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今回は、日本で警察官等に向けて作られた、ニューナンブM60を。
M60/02

[新中央工業]
今回は、まず、開発,製造した新中央工業について。
南部麒次郎が大倉財閥の経済的援助を受けて設立したのが、南部銃製造所で、ここが合併して中央工業となった。
敗戦後、軍備を禁じられた(自ら放棄?)為、しばらく休眠状態だったそうだが、1952年頃から、警察用や進駐軍用の装備のメンテなどを始め、このとき社名を新中央工業として再開したようである。
新中央工業は、当時統一されていなかった警察用拳銃を一本化して調達したい、という要求に応じて、5連発のDA/SA(ダブルアクション/シングルアクション 引き金を引くとハンマーが起きて倒れる/ハンマーを起こしておいて引き金を引いて落とす)回転式拳銃を開発したらしい。
新中央工業は、他にも自動装填式拳銃を開発していた。
M57Aは9ミリの軍用、M57Bは32ACPの警察用だったらしいが、これらは採用されなかった。
新中央工業はその後、スイスSIGとライセンス契約を結び、P220を自衛隊向けに生産する。
その後、ミネベアに買収され、現在はミネベア大森工場となっているようだ。
このモデルの名称、ニューナンブは、南部銃製造所の系譜と、新中央工業の新が組み合わされたのではないだろうか。

ニューナンブM60 2インチバレル(銃身)。
これはマルシンのガスガンで、ニューナンブの商標に抵触しないよう、ポリスリボルバーという名前で出ている。
M60/01

[ニューナンブの開発]
開発は1956年頃から始まり、1960年に“ニューナンブM60”として採用されたようである。
(’09.6月追記;1960年完成,1962年採用との記事がGun誌('78年7月号 野村一介氏 拳銃学入門)に掲載されており、こちらが正解ではないかと思われます。)
しかし、それは基本的にはS&W社のチーフスペシャル、M36に酷似しているものだった。
一説に1950年頃からこれを開発、というものがあるが、上記のように、敗戦後武器の製造が禁じられている時期であり、新中央工業になってから、という説の方が説得力があると思う。
これは小橋良夫氏の「世界のピストル1」にも掲載されているらしく(原本未確認)、また新中央工業の会社沿革にもこのような記述があったようである。
ただ、これらには当初S&WのM10を元に開発が始まり、その後、M36を参考程度に、となっているらしいが、これは少し違うように思う。
というのは、M36チーフスペシャルは5連発で、ハンマースプリングにコイルを使用している点がM10ミリタリー&ポリスと異なり、その特徴が、全くそのままニューナンブに反映されているからだ。
既にチーフスペシャルが存在し、機構的にも、半分くらいは改修の必要がありそうな方をベースにしていた、というのは普通考え難いと思う。

M36チーフスペシャルとM10ミリタリーポリス。
M36はタナカのペガサス方式ガスガンを。
M10はコクサイのモデルガン。これはヘビーウエイト樹脂を使って作られている。
両方ともシリンダーを開いた状態。
5連発と6連発で、かなりシリンダーの大きさが違う。
M36はペガサス方式のガスガンなので、カートリッジ部分にガス注入口がある。
M60/04

[チーフスペシャル]
ここで、ニューナンブのもとになったチーフスペシャルについても少し。
チーフスペシャルの発表は1950年で、1950年代半ばにS&W社のモデルナンバー制導入によってM36となっている。
チーフスペシャルは警察関係者の集まりで発表したようで、そのときに募集した名前から、この名を採用したとか。
まあ、警察関係での使用を当て込んでおり、かつ民間に向けても宣伝になる、ということだったのかも知れない。
モデルナンバー採用後もチーフスペシャルの名はペットネームとして使用され、どうやら登録商標にもなっていたようだ。

更に脱線だが、S&Wでは創業当時、開発順にモデルナンバーを付けていた。
しかし、No3あたりから仕様の違うモデルが出来(ラッシャンモデル,スコーフィールドなど)、これらを通称で呼んだ?ためか、この1950年代半ばまでモデルナンバー制を止めていた。
新たに2桁のモデルナンバー制を導入した後も、コンバットマグナムや、ミリタリー&ポリス,このチーフスペシャルのように、愛称は引き続き使用され、最近になって全く別のモデルに同じ愛称をつけるようになった。
この襲名制とでもいうべき形、しかも本来引き継ぐべきモデルがあるにもかかわらず、別のモデルに名前を移す、というのは混乱を招きそうである。
しかし、自社の資産の有効利用、という面もあり、またリボルバーからオートになっても、目的とするユーザー層の名前なので、理念は正しく受け継いでいる、のかも知れない。
このように違うモデルに名前(登録商標)をr流用する、という事は、別の業界で、日本でも行われていて、例えば、ホンダがジャズ,セイバー,スパーダなどの二輪車の名前だったものを四輪車に使っている。

マルシンのカート式ガスガンで、M36 3インチ(左)と、ニューナンブ。
M60/09

[機構]
さて、次は機構のほうを。
上でも少し触れたが、ニューナンブはハンマーにコイルスプリングを使っている。これはチーフスペシャルが採用していたものを参考にしていると思われる。
当時、S&Wは、コイルスプリングを圧縮方向で使うのが、最も優れたスプリングの利用方法だと考えていたようで、同社の大型自動装填式拳銃M39などは、徹底的にコイルスプリングが使われていた。
コイルスプリングの優れた点は、まず製造面のメリットだ。
線材は鋼材メーカーが量産しており、これを巻いて焼き入れし、容易に作ることが出来る。
それまで良く使われていた板バネが、鍛造などによる成形を要し、また形状から均一な焼き入れが出来ない、といった問題を抱えていたことからすると、安価に、より均一なバネを製造することが出来る。
また、コイルスプリングを圧縮で使えば、万一折れた場合でも完全に力を失わない。部品の飛散も考え難い。
現在では、同じ線材を使ってキックばね(ひげばね)が作られ、多く用いられているが、これは折れると多くの場合完全に作用しなくなる。また、そのばね作用で自身を保持させている場合、折れると外れ、これが挟まって不測の事態を巻き起こす恐れもある。
もっとも、現在は加工と疲労寿命計算によって、折れることをまず心配しなくて良いほど信頼性を上げているが。

話をニューナンブに戻そう。
ニューナンブは、S&Wの安全装置である、ハンマーブロックも再現し、リバウンドと併せてハンマーを確実にブロックしている。
更に県によっては、トリガー後方にゴムを挟み、トリガーをロックして暴発を防いでいるという。

[形状]
現在、警察庁はこの拳銃を公開しているという。
製造時期により、いくつかの仕様が確認されており、前期と後期に大きく分けられている。
仕上げもガンブルーからつや消しのパーカーライジング?に代わり、古いものもつや消しに仕上げ直されているものがあるようだ。
まず、シリンダーを出す為のラッチの形状が変更され、チーフスペシャルより大きかったものが少し小型化されている。
ラッチはチーフスペシャルも、初期の小判型から、立体的な形に変更されている。

ニューナンブ(左奥)とM36で、ラッチの比較。
M60/08

次にグリップだ。チーフスペシャルでもグリップは変遷があり、また社内外でオプションがあるが、新中央工業はここをオーバーサイズとし、樹脂成形で作ったようである。濃い目の蝦茶色,紫がかった色のグリップには、側面にチェッカーも入っている。
結局リボルバーのグリップは後に大型化するのだが、この点では先見の明があったのかも知れない。
もっとも、護身用にコンシールド、つまり隠し持つ為の用途の小さな拳銃を元にしており、軽く小型なので余計に反動がきつく、これを制服用装備とするにあたって大型化して、私服用2インチも制服用3インチも同じで済ませよう、という合理化策だったのかも知れないが。
グリップ形状は時代によって少し変わり、下部が張り出して小指もしっかりかかるようになっている。

別の回転式拳銃も一緒に。
左から、チャーターアームズ・ブルドッグ,S&W M10,ニューナンブ。
ブルドッグはカナマルのガスガン。これも実物は5連発だが、大口径44スペシャルを使用する。
これもオーバーサイズグリップだが、底部はフラットだ。
M10にもオーバーサイズグリップがあるが、これはサービスサイズ。
ニューナンブは上記のように、小指をかけるフィンガーレスト?付きオーバーサイズ。
M60/07

警察官用なので、ランヤードリング(背負い紐用の金具)が下部には付けられているのは共通だ。
フレーム上部も、少し厚くなったという記述もある。
全体的に、機構はS&Wのもので、大きさは、チーフスペシャルのJフレームとミリタリー&ポリスのKフレームの中間、といったサイズだ。
形状では、フロントサイトだけが、コルトに近いものになっている。
これは、S&Wは各種リボルバーを(一時は)世界一の規模で作っており、その為大型の装置で合理化を計り、よそでは作りにくい形を実現していたからではないだろうか。
それは型鍛造である。これによってリブまで一体のバレルを成形、その後削って仕上げる、という製法をとったのである。
これに対し、ニューナンブ一種類で製造数も年間何万丁も作らなかったと思われる新中央工業では、型鍛造は難しかった、もしくはコストが高かったのではないだろうか。
そこでバレルは当時のコルトの形,加工を参考にし、丸棒の材料から切削加工で作ったのではないだろうか。つまりサイトは後からロウ付けにし、リブは省略したのである。

フロントサイトの比較。
ディティクティブ,M36はタナカのガスガン。
ディティクティブもサイト形状は大きく変遷するが、この形が最もニューナンブに近い。
M60/10

シリンダーは5発装填だが、チーフスペシャルと比べると、明らかに大きい。
ここがミリタリー&ポリスを参考に設計された、と言われる所以ではないだろうか。
しかしこれは恐らく、安全性から、もしくは加工,処理の安定性などの製造上の問題から厚く大きなシリンダーになったのではないか。
チーフスペシャルがそうだというのではないが、S&Wは、今も強度上の不安があるモデルを作っている。
M19は、焼入れによって38スペシャル用のフレームで無理やりマグナムを撃てるようにしたが、バレルの肉厚が不足、エジェクターロッドの上がやられる、という例があった。
現在のM327では、ここのフレーム部がやられる例が(雑誌で)報じられている。
鋼材の強度に関しては、1000万回持つところ、というのが長年の経験によって確かめられて用いられており、S&Wは、これを超えたところで作っている、ということだと思う。
もちろん、疲労破壊には、端部の角やちょっとした傷、それに熱処理などによって大きく影響される面があるので、S&Wは、膨大な製造経験と加工技術で、これを大体克服しているのかも知れない。
S&W以外でも、コルトはディティクティブで6連発ながら極力肉をそぎ落とし、コンパクトでスリムに仕上げている。
そうすると、日本のように官公需以外では輸出も含めて作れない、という環境では、より材料の断面積を増やす、というのが安全で確実な方法だったのではないだろうか。
結果、装弾数を減らす、というチーフスペシャルのコンセプトを、軽量,小型化でなく安全性のほうへ持っていくことになったのでは。

マルシンのカート式ガスガンで、M60(右)とM36(左)の比較。
シリンダーの大きさの違いが分かるだろうか。
M60/05

そして、後に改良され、それをマルシンがモデルアップしたのかもしれないのだが、’72,’77とシリンダーの破損例があったらしい。
このため現在に至るまで警察では弱装弾を使用しているという。
この間に生産された数も、約7万丁あり、いくら日本の警察が実弾練習量が少ないとはいえ、その中の2例、低サイクル疲労破壊かオーバーロードか、も定かではないので、やはり材質,加工による強度不足だった、と結論づけるわけにはいかないのだが。
また、後期の製品からフレームも肉厚増大が図られているように、ニューナンブは決して強度に自信があった訳では無さそうである(’09.6月、Gun誌記事('78年7月号 野村一介氏 拳銃学入門)をもとに書き直しました)。


[38口径]
ニューナンブは38口径と呼ばれる。
口径は、バレル(銃身)の内径ではなく、使用するカートリッジを指す場合などがあり、実にわかりにくくなっている。
38口径と呼ばれているものは主に.38スペシャルというカートリッジ(実包)を使う為だが、ニューナンブのそれは、米国製の同一カートリッジを使う銃のデータから、ボアダイアメータ(銃身の内径)は恐らく.357インチ=9.07mmくらいではないか。
実はこのボアサイズ、パーカションリボルバーの時代から使われており、その頃は正しく?.36口径と呼ばれていた。
メタルカートリッジ式に移行するとき、同じバレルで撃てるカートリッジを開発し、区別する為か、それともカートリッジ径を測った方が測りやすい為か、これを38口径と呼ぶようになったらしい。
その後、マグナム弾を開発したときに、同じボアサイズだがこれまた区別する為に、357マグナムと名づけられた。
よって38スペシャルと357マグナムはほぼ同じボア(コルト・パイソンのように少し変えているところもあるが、それでもこれはどちらのカートリッジでも使用可能)で、更にいうと弾頭は9mmパラベラムのものも使えるとか。
つまり、コルトM1851ネービーの36口径と、ニューナンブ,コンバットマグナム,ミリタリー&ポリスは同じ口径だ、ともいえるのである。

38口径(38スペシャル弾使用)で3丁。
左から、ニューナンブM60,コルト・ディティクティブスペシャル,S&W M36。
ディティクティブもM36もタナカのガスガン。
ディティクティブも、日本の警察で使用されていた。
M60/03

[1/6]
ここらで、今回の1/6を。
今回の1/6は、トップ,エンディングで使っているアゾンの1/6ドール用衣装の付属品。
金属製で、色はシルバーだったのだが、これを黒く塗装している。
形状は非常によく再現されており、ランヤードリングも金属の強度を活かして細いものになっている。
M60/06


[更新]
ニューナンブは、それまで使われていたディティクティブやミリタリー&ポリスなどから更新して装備を統一する目的で作られたが、交換が済む前に、新規調達が終わってしまった。
これは、為替レートの変化や、社会情勢の変化で、本家アメリカのS&Wから、チーフスペシャル(但しアルミフレームのM37)を輸入した方が、という事になったようである。
輸入し、シリアルを追加するなどの業務をミネベアで行って納入しているようであるが、これは情報公開制度が施行され、調達価格が国際水準から見ても異常に高い(生産規模と求められる安全管理など、総合的に見れば妥当な価格かもしれないが)為、非難される前に輸入に切り替えたのかも知れない。
もしかすると、アメリカから圧力がかって、自衛戦力でなく、他から調達も可能な警察装備の輸入に踏み切った、のかもしれない。
現在はS&WのM37に順次切り替えられつつあるらしいが、同じS&Wでも自動装填式のM3913、SIGのP230に手動セフティを追加した日本特注仕様なども輸入されたようである。

SIG P230JPモデル(KSC ガスブローバックガン、後方)と、ニューナンブM60(手前)。
M60/12

ニューナンブの輸出は、武器禁輸になったのでロングバレルと調整式サイトをつけた2丁ほどがサンプルとして出た程度だという。
現在もミネベアでは自衛隊用のP220を製造しているかも知れないが、日本オリジナルの拳銃の開発,製造は、このニューナンブが最後となっている。
はやり海外の大手がこなれた製品を作ってくるのに対し、見てきたように構造としてはデッドコピーであり、更に様々な制約から少し垢抜けない部分はある。
しかし、大型グリップをいち早く採用するなど先見の明もあり、細部も改良するなど、全体としては、単なるコピーに止まらないものを作ってきたのではないだろうか。
そして、この製造にあたって得られた少なくないノウハウは、恐らく継承され維持される見込みは低いと思う。
安価に良い製品を調達することはもちろん重要な事で、それを追求するのは悪いことではないと思う。
しかし、物事には何でもメリットとデメリットがあるように、その代償として、武器を外国に頼らざるを得ないこと、もし将来また日本がリボルバーを製造する場合、再びほとんど一から始めることになり、そのレベルは他より劣ることになる可能性があることを覚悟しておかなければいけないのではないか、と思う。
精密加工機械があれば簡単に高性能の拳銃が作れる、と思うのは恐らく間違いである。
安全に使用できる範囲の小型化,軽量化には、相当の実績がやはり必要だったと、この拳銃が示しているのではないだろうか。

新中央工業の拳銃つながり。
ニューナンブM60(左側)とSIG P220自衛隊モデル(タナカ ガスブローバック 右側)。
M60/13

今回も長い脱線を含む話にお付き合い頂いて感謝。
それでは、ここらへんで。
M60/11

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