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今回は、ワルサーP38。
P38/11

P38は、単にこれが名銃というだけでなく、それ以後のほとんどのオートピストルに影響を与えた傑作である。
P38は、ナチスドイツの制式拳銃となり、PP,PPK(過去の記事)と共にワルサーの躍進を担った。
戦時中は自社以外でも生産するなど生産量は増大したが、自社も含め戦時下で品質維持に苦しみ、敗戦によって生産設備までも失う。
そのワルサーが、戦後「ナチスご用達」だったという負の遺産にも苦しみながらも、何とか生き残れたのもこれらの名作拳銃があったことが大きいと思う。

[概要]
P38はダブルアクション(DA)トリガー(後述)、オートマチックセフティを備えた、初めての大型軍用制式拳銃である。
これらの機構は、同社の小型,中型拳銃PP&PPKから採用されているが、軍用の大型にこれを持ち込み、その後50年ほどでこれらがスタンダードになるまで普及させたのはP38の功績だと思う。
9×19mm(ルガー,パラベラム弾)を使うため、モーゼルC96に近いプロップアップ式のショートリコイル(後述)を採用している。
また、PP,PPKと同じく、カートリッジインジケータを備え、弾薬の装填を確認できる。
更に、M1911A1過去の記事)などと同じ、外装式のスライドストップも装備している。

1/1のワルサーP38を2つ。
左はマルゼンのガスブローバックエアガン、右はマルシンのモデルガン。
共にABS製だが、マルゼンは艶消しになっている。
マルゼンは1941年製の戦時中モデル、マルシンは戦後型のチェッカーグリップがついたもの。
P38/01

[ダブルアクション]
ダブルアクション(略してDA)とは、トリガー(引き金)を引くだけで撃発装置(具体的にはハンマーなどのパーツ)がセットされ、そのまま引き金を引き続けると撃発されるシステム。
P38は装填時にハンマーがコック(起こす、撃発準備状態にする)された状態からトリガーを引くとハンマーが落ちて撃発するシングルモードと、レスト(安全、落ちた)ポジションからトリガーを引く事によってハンマーをコックし、そこから更にトリガーを引く事でハンマーが落ち、撃発するダブルモードの両方が使える。
このため、通常はハンマーをレストポジションで持ち歩き、使用時には(セフティを解除しておけば)トリガーを引くだけで発射でき、更に連射時はシングルモードで短い距離,軽いトリガー動作で使える。

P38の元となった、PPK(/S)のDAメカ。
これはマルゼンのガスブローバックガン。
トリガー(引き金)に取り付けられたトリガーバーが、フレーム左側を通り、コッキングピースと呼ばれる部品を引く。
P38/08

これがP38のもの(マルシンモデルガン)。
トリガーバーはP38の場合、外部に露出している。
銀色のパーツがハンマーのコッキングピース。
その後方、フレーム内部から覗いているのが、ハンマーについているシア。
ワルサーのDAメカは、DAリボルバーの機構をトリガーバーでつなげたような構成だ。
P38/10


[スライド+プロップアップ]
現在米軍制式のベレッタM92FS(過去の記事)(その前のM1951も)はP38の閉鎖機構をベースに開発されている。プロップアップ機構は、同じく直線で動くモーゼルC96の影響があるものの、これをスライドとバレル(レシーバー)の関係に置き換えたのは、P38だと思う。M92FSはフレーム外にトリガーバーを出した、片引きのDAメカも真似ている(シアなどは独自の考案)。
またSIG P210も初期には木製グリップに横溝を彫っており、これもP38の影響が伺える。これなど作り易く汚れも拭き取りやすく、かつ十分な滑り止めという点が参考にした理由ではないか。
SIGはP220でもハンマースパーの形状が似ており、これなど機構だけでなく意匠上も参考にしていたふしがある。

右から、P38,M439,M92SB。
S&W M39(過去の記事)はP38のDA機構を継承し、ブローニング系のスライド,ティルト式閉鎖機構を採用したモデル。
DAメカ自体はオリジナルで、トリガーバーもマガジンを避けて(M1911のように)左右両側,フレーム内を通る。
これはM39の後継機M439で、マルシン製ABSモデルガン。
M92SBはベレッタのトライアル提出モデル。これはスズキ製メタルフィニッシュのABSモデルガン。
P38/02


P38は開発当初シンプルブローバック方式を試みたようだが、やはり一般的なショートリコイル方式の閉鎖機構を採用し、M1911などとおなじスライドカバー式の後退部をもっている。
プロップアップ式結合方式の先駆者モーゼルC96は、開発時の弾薬が小口径だったためもあり、ボルトが後退する。
P38がボルト式からスライド式に改めたのは、弾が9mmと大きく、ある程度の重量が必要なこと、PPなど既に開発していたワルサー一連の自動装填拳銃が、皆スライド式だったからだろう。
ただ、配置レイアウトを考えると、トリガー(引き金)前方に閉鎖メカニズムを持ってこないと、後部にはハンマー式のダブルアクション機構を納める関係上場所がとれない。
日本の南部式一連のシリーズでは、発火をP08(過去の記事)と同じストライカー式とし、後部にプロップアップメカを納めている。これはボルト式でもあり、全体にC96に近い構造である。
さて、P38はプロップアップメカをバレル下、トリガー前方に置いた結果、次に行き場を失ったのが、リコイル(スライドの前進用)スプリングである。
PPではバレル周囲に巻きつける形だが、ここはプロップアップの部品がバレルとかみ合う必要があるため使えない。
M1911のようなバレル下の配置は、ずっと後にベレッタがM90,M92シリーズでやるが、これだとバレル前方までスライドを伸ばす必要がある。
既にプロップアップ機構でスライド幅が広く、全体重量も、またスライドだけの重量もかさむ。先ほどはスライドの重量が必要と書いたが、つまり9mmの弾に適当なスライド重量がいるということで、過度な重量だと全体が重くなる。
P38はスライド上方を大きく削り取っているように、既に重過ぎるきらいがあったのだろう。
このうえ前方にスライドを伸ばすことは躊躇われたに違いない。そこで左右に2本の小径スプリングを配置する、ダブルリコイルスプリングとでもいうべき方式でこれを解決した。
この方式、実は先に実例がある。ボルト式だが、南部14年式が、小径で2つのスプリングを使用している。この前に作られた南部甲,乙,小型では、左側にスプリングが配され、アンシンメトリー(左右非対称)だった。ワルサーが14年式を知っていたかはともかく、このアイデアは南部式が先だった事は確かだ。

P38のリコイルスプリング。
フレームの両スライド溝の中にスプリングがある。
これはマルゼンのモデル。
P38/13


[生産性]
P38は生産性を上げるために、P08よりシンプルで加工しやすい構造とした。加えて、鋼板をプレス加工で切り抜き,成形して一部の部品を作っている。スライド上部のオートマチックセフティ,カートリッジインジケータのカバーがそうだし、マガジンキャッチ,トリガーもそうである。
ハンマーのスプリングガイドや、マガジンはもちろん、他でもプレスによる打ち抜きで作られていたが、ワルサーは板を打ち抜き、曲げて立体的な部品を作りだしている。
M1911A1がトリガーをプレス成形しているが、この方式は1927年から行われておらず、後に移行したのではないかと思う。M1911A1の初期モデルなどはトリガー側面のツラが出ており(側面が研磨されている)、レンミントンランドなどで戦時中作られたものとは違うからだ。このあたりモデルガンでは全てダイカストで成形してしまうので、参考にはならない。
MP40などもこの製法でもっと大きなレシーバーを作るのだが、これは少し後である。
また、P38はハンマーの後方,スパー(指かけ)の部分が削られ、コの字断面のハンマーになっているが、これは機械加工で削られている。手間はかかるが、後にSIG P210なども同様の形状,加工としている。

P38の後部。
マルゼン,マルシン共にコの字形状のハンマーを再現している。
トリガーは、マルゼンがコの字、マルシンはソリッド(中身が詰まった)形状だ。これは戦後P4で採用されたようで、ワルサーのカッタウェイ図がそうなっている。
戦後のP1などは、プレスではないようだが、コの字断面になっている。
P38/09

[欠点]
P38にも欠点はあり、スライト上部のカバーが反動で飛ぶことがあるという。あとカート排出方向が通常と逆で、右手で持つと射手側に向かって飛ぶ。これは自動車運転中に左手で発射することを考慮したという記述もある。確かにこのとき車外に飛んだほうがいいが、通常は右手で撃つのだからやはりおかしい。あと重心が後方寄りで、反動で大きく動き(跳ね上がり)易いなどが挙げられる。P08のバレル(銃身)が突き出たスタイルを踏襲したためだが、P08はグリップアングルがきつく、これでバランスを取っている。

SIG P210とP38。
P210はマルシンのガスブローバックガン。P38はマルゼン。
左のP210は、上から見て右にカートリッジが排出されるのに対し、P38は逆で、左に飛ぶ。
カートリッジをチャンバー(薬室)から引き出すエキストラクターが左側についている。
またリアサイトの前方に別部品で再現されている(但し実物のプレス製とは異なり、ダイキャストだと思う)のが、欠点となったカバー。
P38/22

[グリップ素材]
グリップは軍用制式がベークライト。戦前の民間用,試作等でチェッカーの入ったものは、エボナイトではないかと思う。
以前FN(ファブリックナショナル)M1900のグリップをエボナイトではないかとこのブログ(トカレフTT-33の記事)に書いていたが、床井雅美氏の著作(Shooting Tips The History of German Police Pistolsワルサーの復活東西分裂)によると、M1900の後のM1910も牛の角だった(そのままか、粉にして成形したのかは不明)らしいので、M1900も牛の角ではないかと思う。M1910ではその後エボナイトが使われていたという。
これより前には、天然の樹脂(エラストマー)を使ったものもあった。コルトは自社初のDAリボルバー(回転式拳銃)M1877ライトニング(これも以前PPK(過去の記事)のときに紹介したことがある)で、グリップパネルにグッタペルカ(ゲタペルカ,ガタパーチャGutta Percha)を使ったとの記事が頑住吉氏訳のドイツ文献で見られる。
これはそのままの名前の、木の樹液からとった成分で、熱可塑性(熱すると柔らかくなる)で柔軟性を持つ樹脂だとのこと。
ライカなどのカメラの表面に巻かれている人工皮革がこれだ。他にも海底ケーブルの被覆や、ゴルフボール,歯科医療の詰め物などに使われたとか。
もちろんこれは天然素材で、現在健康食品?の杜仲茶にも含まれており、血糖値を下げる効果があるらしい。
その後石油加工製品の台頭で既に忘れ去られたような素材だが、熱可塑性(熱すると柔らかくなる)なのでエボナイトより成形に適している。
P38でもこれを使っていた可能性はあるのだが、P38はグリップ後部にまでグリップパネルが回り込んでおり、その後部は樹脂素材だけで構造(ハンマースプリングが入る空間の確保)を持たせているので、グッタペルカが弾性,柔軟性をもつなら、不適当ではないかと思われる。
すると当時の入手可能素材では木材でなければエボナイトになるのでないかと推論した次第である。
ちなみにエボナイトも生ゴムに加硫して硬化させた半合成半天然?というべき素材だ。
そしてドイツは経済封鎖でゴムなど米英仏植民地(当時)からの物資の供給不足から、合成樹脂,ゴムの技術が発達したそうなので、ベークライトに置き換えたのではないだろうか。
更に戦後のものは他のプラスチック素材が開発され、普及したこともあり、これらを使っていないと思う。

マルゼンのP38グリップ。ベークライトのそれを模したまだら模様の赤茶色になっている。
P38/21

[発展]
ワルサーは戦後もP38を生産し、またいくつかの変更,モデルチェンジ(P4も新規モデルではなくマイナーチェンジ?)をしたが、その後のニューモデルP5も基本的にはP38の改良であり、新規モデルといえるP88を開発するまで長期にわたりP38系を続けた。
もちろん需要があり、また製品の競争力が劣っているとは考えなかったというのもその理由かもしれない。
戦後すぐにアルミフレームも取り入れているし、複列弾倉+DAが多く登場したのは1975年頃、それが一般化したのはXM9トライアルの時期くらいだと思う。このときにはワルサーもP88を出している。
米国軍トライアルなども睨んだP88は、しかし商業的に失敗作となり、ワルサーはP99まで迷走することになった。
また、スポーツ用拳銃は戦前からオリンピアモデルなどを作り、後にはOSP,GSPシリーズなどを開発、軍用は製造制限を受けた時期もあってこちらの方が戦後は熱心なようにも見える時期があった。

ワルサーを代表する3種、P38,P99,PPK/S。
P99もPPK/Sもマルゼン製ガスブローバックガン。
マルゼンは単に商標の使用許可を得ただけでなく、ワルサーのエアーソフトガン製造を行う提携関係を結び、直接ワルサーから資料の提供を受けて、製品開発を行っているそうだ。
P38/03


[1/6]
今回の1/6は、ドラゴン製。
ホルスター,予備マガジンがつき、スライド,ハンマーが可動する。
このスケール,材質で充分な強度を得るためか、トリガーガードは太めだが、スライドのセレーションなど細かい造形だ。
P38/25


今回は、リンク先のmomocloで先に紹介した、ユノアクルス・ライト フロゥライト(U-NoaQulutsLightFluorite)と。
それでは、また。
P38/23

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まとめ

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