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今回は、ブローニングM1910を。
m1910/01

[概要]
M1910は、護身用のポケットピストルとして好評だったM1900の後継機種として
1910年にFN(ファバリックナショナル)社から発売されたモデル。
設計は有名な銃器設計者ジョン・モーゼス・ブローニングであり、彼の名と、
その名を使った後の米国での販売元ブローニングアームスの商標から、
ブローニングの名が付いたのではないかと思われる。
全長15センチメートルほどのポケットサイズで、口径はセミリムド
(縁が少し大きい)の7.65mmと9mmショートで、それぞれ米国では32ACP,
380ACPと呼ばれているものを使う。

それでは、トイガンのM1910を。
これはマルシンのABSモデルガンで口径9mmとなっている。
マルシンは、1980年代からこのM1910を作り、現在もダミーカート,
ヘビーウエイト仕様など改良しながら作り続けている。
m1910/02

[安全装置]
M1910は小型の護身用拳銃として安全性が重視され、
3つの安全装置を持っている。
銃を握った親指(右手の場合)での操作でオン-オフを切り替えるサムセフティ、
グリップを握り込んで解除するグリップセフティ,
弾倉を抜くと発火機構がロックされるマガジンセフティの3つの参禅装置を
備えている。

[シンプル・ブローバック]
また、作動方式は、先行したM1900などと同じ、スライドの重量と
スプリングの力だけで抵抗し、閉鎖機構を持たないシンプルブローバック
(Blow-back)式である。

M1900とM1910、そしてM1910ターゲット。
M1900は頑住吉氏のガレージキット。
M1910ターゲットもマルシンのモデルガン。
m1910/17

[スナッグプルーフ]
スライドカバー式もブローニングがコルトのM1900などで始めた形だと思う。
FNのM1900では2分割で単純なカバーにはなっていない。
M1910は、ブローニングの設計した、それまでの拳銃の開発で培った
ノウハウが活かされているが、更にスリムに、また引っかかりを少なくする
スナッグプルーフ化が計られ、前後サイトはスライド上の溝の中に収まる
独自の形状になっている。

スライド後方から前後サイトを見たところ。
m1910/10

[リコイルスプリング配置]
M1910は、リコイル(スライド前進用)スプリングの配置もオリジナル
ではないかと思うが、バレル(銃身)にスプリングを巻きつける形としている。
この形式は、後にワルサーPPなどが踏襲し、
小型拳銃では良く用いられる形になった。

M1910の通常分解。
中央付近にあるのがバレル。スプリングを入れたままの状態。
m1910/08

M1900がバレルの上で、その後のコルトポケット32,コルトM1911が
バレルの下にスプリングを配置、現在はこれが一般化している。
コルトポケット25も、バレル下にスプリングを持っているが、
これはバレルの回転防止に、バレル前部をスライドをかみ合わせているため、
スプリングを入れにくかったからではないだろうか。

M1900のスライド分解状態。
これは上記の頑住吉作品だが、スプリング配置などはそのまま
再現されている。
m1910/09
[分解性]
分解は、通常のメンテナンスに必要なところまでは、全く工具を必要とせず、
しかも比較的簡単にばらせる。
明確に完全分解と通常分解の境界を分け、同じ設計者のコルトM1911のように
完全分解が容易に可能とはしていない。

これも、生産性と用途を考え、不用意にばらして組み立てに苦しむようなことが
ないように配慮した面もあるのではないかと思う。
M1910は、このように複眼的な視点から考えられた、「良く練られた」商品で、
故に他の追随を容易に寄せ付けなかったのではないか。

[FN]
FN、ファバリック・ナショナルは1889年にベルギーで設立されたメーカーだが、
もともとベルギー軍用のモーゼルライフルを製造するために作られたという。
国営と名前にあるが、設立時は銃器製造者が資本を出し合っていたとか?
会社はハースタルという町に設立時からあり、このためファバリック・ナショナル
・ハースタル(英語読みカタカナ化)という社名だったようだ。
FNはその後買収され、フランスのGIATグループとなったようだが、もともと国は
出資していなかったのだろうか。
それとも、いったん国営になったのち、民営化,売却されたのだろうか。
ともかく、FNはブローニングが設計した拳銃の欧州での製造,販売元として
共に歩み、M1900のあと、25口径ののベストポケット,9mm口径のM1903、
そしてこのM1910、ブローニング・ハイパワーなどを発表している。

ハイパワーとM1910。
左から、ハイパワー カナディアン(マルシン モデルガン),
M1935(通称コマーシャル タナカ ガスガン), M1910。
m1910/06

[自動装填式拳銃の開発]
自動装填式は19世紀末に盛んに開発が進められ、実用化が計られた。
しかし、初期の自動装填式は、いずれもかなり大きかった。
これは、従来の軍用拳銃も、7.5インチくらいの長いバレル(銃身)を持った
回転式だった為、大きさとしてこれらが参考にされたこと、軍用用途などで
想定された一定以上のパワーを受ける機構はやはりある程度の大きさを要し、
そして大きな方が複雑な機構を作り易かったことがあるのではないだろうか。
また、ボーチャードはストック装着が前提となっており、モーゼルC96にも、
ルガーP08にもストック取り付け溝がある。

初期?の自動装填式拳銃とM1910。
左から、モーゼルミリタリー M712(マルシン モデルガン),
ルガー P08 6インチ(タナカ ガスガン),M1910。
m1910/03

しかし、大きいと拳銃本来の、携帯しやすいというメリットを失う。
その後軍用自動装填拳銃は、ドイツのP08、米国のM1911などに
見られるように、結局、10センチ(薬室含む)内外のバレルで、
20センチ前後の大きさの、片手で使えるサイズのものが
その後主流になった。

コルトM1911(左 MGC モデルガン)とM1910。
m1910/04

[ポケットオートの開発]
J・ブローニングはこうした欧州勢の“過大な”自動装填式に対し、
全く違ったコンセプトを抱いていた。
それはポケットサイズの自動装填式だ。
彼は、複雑な閉鎖機構を要する高圧のカートリッジでも、バレル自体を
ロック部品として使うチルト式ショートリコイルで比較的シンプルな
自動装填式拳銃を開発していたが、同時にもっとシンプルなブローバック
(拭き戻し式と呼ばれる)で、従来の2/3サイズの小型拳銃が作れることに
気づいていた。
ここにちょうどFNのスタッフが訪れ、ポケットオートの実現は一気に加速する。
FNは最初からブローニングと契約交渉するために米国に向かったのではなく、
別の商品の購入案件で渡航した際、たまたまブローニングのところに
立ち寄って、この話が始まったとか?
信じられない幸運か、時代を読むセンスか、それまで拳銃開発に携わって
こなかったFNは、それゆえ先入観なく、市場分析が出来たのか、
大きなチャンスをつかんだように思う。
逆にコルトは大型の開発に主眼を置いていたようだし、欧州のニーズを
掴んでいなかった、という事情もあるだろうが、ともかく他を出し抜いて
FNはM1899,続いての小改良型M1900で、ポケットオートという
ジャンルを確立、一躍自動装填式拳銃のリーディングカンパニーになるのである。

従来にないコンパクトなサイズの自動装填式拳銃は、世情もあって大いに売れた。
コルトもあわてて?同じ32ACPを使うコルト32ポケット
(M1903、コルトとFNは同じ命名法でM(モデル)+年式だが、
同じM1903でもコルトは32口径の小型、FNは9mmの大型拳銃である)を発売、
これもポケットピストルの代表的機種となる。
FNは、この勢いにのって、より大型の9mmM1903、更に小さな25口径の
ベストポケットと次々に発表、独自の小さなものから逆に広げていく、
という逆転の構図で、そのあと世界経済の大幅な後退によって
時間がかかったが、軍用の?ハイパワー開発に至るのである。
中核をなすことになった先行機種のM1900は、その後の製品からみると
ずいぶん個性的な形だが、そのぶん製造にコストがかかるようで、
また機能的に手動安全装置一つしか装備していないこともあって、
FNの要請によってブローニングが再設計、M1910が後継機種となる。

ブローニング設計のコルトピストルと。
左から、コルト32ポケット(MGC モデルガン),
コルト25ポケット(コクサイ モデルガン),M1910。
m1910/05

[ミリオンセラー]
当時、ようやく軍用大型オートの実用化が始まったところで、当然小さなものも、
あれば売れるという予測は出来たかもしれない。
しかし、民需が軍をある意味上回るとまでは、多くの開発者,製造者が
予測しなかったのではないか。
もちろん技術的限界があった、という側面はあるが、コルトのように、
その技術を持ったブローニングと接触しながら製作に踏み切らなかった
ところもある。
もっともコルトは、安定した官需で伸びた会社で、創業当時は販売不振で
一度会社をたたむようなところまで追い込まれた経験があり、需要が不安定な
一般向けに傾注するより、軍の制式を今後も受けることが最重要課題だった
のかもしれない。
しかし、そのコルトにしても、回転式ではパーカッションリボルバーの時代から
ポケットと名づけた小型サイズのものを作っており、一定の需要なら
予測できたと思うのだが。

ともかく、パイオニアとなったブローニングのポケット・オートは、欧米だけでなく、
米国でも(コルト32ポケットが)大変な成功を収めた。
やはり需要はあったのである。
FN M1900は11年の生産で70万丁を超え、続くM1910は、1975年に
生産を終了したが、トータル100万丁を超えた、という。
軍用でいうと、ドイツのP08とP38がそれぞれ100万丁、米国のM1911A1が
200万丁らしいが、これらのうち時期的に近いのはP08で、このP08でも
第二次世界大戦終了まで作って、の数である。
世情もあってポケット・オートが大流行したといわれるが、
小型リボルバーやデリンジャーは既に存在しており、
やはり潜在的需要はあったのではないかと思う。
もうひとつは、FNの技術者が一目でほれ込み、また爆発的に売れたことから、
ポケット・オートは「斬新なアイテム」として、
スマートでスタイリッシュな形に写ったのかもしれない。
電気製品と一緒にしていいか、疑問はあるが、ソニーからウォークマンが
発売された当初(最近ではi-podか?)に似た“流行”が起こっていたのでは
ないだろうか。

M1910は、登場後デッドコピーも含めて多くの模倣,参考にした作品を生み、
正にこれが標準,基準となったように思う。
しかし、ブローニングとFNの掘り起こしたポケット・オートは、ブローニングの死後
ワルサーのPPによって世代交代がはかられ、M1910はゆっくりとではあるが、
その影響力,販売力を失い、生産が打ち切られる。
既に公用でも個人でも、M1910は過去のものになったのかも知れない。
但し、例え生産性や機能で今日のものに劣っていても、その美しさはまだ
衰えていないのでないだろうか。
そして、トイガンとしての根強い人気は、それを示しているのではないだろうか。


ポケット・オートの代表機種、ワルサーPP(左、マルシン モデルガンと)M1910。
m1910/11

[1/6]
さて、それでは1/6のほうを。
これはいつものように単品で入手したもので、しかも無塗装のマーブル状の
銀色だった。
そのパーティングライン(合わせ目),バリを取り、メタリックグレイで塗装している。
少しスリムさに欠け、またグリップのチェッカーが無いなど、大味な部分もあるが、
立派にM1910に見える。
m1910/12

それでは今回はここらへんで。
m1910/07


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まとめ

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