ADMIN TITLE LIST
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手 by FC2
今回は、WWⅡ(第二次世界大戦)期の英国を支えた、ともいえるSMG、
ステン(STEN)を。

sten/01

[概要]
ステン・マシンカービンは英エンフィールド造兵廠で1941年に開発された
オープンボルト(ボルトが後退し、機関部が開いた位置から発射サイクル
が始まる)方式のSMG(サブマシンガン=短機関銃。引き金を引いている間、
装弾数の範囲で拳銃弾が連続発射される個人携帯可能な銃)である。
英陸軍初の自国製制式SMGであり、不利な戦局を反映し、省力化を進め
生産性を高める設計で、MkⅠ~MkⅥのバリエーションに加え、細かな仕様
違いは多種にわたり、またカナダなど国外でも生産された。

[1/1トイガン]
ステンのトイガンとしてはCMCがMkⅡ,MGCがMkⅢのモデルガンを作って
いたが、法規制により鉄製のモデルガンが作れなくなり、ハドソンが
亜鉛でMkⅡを作るのみとなった。そのハドソンも廃業したため、現在
モデルガンは全て絶版状態である。
またLSもエアーコッキング、ガスガンを作っていたが、これらも現在は
中古以外は入手できないと思う。
しかし、電動ガンでは複数の海外メーカーのものが入ってきていたと
思う。

手元にあるのは、ハドソンのMkⅡで、これは廃業後に中古で入手した
ものだ。

sten/02

[1/6]
1/6では、MkⅡのT字型ストック付き、MkⅥ(サイレンサー付き)、
それからMkⅡのストックが違うものの3つが手元にある。
MkⅥには予備マガジン(弾倉)とマガジンローダー(装填器具)も
付属してきた。

いずれも単品、ルーズパーツとして入手しており、出処は定かでないが
MkⅥはドラゴン製と思われる。

MkⅡはハンドガード部分を金色がかった別色で塗るなど、細かく
作り込まれており、MkⅥに至っては布がサイレンサー部に
取り付けられている。

sten/03
左から、1/1,MkⅡ,MkⅥ,そして正体不明のもの。

[ダンケルクの敗走]
1940年、英仏軍は独のフランス侵攻の前に新型のブレン軽機関銃を含む
武器弾薬の多くを放棄して敗走、更に空爆で英国内の武器製造施設にも
大きな損害を生じ、火急的に兵器の生産体制を立て直す必要が生じた。

特に機関銃や個人装備のライフルの不足は深刻であり、また独の空挺部隊
が使用していたMP38,MP40などのSMGに対抗する装備を考える必要が
あった。

sten/05
1/6で英軍の制式ライフル、SMLE(ショート・マガジン・リー・エンフィールド 左)と。

[英国でのSMG開発]
英国ではSMGを評価しておらず、これまで海軍陸戦隊が採用していた程度
だったという。
しかし、SMGを採用する諸外国の動きは知っており、伊のビラール・ペロサ、
独のMP18,EMPや米のトンプソンはもちろん、フィンランドのスオミ、
スペインのスターなど、ともかく一通りのSMGをテストしていた、という。

sten/04
これらも1/6で左から、トンプソンM1928、MP28、ステンMkⅥ。

ステンを開発する前に、BSA(バーミンガムスモールアームズ)が海軍の
要請でSMGを開発している。
そしてステンと同時期には、ランチェスターSMGだけでなく、チェコの
Vasely氏設計によるV40も同じくBSAで作られるなど、複数のSMG開発が
進行していた。
また、米からトンプソンM1928を調達し、後にはM3グリースガンを9ミリ
に改修したものを供給されている。

[シェパードとターピン]
STENの名は、開発者のシェパード(S)、ターピン(T)、そして
エンフィールド(EN)からきているという。

レジナルド.V.シェパードは英軍からエンフィールド造兵廠へ入り、
いったん退役したのち、BSAでSMGの開発に協力していたらしい。

彼はエンフィールド時代、主に検査部門にいたらしく、当時の同僚で設計
部門にいたハロルド.J.ターピンを呼び寄せ、共同で開発にあたった。

二人は当時47,48歳で年も近く、うまが合ったのかも知れない。
古巣のエンフィールドは、この二人が英陸軍新型SMGの開発に適任と考え、
呼び戻して1940年末から急ピッチで作業に入り、年明け早々には(開始
から何と36日後)試作第一号となるT40/1が完成、
”カービン・マシン・ステン・MkⅠ”として制定される。

[独創性]
新SMGのカートリッジは、敵国である独の制式、9ミリパラベラムだ。
これは英国に適当な制式カートリッジが無かったから、鹵獲した場合に
(実際在庫があったとか?)流用が可能だから、という理由で語られるが、
マガジンまでほとんどMP38,M40と同じものとしており、開発時間の短縮
のため、基礎的な部分は敵側の兵器から頂いた、というところなのでは
ないだろうか。

sten/07
ハドソン ステンMkⅡのマガジンにダミーカートを入れたところ。
画像のようにダブルカーラムシングルフィード(出口では単列になる)型だ。


また、生産性向上のためにレシーバー(機関部)を鉄パイプにした、
などの変更点はあるものの、丸いレシーバーは独のSMGの形状、
そしてトリガー(引き金)の前にフォアアームを付け、そこに
バーチカル(垂直)グリップを配したMkⅠ型のデザインは、EMPのそれに
影響を受けているものと思われる。

なによりボルト(遊底=機関部の閉鎖を行う部品)の形状、トリガーシステム
など、内部構造もMP38,MP40にそっくりだった。
つまり、ステンは独SMGの生産性を向上させた改良型だった、ともいえる。
手っ取り早く信頼性ある製品にするには、オリジナルにこだわるより
コピーが最も良い、という判断だったのかもしれない。

sten/06
再び1/6で、左からM3グリースガン、ステン、MP40。

しかし、単に複数のSMGの要素を寄せ集めただけでは、まともな製品が
出来る訳はない。

既にBSAは各国のSMGを導入する試作を重ねており、エンフィールドの2人は
造兵廠の生産技術を伝えるだけでなく、こういったノウハウも吸収
していた(そのための派遣だった)のかもしれない。

またシェパードとターピンは既にBSA社用以外の新型SMGについて、
アイデアを密かにまとめつつあったのかもしれない。

ともかく短期間で破綻の無い、生産性の良い製品を作り上げたのは
驚くべきことである。

ステンは単なるデッドコピーではなく、MP40のテレスコピックタイプ
(望遠鏡のように大きさの異なる筒を重ねて伸縮する機構)の
リコイル(反動)ユニット、バレルレスト(銃身を何かで支える場合の
保護材)、フォールディング(折り畳み)ストックなどは廃し、素材も
ベークライト(樹脂)は使わず木材とした(更に改良型のMkⅡでは
完全に木材を廃している)。

ステンは省力型だが、何もかも徹底的に無くしたわけではなく、独立した
セレクターを持っており、セミオート(引き金を引くと一発のみの発射)
モードもあり、MkⅠではラッパ型のコンペンセイター兼フラッシュ
ハイダー(フラッシュエリミネーターと呼んでいたようだ)、
折りたたみ式のバーチカルグリップが装備されていたし、MkⅡからは
サイレンサー(消音器)付属型も作られた。

このサイレンサー付きステンは、独も脅威を覚えたと言われ、
ウェルロッドやグリースガンと共に軍においてサイレンサーを普及させる
契機になったように思う。

sten/11
左の上下はセレクターの作用。セレクターのボタンを押す(赤の矢印)と、
トリガーバーも押されてトリガーを支点に傾き、横に移動、
ボルトの突起でディスコネクト(シアとの関係を断つ)しなくなる(青の矢印)。

右上は逆にレシーバーから見えるシア(赤の矢印)とトリガーバー(青の矢印)。
共にボルトの突起と当たる(シアはボルトを止め、トリガーバーはヂィスコネクトする)。

右下はボルトを取り出したところ。赤い矢印で示したところが、シア、トリガーバーと
接触する。


安全面では、まず後退(発射準備)位置より少しボルトを引いて
レシーバーの溝にボルトハンドルを引っかけて安全装置としていたが、
MkⅡではマガジンハウジングを回転させるとエジェクション(薬莢の排出)
ポートが閉じ(マガジンも射撃位置まで押し込めない)、防塵対策(ボルト
ハンドルの部分は開いているが)にもなっていた。

更にMkⅡの途中からボルト前進位置でボルトハンドルを押し込んで
ロックする機構も追加されたが、これもMP40同様とはいえ、ステンの
方がシンプルな構造だ。

sten/08
左上はボルトハンドルを後方で溝にかけたところ。
左下はマガジンハウジングを回したところ。矢印で示しているところがエジェクションポート。
右の上下はボルト前進位置でのセフティ。上が解除時、下がロック時。下の青い矢印で示した
ところに、ボルトハンドルが突き出している。


他に構成上目立つのは横に配置したマガジンで、これはMP28(MP18)
等の比較的初期のSMGが原形と思われる。
これを踏襲したのはプローン(伏せ姿勢)や塹壕などで低く構えられる
よう配慮したようだ。
英国では後のスターリングSMGでもこのレイアウトを続けている。

sten/14
1/6で、スターリング(着剣状態 左)とステンMkⅡ(右)。

外観上は、MP40が未来的、とでもいいたいほど、非常に洗練されたもの
になっているのに対し、ステンは正にパイプ溶接の、銃器史上最も簡素な、
省力型の素っ気ないものだ。
特に目立つのはストックで、MkⅠでは2本のパイプにバットプレートと
なる鉄板を溶接し、MkⅡではスケルトンタイプの曲げ加工の一体型、
一本の鉄パイプに鉄片2枚を溶接しただけのT字型、スケルトンタイプの
ピストルグリップなど複数のものが作られているが、どれも他に類を
見ないほど簡単な作りだ。

WWⅡ期末期に日本でも物資,製造能力の問題から極力簡素化された銃が
作られたが、元々の設計から簡素型としたわけではないため、ここまで
簡単な作りのものにはなっていない。

米国もM3グリースガンの他に、リバレイター(FP-45)ピストルを
作ったが、プレス成型でグリップ部を形成しており、板切れ一枚、という
究極の省力型はステンくらいである。

しかし、ストックは頬づけすることは出来ないものの、実用上差支えない
レベルで、グリップも快適とはいえないが、問題なく使える。

sten/09
1/1で、T字型ストック。型式名はバットNo.2 Mk.2。

ストックはワンタッチで外すことが出来、回転式のマガジンハウジングと
相まってコンパクトに運搬できる。

sten/10
1/1で、ストックを外し、マガジンを抜いてマガジンハウジングを下向きに回転した状態。

分解もバレルはヒートガードを回すだけ、ボルトはストックを外し後部の
パーツを回転させ、ボルトハンドルを抜けば、スプリングと共に後方に
抜けてくる。
射撃後の手入れはそこまででOKで、必要なところがシンプルに分解できる、
という点では後発の米M3グリースガン以上かもしれない。

[ステンチガン]
ステンは、MkⅡだけでも200万丁以上が製造され、正に”英国を救った”
SMGだが、兵士たちの評判は芳しいものではなかったという。

ステンには様々なニックネームが付けられたが、「ステンチ(臭い)ガン」,
「テンピー(10ペニー)ガン」,「ウールワース(安売り店)ガン」そして
「鉛管工のお気に入り」など、ともかく全く褒めたものがない。

sten/12
1/1で、トリガー部を下からみたところ。
大きく空間が空いており、トリガースプリングが見える。


当初、マガジンの給弾、レシーバーのボルト収納部分の溶接個所などに
不具合があり、これが評価を下げる要因になったと思われる。

ステンのレシーバーは、MkⅠではパイプを加工していたが、MkⅡで
ボルトハンドル用の長穴などを開けた後に板を円状に丸めて溶接して
作ったらしいので、溶接範囲は広く(後にドイツがコピー品を作った
際には、長穴,エジェクションポート部で継いだために、溶接長さを
減少させることが可能になったという)、ボルトが動く範囲の溶接個所の
仕上げが良くないと、引っかかって作動しなくなることがあったようだ。

また、レシーバー前部を溶接せず開けていたために異物がトリガーメカ部
に入り込んだため、後には薄い板を溶接して対策したという。
それでも、上の画像のように、トリガー部などは大きな空間が残っている。

鉄板を溶接しただけの簡素なグリップや、表面仕上げが磨きではなく
溶接跡もそのまま、木材すら使われていない姿がみすぼらしく見えた
可能性も(無可動実銃では機関部がブルー,ストックが黒色塗装で、
ヒートガードもガンブルーでない可能性があるものが見られ、
MkⅡではパーカーライジングなのか全体が艶消しの灰色のものも
見かける)ある。

英国は多くの男性を兵士として徴用したこともあり、当時工場では多くの
女性が働いていた。組み立てだけでなく、通常あまり女性がやらない
(火傷などの危険がある)レシーバーの溶接まで行っている写真、動画が
残っている。

ステンは一般の工業製品を作る工場で生産可能な方式がとられ、実際に
ミシンメーカーのシンガー、玩具メーカーのレイネス・ブラザーが
作っている。
正に”オモチャ屋の銃”である。

ステンは確かに光り輝くウォールナットと深いガンブルーに彩られた、
居間に飾っておくに相応しい銃ではないが、短期間に大量に作れ、近接
戦闘に特化した”優れた兵器”で、故に何百万丁も作られ、
自国外どころか敵国で技術に関しては世界最高を標榜していた独でさえ
コピーした(立場が逆転し、今度は独が追い詰められた、という事情は
あるが)のではないだろうか。

確かにそれまでの銃のイメージからはほど遠く、戦後アーマライトが
アルミとプラスチックのARシリーズの販売で苦労し、軍でも当初不評
だったように、”大きな転換点”は、直ぐに受け入れられるものでは
なかったろう。

しかしこの後、米はM3グリースガンで鋼板プレスを更に押し進め、
自国のSMGでもスターリングのレイアウト、構成には強い影響を及ぼし、
それどころかカール・グスタフやそのコピーであるS&WのM76などが
円筒パイプと曲げた鋼板を溶接で組み合わせた構成を踏襲するなど、
影響力という点では、MP40よりも大きいかも知れない。

シェパードとターピンは、独創的な機構は作らなかったが、
生産性という、そのとき一番重要視された要求を満たした。

彼らの名を冠されたこのSMGは、決して”臭い銃”ではなく、一つの
究極、そして革新ではないだろうか。

[3Dプリンタ銃]
最近、日本でも3Dプリンタを悪用し、真正銃を作って逮捕される事例が
起こった。

これを機に立法側(とその意向をそのまま垂れ流す一部マスコミ)では
3Dプリンタを危険視し、何らかの法整備を考えているようである。

しかし、銃は3Dプリンタのような”特別な装置”が無くても作れるもので、
極端な話、日曜大工の工具と部材で制作は可能だ(火縄銃なども立派な
真正銃だ)。

銃の製造の危機、それは今に始まったことではない。
あのような大きくて機能も劣った原始的なモノ(金属探知機に反応しない、
という点は優れている、といえるが)ではなく、本格的な銃が摘発された
事例も枚挙にいとまが無い。

そして銃の製造はそれ自体が既に重罪となっている。

機械を規制する、というなら、既に各企業,家庭に普通にある
電動ドライバーも取り締まるか、ユーザーが毎日何を作っているか確認
しなければならない。

そして板金,溶接までできれば、もうほとんどこのステンが作れる
のである。

犯罪を抑制するためには、様々な方策があると思うが、例えば真正銃を
求めるなら、海外で射撃体験する費用と、罰金,懲役とその間の不利益
を考えれば、どれだけ馬鹿な事か、は判ると思うのだが。

もし、費用対効果(不利益)ではない、というなら、それは子供の反抗期
と同じ(子供の場合、自我の確立に意味があるが)、社会に対する反発心
だけ、ではないだろうか。

武器に対する法制が間違っている、個人の武装する権利を日本でも保障
すべきだ、というなら、国民の同意のもと、過半数の国会議員の賛成を
得るべきだ。

法改正に依らず、自ら法を破るのはテロと同じであり、逆効果しか
呼ばないと思う。

常々銃=悪、ではないと言い続け、武器を無くせば平和だ、とかいう妄言
に苦言を呈してきた身としては、またガンファンの肩身が狭くなるような
今回の事件は残念でならないし、犯行に対しては強い怒りを覚えるが、
一方で悪用する人間の罪を、全く意志の無い、未来ある生産技術に転嫁し、
萎縮させることの無いよう、冷静な判断を願うものである。

sten/13

今回もまた脱線してしまったが、長い話にお付き合い頂き感謝。
最近毎度のことで申し訳ないが、更新が滞りがちになってしまっている。
しかし次回記事も鋭意作成中なので、また宜しく。

参考文献;月刊Gun 2008年6月~2009年12月号、2011年2月~6月号
      GunProfessionals 2014年6月号

web拍手 by FC2

















管理者にだけ表示を許可する



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2017 Gun1+1/6, All rights reserved.
まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。