは限らない)があったようで、これを防止する為に
非装填とし、十四年式を改良してマガジンセフティを追加、九四年式には
始めから装備されたようだ。

マガジンセフティは、本来銃の構造を理解している者には不要どころか、
無いほうが良い(弾倉が無くなっても一発は撃てる)装備である。

もちろん根本的解決は、構造を理解させ、チャンバーの確認を習慣づける
ことなのだが、これは実は日本に限ったことではなく、世界中で起こる
暴発の中で、この誤解が少なくない比率で起こっているようだ。

自動装填式の誕生直後は特に多く、そのためFN社もM1910,ブローニング
ハイパワーにマガジンセフティを装備している。

しかし九四式の場合、これが問題解決どころか、やっかいな問題の元に
なっている。
マガジンセフティはトリガーをブロックするのみなので、問題のシアが
押されるとやはり暴発は起こるのだ。
せっかくマガジンセフティがあっても、シアを押せば発射されるなら、
むしろ危険増幅装置(安全だと思っているぶん、危ない)である。

そして後述の説明書などに、マガジンセフティによって撃発しなくなる旨
書かれているので、余計事態は深刻だ。
トカレフTT-33は手動安全装置が無く、その点では評価が低いが、少なく
とも実際は危険なのに安全だと思わせるような機能は付いていない。

もしマガジンセフティが、後部にあってハンマーを直接、もしくはシアを
ブロックしていたら、まだ上記の暴発問題は緩和されただけに非常に
もったいない。

[改良されなかった九四式]
また、十四年式ではマガジンキャッチの誤作動が認められ、1939年に
改修(バネを足すだけ、という酷いものだが)されたにもかかわらず、
九四式ではここはそのまま、そしてシアの改良も行われず、終戦まで
省力化だけが進められた。

これはマガジンセフティがあったから、抜けるに至らなかった、とも
思われるが、十四年式では1934年にマガジンセフティを追加、1939年に
板バネの追加が行われており、それなら九四式でも、とも思う。
そして既に見てきたように、他にも改良を望まれるところが無かったわけ
ではなく、まだ戦局が悪化していない時期であり、その気があれば改修
できたと思うのだが、なぜか九四式では、今でいうPDCAサイクルが
回らなかったようなのである。

これが高名な設計者で退役軍人である南部麒次郎への遠慮かといえば、
どうやらそうではなさそうだ。南部の設計は試作段階から原型を止めない
までに変更を余儀なくされている。

[他機種との比較]
話を戻して、暴発を防ぐためには、二重,三重に安全装置を設けておく
のが良心的な設計であり、実用性を損なうことなく、高い安全性を
備えているものが護身用拳銃の理想だと思う。

それ故にM1910やコルト32オート(M1903)、後にはワルサーPPなどが
名銃なのではないだろうか。

ty94/23
ワルサーPP(画像左 マルシン製モデルガン)と九四式。
ワルサーPPはDAに加えファイアリングピンブロックとデコッキング機能を持つセフティを
装備している。


ワルサーは、このPPで護身用拳銃の基準を変えたといっても過言では
ないほど、特に安全性において進んだモデルだった。
更にワルサーはこのあとP38でDA,ファイアリングピンブロックと
デコッキング機能を大型拳銃にも持ち込み、戦後のベンチマーク的存在に
なる。

護身用では各社がPPを目標におき、同じドイツのモーゼル,ザウエルが
HSc,M38Hを開発している。
但し、その登場は九四式制定の後であり、当時は普及という点では
ミリオンセラーのFN M1910、性能ではワルサーPPが独壇場の状態と
いっていいのでは。

そして後に紹介するように、この頃全世界的に自動装填拳銃の制作が
進んでおり、その多くがFN M1910などを参考にしてしていたが、ともかく
拳銃作りは既に特別なものではなくなってきていた。

このような世界情勢のときに出てきた九四式は、自動装填式の開発の
早さ、という点では世界水準にあった日本が、完全に競争の外に落ちた
事を象徴するようにさえ見える。

ty94/11
FN M1910(画像左 マルシン製モデルガン),コルト32オート(画像中央 MGC製
モデルガン),九四式。
FN M1910もコルト32オートもグリップセフティ,サムセフティを持ち、
更にM1910はマガジンセフティ、コルト32オートはハンマー式撃発機構で、
九四式採用前から日本軍将校が装備していた。


単にハンマー式のコンパクトな拳銃、というなら、ベレッタM1934,
コルト32オート,ワルサーPPなど、正にいくらでも他にある。
また九四式はハンマー式といっても内蔵なので、再発火は出来ない。
米国では将校用として用いられていたコルト32オートでは不足なので
九四式を開発したのだというなら、せめて外装式にすれば、上記のシア
問題もハーフコックなどで対処できたかも知れない。

九四式はハンマー式で発火性能が向上したというが、これは国際水準に
追いついただけで、また上記のFN M1910などはストライカー式だが発火性能
が劣るとは聞かない。
ルガーP08で破損原因となっていたストライカー式は、確かに1930年代
には用いられなくなってきていたが、その後大きく時代を下ってグロック
がストライカー式で成功、H&K社もP7など、ストライカー式で問題なく
発火させていた。

ty94/25
ベレッタM1934(画像右 WA製ガスガン)と九四式。
M1934はサムセフティのみだが、シアはグリップ内にあり、構造上暴発の問題はない。


[取扱説明書の不備]
HWSが再現した取扱説明によると、マガジンを抜くとセフティがかかり、
「薬室内に実包残存するも不時の撃発を防止し得る」と書かれており、
逆に上記のシアを押せば撃発する、という欠陥が書かれていない。

シア問題について記載が無いのは、この問題を認識していなかったか、
認識していても書けなかったか、ではないかと思う。

しかし、製造側がこのような危険をわからずに作っていた、というなら
まず製品の開発,性能検証能力に大きな問題がある。
近代の落下試験や泥に浸けての動作試験を行うまでも無く、この問題は
構造を理解できるもの、各国の自動装填式を見ているものなら、容易に
発見できるだろう。
九四式を手にとって、ハンマーを落とす操作をしてみればいい。
そこでシアが動くのが目に入るはずだ。
そこで次はシアを押してみれば、もうこの問題が発見できる。
特別な観察能力などは、必要ないと思う。
それでも、シアを押せば撃発する可能性を認識できなかった、というなら
根本的に誤りを発見,訂正する為の動きがとれない問題組織である。

思い返せば、日本があの無謀な戦争を戦い、そして徒に戦線を拡大、停戦,
講和の時期を逸し、負け方すらマトモに考えられなかった軍政は、正に
現人神の無謬性を訴える余り、誤りを認め、訂正できない組織ではなかった
か(結果的には、逆に天皇は全知全能の神でないことを証明,体制を
”訂正”してしまったが)。

そして、こちらの方が確率が高いと思うが、問題を認識していて、敢えて
危険性を明らかにしなかったとすれば、もっと問題は深刻で、また、製品の
欠点を指摘することと、開発者,採用担当者を非難することが同じ、とされ、
誰も指摘できない、ということだったのでないだろうか。

九四式の説明書に、「この製品はシアを押すと撃発する。だから携帯時には
チャンバーからカートリッジを抜いておけ」と明確に書けば、使用者が
危険性を認識でき、事故も減ったかも知れない。

もちろん、危険性を認識していれば、改修をおこなうべきで、これは恐らく
現代の基準で考えなくても、リコール対象である。

近年、法律の改正もあってリコールによる改修が進められているが、以前の
リコール隠しの件ではないにせよ、未だにリコール自体を恥ずかしいこと、
あってはならないことだと考えているところもある。

この考えを直接各メーカーに聞いた訳ではないが、リコール数の多さ、
その範囲などから、欧州車メーカーなどは、リコールはメーカーの誠意の
証明であり、ユーザーに安心を提供することだ、と前向きにとらえている
傾向があるように思う。

リコールが少ないことが良いことではないと思う。
もちろん、製品に欠点が無いことが理想ではある。しかし、想定
し得なかった欠陥が見つからない、という保証はそれこそ神でもない限り
不可能である。

またリコールは製品に欠陥があった場合だけではない。欠陥の可能性が
考えられる場合も、その全数に対し呼びかける制度だ。
具体的に危険があるのではなく、予防措置の意味もある。
そして、正直にリコールを出せるメーカーは、自らの誤りを認め、改善
できるメーカーではないか。

[運用での解決]
シア問題に対し、軍はチャンバーに装填して携帯してはいけないと定め、
それ故暴発事例は報告されておらず、運用面で解決していたから問題ない、
とする意見もあるが、これには賛成しがたい。

本当に教育,指導だけで問題が解決するなら、それこそトカレフのほうが
要らぬ装備を省いているだけましである。

また、事故や故障の危険がないなら、戦地では直ぐに射撃でき、場合に
よっては片手でも操作できる装填状態で持つ方が有利であり、逆に
手間取った、または両手が使えない、という状況ではそれは正に命に
関わる場面も考えられる。

互いに名乗りを上げてから1対1で合戦を始める訳ではなく、相手は
こちらの装填を待ってくれたりはしない。

そのためにダブルアクション(DA)やファイアリングピンブロック,
デコッキングなどの安全機構が、正に九四式採用の直前にワルサーで
開発されている。

非装填の指導は、本来の銃器の機能向上で解決すべき問題を、一部利用
制限で乗り切ろうとした、いわば酷い応急策で、しかも、後述のように
実際には事故が起こってた可能性がある。
(下に実例を取り上げたと思われるブログを紹介)。

下記の事例では、下手をすると作戦遂行に大きな支障をきたしたかも
しれず、たかが拳銃、と装備の安全性を軽視するのが、いかに大きな
問題を生むか、またヒューマンエラーを精神力で克服する、などという
方法が、いかに現実的でなかったか、を示しているのではないだろうか。

構造的欠陥を放置して、「想定では事故は起こらない」というのは、
最近どこかで聞いたことがあるような気がしないだろうか。

[九四式での事故]
1942年の珊瑚海海戦で、瑞鶴の第一次攻撃隊の九七艦攻 島崎隊長機
の偵察員であった石見大尉の九四式拳銃が索敵中に暴発し、大腿部に
弾が当り出血した、という記述がネットで見つかった。
このブログ(瑠璃)によると、
『日本の拳銃で暴発する事故は多かったという。
当時の搭乗員が拳銃をホルスタに入れないで直に携帯している写真を
多く目にすることができる。
これで暴発した可能性は高いだろう。
問題の拳銃とは「九四式拳銃」。
 安全装置機能の不備も含めて小型自動拳銃の基本的な常識がまったく
欠落している銃と指摘されている。』とある。

また、このブログ(意外な戦史を語る)は暴発を人為的とみているが、
やはり事故はあったとされている。
『隊長の嶋崎重和少佐が操縦していると、突然後部座席の偵察員のKが
突然弾に当たって激痛があり、出血が激しいので早急に引き返してくれ
と訴えてきたとあります。(中略)
一方、嶋崎隊長の機体を調べた整備員から、「どこにも被弾のあとが
ない」との報告が入ったのです。』とある。

この記事には『空母瑞鶴の生涯』豊田穣著 集英社についての記述が
出てくるが、事故の記事はそこから引用されているようではないので、
どちらも出典は明らかではない。

上記の記事が関係者の体験談を聞いたこと、もしくはどこかの出典から
得た情報か、また事例はどの程度の報告がなされ、残っているか、には
疑問があるが、それは暴発を引き起こした事が、非常に不名誉どころか
規則違反であり、下手をすれば懲罰モノであったため、余程の事情が
無ければ事実が明るみに出て来ないため、ではないだろうか。

よって「報告が無い」=「事故がない」という判断は、少し早計で危険
ではないかと思う。

[仕様と開発の問題]
九四式の開発は、もともと入手困難になった32口径カートリッジを使う
将校用拳銃に代わるものを開発することから始まった、とも聞く。

そして自国の8mmを使う中型拳銃の企画になったのだと思うが、既に
国際的には旧式のボトルネック形式,小(主流は9mm)口径の
カートリッジ、大量の備蓄があった訳ではないようなので、ここで
思い切って見切りをつけておけば、構造もシンプルにでき、カートリッジ
の生産も効率が上がったのではないかと思う。
ボトルネックのために少しの後退でガスが後方に噴き出しやすいため、
ショートリコイルにする必要も無く、実際同時代のベレッタはそれで
成功している。

もちろん、6.5mmから7.7mmにライフル用カートリッジを切り替える
のを、結局終戦まで実現できなかったため、拳銃弾の統一は現実的だった
のかもしれない。
しかしそれなら、後述するように十四年式を切りつめれば良かった。

南部麒次郎が軍と財閥を結びつけた存在だからその手になる九四式も悪い、
などと技術と直接関係無い要因で非難するつもりは無く、もちろん銃に
対する嫌悪感も持っていないつもりである。
外観については洗練されているとはいえないとは思うが、この記事作成時
に、様々な角度から九四式を見ていると、かなり個性的ではあるが、
嫌いではなくなっている。

開発者の南部氏がパテントを取ったこのロッキングブロック式閉鎖方法
に拘りがあった、という面はあるかもしれないが、現在知られている
試作のイラスト,画像を見る限り、かなり自由な発想をしていた
ようである。
試作は扇状のグリップで、バナナ状に湾曲したマガジンを検討、問題の
ある(後述)リアサイト部のフレームのブリッジも、露出したシアも
見られない。
もっとも、プロトタイプのままでは、更に異様なグリップなどで非難
されたかも知れないが。

ty94/07
九四式(左)とモーゼルミリタリーM712の分解の様子。共にロッキングブロックが
上下する閉鎖方式で、M712は右から2つ目の内部メカの銀色の部品、九四式では
フレームのトリガーの上,バレルの下の部品がロッキングブロック。
(M712はマルシン製モデルガン)


ty94/27
九四式のロッキングブロックのアップ。
バレル下部の溝に入って、バレルの後退に伴って下がり、スライドとバレルのロックを解く。
ロッキングブロックの両側面は実物では別体のカバーがカシメ止めされている。
リコイルスプリングは、バレルにはめたカラーを介して、ロッキグブロック前方の突起で
フレームに当たるが、模型では上記のカバーも含め、金属部品を埋め込み再現している。
このあたりも非常に薄く、実物構造が軽量化に苦心したところかもしれない。


そして、フレームのカシメ止めカバーも、極端に薄いブリッジも、この
過程で出てきた不都合を解消するために設けられ、それでも生産性の悪化
など、軍部の要求で当初の目標からかなり外れた開発を強いられたのかも
知れない。

ty94/04
スライドを抜き、ブリッジ部を見たところ。ご覧のようにここも薄く、加工も手間がかり
そうである。
下に見えるのがローラー付きの内蔵式ハンマー。


ty94/26
上記のロッキングブロックのためか、トリガーはトリガーガード側から入れられ、このために
トリガー前方に隙間が開く。
ハンマースプリングもトリガースプリングもガイド(ストラット)がないが、更にトリガー
スプリングはこのように露出しており、異物の付着,錆などには弱そうである。
またマガジンセフティも同様に穴が残り、更にロッキングブロックがはまるスライドの溝も
外から異物が入る可能性がある。


ty94/08
分解用ピンを半分抜いたところ。
九四式は分解方方法にも少し問題があり、ピンを抜いてスライドを分解するのだが、このとき
スライド後退位置でないとピンが抜けず、しかも抜くとスライドがリコイルスプリングの力で
勢いよく飛び出す。
これはフレームにブリッジを設けたせいかも知れないが、サイトを載せる意味も含めて、
疑問な構成だ。


要求仕様に、「将校用として品位のある格好」という記載があった、
とするところもあり、これなど主観でどうとでも言える、あいまいで
開発者の困惑する仕様そのものである。そしてその結果がこれなら、
要求側の求めた「品位」とは何だったのだろう。

試作後、的外れな変更要求が続いて設計者もスポイルされ、このような
結果になってしまったのなら、これも“日本的”な、物事を始めに明確に
しっかり書面に表して決めない、という悪弊が原因となったのでは
ないだろうか。

[自国製への偏愛]
九四式はやはり優れた銃とはいえない。
作動性が良いとはいえ、旧日本軍将校が使用した他の機種では解決されて
いる安全性に問題を残していた。

そしてこれは生産性などの問題もあるが、稲垣式や浜田式など、他に民間
にも拳銃開発を図らなければならなかったことも、九四式に問題があった
ことを伺わせる。
また単純に、十四年式のバレル,グリップを短くしただけでも(発火性能
はともかく)要求は満たせたのではないか。
そうすると生産の面でも、補給(部品,修理)面でも有利である。

ty94/22
左から十四年式(マルシン製ガスガン)、ベビー南部(南部式小型 マルシン製
モデルガン)、九四式。
カートリッジは、左の2つがベビー南部の7mmで、右が8mm。
大きさだけの対策なら、十四年式のバレル,グリップ部を切りつめても九四式のサイズ
くらいは実現できると思われる。


ty94/17
九四式と浜田一式(右、中田商店 無可動モデル)。
九四式以外にも、この浜田式一式,二式、稲垣式など国産拳銃はあった。


ty94/16
上の中田商店 無可動モデルの欧州製オートとも。
左上は九四式、右上がウェブリー&スコットM1906(M1905)、
左下はA・E・P ベアードM1923(M1930)、右下はワルサーNo4モデル。
ベアードなどは日本にも輸入されていたとか。


そして、チャンバーに装填して使わないなら、九四式は6連発である。
もっといえば、回転式ならそれを制式とした英国や、不足分を賄った米国
のように、信頼性も威力も高く、もしかするとコストも九四式より低い
ものが出来たのではないか。

軍制式ではないが、桑原銃砲店というところが、二六式を改良した32口径
6連発の桑原式軽便銃というものを売り出し、日清戦争時に近衛師団に
多数販売され好評だったという。(藤田兵器研究所 LINK希望されて
いないので非LINKで紹介)

ダブルアクションで命中率が悪いなら、ハンマーを起せばいい。それも
片手で操作できるはずだ。
将校用なら、弾倉交換の必要性は低く、ハーフムーンクリップ式の
米国M1917などは、もしかすると九四式とリロード時間に差が無かったかも
しれない。

九四式では再装填にはホールドオープンの力がかかっているマガジンを
左手で抜き、そのあとその左手で予備マガジンを入れる必要がある。
更にマガジンを抜くとスライドが前進しているため、再度スライドを
引いて装填しなければ撃てない。

ty94/21
S&W M1917(左 タナカ製モデルガン)と九四式。
上にあるのが、ハーフムーンクリップ。もともとリムレスのオート用カートリッジを
流用するために考えられたものではないかと思うが、3発ずつ装填できる。


自分たちの国のモノに対する非常に強い愛着や関心は、決して悪いこと
ではないと思う。
しかし、どんなものでも猫可愛がりだけで良いだろうか。
またここに、自国のものに対する批判が、自己批判へ向いているように
感じる、すり替えが起こっていないだろうか。

日本人はしばしば、批判と非難の区別が出来ず、客観的に冷静に行うべき
議論を、感情を露わにし拒むことがあり、議論が苦手ともいわれる。

自らの国のモノだから、自らが好きなモノだから、無批判ではいけない
と思う。

日本人は鋭い感性を持ち、細部に至るまで拘り、また真面目で勤勉だと
思う。
しかし、成果の半分はどれだけ良く働いたか、かも知れないが、やはり
半分は計画時,再考時にどれだけ深く,冷静に対象を見つめ、考えられた
かにかかってはいないだろうか。

そして、誤りは素直に認め、案や製品の検証を進め、改善していくことを
放棄した組織は、どんなに上手く制作しようとしても、まともなモノは
作れないと思う。

また、戦前の製品でも、未だに批判を許さないような空気があるなら、
それは我々がまだ未自覚の宗教に縛られているのではないだろうか。

ty94/02

後半、かなり偉そうな事を書いているが、自身も今一度他の意見にも
耳を傾け、誤りは素直に認め、謙虚に反省して改善できるか、自問して
いる。
これを読まれて誤りなどを見つけていただいた方がいらっしゃれば、
どうぞご指摘いただきたい。

それでは今回はここらへんで。

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まとめ

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