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今回もまた少し趣向を変えて、拳銃の射撃姿勢、それも両手保持の立射(Two-hand sighted fire,Two-hand eye-level shooting)のスタイルについて、1/6のドールを使って考えてみたい。
Poj/01

[概要]
かって、拳銃は片手で使用するものとされていたとか。
今も標的射撃競技などではルールで片手撃ちを定めている。
しかし、実戦的な射撃訓練,競技が発達すると、命中率を上げるため、両手を使う姿勢をとるようになった。
実際、両手を使う方がはるかに銃を安定させやすい。
また、スピードも、ごく近距離でサイトを使って照準する間もなく発射するケースでなければ、両手でも片手と変わらない。
それで50年ほど前から、拳銃の両手保持が推進されてきているという。
しかし、果たして両手保持のルーツはそこにあったのだろうか。

拳銃の立射で両手を使う場合、ウイーバーとアイソセレスという2つの構え方が主流のようである。
この2つは、上体が目標に対して正面を向く姿勢(アイソセレス)か、斜めになる姿勢(ウィーバー)かで大別される。

アイソセレス(左)とウイーバー(右)。
Poj/02


[アイソセレス]
アイソセレス(isosceles)は、上から見て両腕と体が二等辺三角形になる形(下の写真、青線で示す)から名づけられた。
Poj/05

これをアイソトレスと称する記事も見受けられるのだが、それは三角形=trussから連想された誤りではないだろうか。
Isotrussは、米国ブリガムヤング大学で開発された三次元格子構造体のことで、商標登録もされていらしい。

さてアイソセレスだが、1980年代、IPSC(International Practical Shooting Confederation=国際実用射撃連盟、IPSC自体は1976年に設立らしい)の射撃競技普及に伴い、一般化したという説もあり、このスタイルをIPSCスタイルと呼ぶこともあるらしい。
この説には、当時を知る(但し日本国内で)者として少し違和感を持った。
これより前、IPSC競技となっていなかったPPC(Practical Police CourseともPractical Pistol Courseとも、Police Pistol Combatとも書かれ、どれが本当かわからないが)でも、インストラクターがアイソセレス(当時はこの言葉も無かった)で教えている記事が何度か登場している(月刊Gun ’77 9月号,’78 11月号など)。
IPSC設立の発起人の一人で、コンバット・シューティングの第一人者ジェフ・クーパー(ちなみに彼が採っているスタイルはウィーバーだが)による影響などで、IPSC設立の前から既にこのスタイルは普及していたのではないか。

また、ここで何度も登場している1971年公開の映画、「ダーティ・ハリー」では、主演のクリント・イーストウッドがこの正面向き両手保持(但しウィークハンド=利き手でない側は、利き手の手首をつかんでいたようだ)でS&WのM29 (.44マグナム、但し映画上の設定でも2本目ではライト・スペシャルを使っている、ということになっていた 過去の記事)を撃っていたようである。
また、M29が登場するときにオーバーサイズのターゲットグリップを装備し、同じ年の1955年(M29の発売は1956年らしい)コルトから登場したパイソン(過去の記事)も、オーバーサイズのグリップを装備していた。
オーバーサイズグリップはM19などでも使われ、この頃から普及し始めたように思う。
コンバット・シューティングの普及だけでなく、カートリッジの強力化が、大きなグリップと両手保持を求めた、という側面も無いだろうか。
357マグナムでも充分強烈な反動だが、更に強力な44マグナムでは1950年代から両手保持が一般化していたのかも知れない。
以前SIG P232(過去の記事)のときに紹介した、小橋良夫氏の著書「ピストル」(1976年、池田書店)にも、「両手で保持し,両足を踏ん張り,腰を落としてタ^ゲットを狙う」のが、M29 44マグナム・リボルバーの射撃法だという記述が見られる。

つまりIPSC発足前から、この構えはマグナムに対処する方法,コンバットシューティングなどで既に使われており、そして、当時は名前も無かったこの構えに、後からできたIPSCの名前が付けられ、IPSCの発展,認知度の向上に従って、「IPSCのスタイル」になったのではないだろうか。

現在、アイソセレスはツーハンド・シューティングスタイルの基本として普及している。
基本は両腕を伸ばし、両手はグリップをつかむ(ウィークハンドは利き手にかぶせる)。
上体は目標に対し正面を向き、足は肩幅より少し広めに開き、膝を少し曲げる。
膝を少し曲げるのは、ここで反動を吸収する為だが、腕も完全に伸ばすと手首だけで反動を処理することになるので、若干曲げて構える方が良いという。
(3方向からの写真を合成)
Poj/03


[ウィーバー]
ウィーバー(weaver;直訳すると織工,編む人、オンラインゲームのテイルズウィーバーも女優のシガニー・ウィーバーもこのスペル、これも人の名前からきているようだ)は目標に対して45度位斜めに構え、利き手の腕はほぼ真っ直ぐ、ウィークハンド側の腕は曲げ、肘を下にしたスタイル。

ドールのポージングの限界から、ウイークハンドでしっかり銃を握れないが、基本は利き手にかぶせてしっかり銃を握る。
(これも3方向からの写真を合成)
Poj/19


この構えは、ジェフ・クーパーのスタイルということもあり、どちらかというと自動装填式の銃で用いられるイメージがある。
このスタイルでは、以前ウィークハンドにグリップ下を乗せたような、カップアンドソーサーというスタイルもあった。
これは片手保持でウイークハンドは添えただけ、にもなりかねないように思う。
Poj/06


ウィーバーは左右方向に離れている目標を撃つ(大きな角度で振る)のには不利だとされる。
上体がもともと斜めを向いているので、利き手方向には良く動くが、逆の方向には余り動けない(視界も同様)。体全体でそちらに向き直す必要があるわけだ。
この姿勢のメリットとして、ウィークハンドが左手の場合、心臓あたりを左腕がカバーし、急所を直接狙われにくい、ということを指摘することがある。
確かに直接当たるより、例え貫通しても骨が多いので弾がそれる可能性もある。
そして、腕でカバーするのは心理的にも、敵と対峙する時は良いかもしれない。
しかし、体が斜めだと面積が減るから、というのは、余り関係ないと思う。角度の違いによって変わるのは上体の肩幅の部分くらい、大きな違いにはならないと思う。

FBIは以前クラウチング(crouching 陸上競技のそれと同じ語。屈む,背中を丸めるという意)ポジションという低い姿勢でサイトを使わずに片手で撃つ方法を指導していた時期があったが、この姿勢では左手の拳は心臓の前に持ってきてガードする。
Poi/07


心理的効果といえば、人間は普通左周りに動く習性があり、商業施設内の店舗などは、入り口から左手側にあるほうが、客が入りやすいという。
これに従えば、室内に突入する場合でも、極限状態で右か左かを選択するときは無意識で左に向かうことが多いと思われる。
また、右手でバリケードを利用して撃つ場合でも、左にバリケードがあるほうが体を隠しやすい。
すると、左に壁がある状態で進行する傾向が強いので、これに適したウィーバースタイルで練習しておくことはいいかも知れない。

また、ウィーバーの弱点として、体の前後面を保護する防弾チョッキ(ボディ・アーマー)では覆っていないところを相手に向けることになる、という指摘がある。
実際、左腕の付け根辺りから入って心臓に達し、絶命した例もあるようだ。
体全体を覆うボディ・アーマーなら、この問題は無いが。
ボディ・アーマーについても、ついでではあるが下で少し触れてみた。

[ボディ・アーマー]
本題からは少しずれるが、ボディ・アーマーはコートのような形で分厚いものなら、痣ひとつ残さない、というのも可能だが、服の下に着用するタイプでは弾を止めることは出来ても、かなりの衝撃を受けるようだ。NIJの規格では、初弾による凹み44mm以下とか規定があるらしいが。
また弾を止める機能と刃物で刺されない機能は別で、日本の警察官が着用して警備に当たるときは、防刃チョッキを着用することもあるようだ。
もちろん、両方の機能が備えられている製品もある。
ボディ・アーマーの素材は特殊繊維で、以前ケブラーを使い、最近はザイロン,ダイニーマというものが使われているらしい。

[共通の姿勢]
アイソセレス,ウィーバーの両者とも、頭は低めに前よりに、そして重心は反動に備え前よりに持ってくるのがいいようだ。
オープンサイトでは、目とサイト間の距離があったほうが前後サイトの距離の差によるボケが少なく、また前後サイト位置のずれ(合わせる限界)による着弾位置のずれも小さくなる。
しかし、頭の位置による距離の差はせいぜい数センチで、腕を伸ばした状態であれば決して大きな影響はないこと、頭が後方にくれば体がのけぞって重心が後ろに来る、低めの姿勢の方が弾に当たりにくいことなど、総合的に考えれば前よりになるのが良いのではないだろうか。

アイソセレスで、前屈み気味の姿勢。
poj/20


最近、腕を伸ばすのではなく、拳銃を体に引きつけて(寄せて)構えるシューターを見かけるが、これはオプティカルサイト(ダットサイト,スコープなどの光学照準器)の発達が生んだポジションではないだろうか。
Poj/09


グリップを握る手の位置は、ライン・オブ・ボア(銃腔の中心線)に近い、より高い位置、いわゆるハイグリップを推奨している。
これはライフルの直銃床と同じで、反動発生点(マズル)に支点(手、もしくは手首)が近いほうが、上方向へのモーメント(力×距離、この場合力は同じだが距離が短くなる)が少なく、つまり跳ね上がり量が減る。

ハイグリップの説明に、ライン・オブ・ボアを赤線で示してみた。
Poj/11


また、常識的な事だが、拳銃はサイティングの為(近距離なら関係ないかもしれないが)にもサイトが上になるように構えるのが基本。
銃を横にするスタイルは、空ケースが上に飛ぶので、映画で見栄えのするスタイルとして考えられたものだと思う。
Poj/12


[フィンガーレスト]
コンバット・シューター達は、よりウイークハンドの保持による安定性を高めるため、人指し指をトリガーガードにかけるようになったのだが、この指が滑らないように拳銃のトリガーガードにフィンガーレスト(指掛けの突起)や溝をつけるカスタムが流行した。
これがツーハンド・シューティングの普及に伴って一般化し、1970年代後半からは、メーカーが突起や溝を設け始め、やがてトリガーガードにはフィンガーレストをつけるのが普通になった。
H&KではP9Sを改修してフィンガーレストを設け、P7(過去の記事)からは全てにつけている。S&WでもM459にフィンガーレストを付けた。
SIGもP220からフィンガーレストをつけているが、ベレッタはM92SBまではこれが無く、M92F(過去の記事)になってフィンガーレストが付く。
グロックは当初からフィンガーレスト付きだが、ここに溝というより段差を設けて滑り止めとしている。

フィンガーレストがついているベレッタM92FSのトリガーガード。
今回唯一登場の1/1モデルガンは、マルシン製のもの。
Poj/13


しかしそれまでトリガーガードにフィンガーレストが無かったかというと、そんな事は無く、実はもっと昔から、違う形で存在したようである。
約100年前のS&Wのサード(第3号)モデルの、ラッシャンモデルにはトリガーガードの前ではなく下に、ウィークハンドのためのフィンガーレストが付いていた。
コルトの初期のモデル、ドラグーンにも、後部が角ばったトリガーガード(ドラグーンタイプ)が付くが、これもウィークハンドを添える(間違ってささるような形だが)ように考えられたとか。
更にこのタイプのトリガーガードならフリント・ロックの時代の連発式のものにも見られ(上記 小橋良夫著「ピストル」ピストル歴史考)、一般化したかどうかは別にして、両手保持のルーツは、調べた中では連発式の創世期に、既にあったと思われるのだ。
片手撃ちが一般化した理由に、騎兵が馬上で使うときに両手は使えない為、という説もあったが、ドラグーンの名は皮肉な事に「竜騎兵」という意味らしい。

[ルーツと発展]
仮説だが、コンパクトで片手で操作できるもの、という拳銃の概念が生まれたときから、両手保持はその安定性に欠ける拳銃に”コンセプトに反して”使われていたのではないだろうか。
そして、19世紀半ばには、上記のように両手使用も考慮されていた事が伺えるのだが、その後しばらくトリガーガードのフィンガーレストも見られなくなる。
これがマグナムやタクティカル・シューティングの普及によって復活,推進され、「拳銃は片手で撃つもの」というイメージの転換に至ったのではないだろうか。
むしろ、20世紀前半まで、片手で射撃することが常識とされてきた、ということのほうが不思議に思えるのは、現代の両手射撃姿勢に慣れてしまったからだろうか。

上述のように、両手保持の姿勢の復活は、今度は拳銃のトリガーガード前方にフィンガーレストを装備させるなどの影響を及ぼす。
また、40S&W,357SIGなどの従来の9×19mmより強力なカートリッジの開発,普及も、両手保持によって反動の許容範囲が広がったことが要因のひとつとしてあるかもしれない。
このように銃と射撃スタイルが、互いに影響し合いながら、昔の要素なども発展させ、進化しているのではないだろうか。

それでは今回は、ここらへんで失礼。
Poj/17

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まとめ

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